027 アズサ、三十三階層でエルダーリッチと出会う
「アズサさん、ここはとっても気持ちが悪いです」
「ここはエルダーリッチ、迷える死者を統べるものの領域だから当然だ」ミッシェル様のところに置いてきたイグノが音速で私たちのところに戻ってきていた。
エルダーリッチか、厄介だ。「アリス、ヒロシ、気持ちを強く持っていないと死者の世界に連れて行かれるよ」
「問題ありません。この幸せを私が手放すはずがございませんから」
「あれ、追放中のイグノはん、まだここにいたんかいな。魔王に怒られまっせ」
「追放処分は解けた。今は謹慎中だ」
「あのう、イグノ様、こちらの品の良い方はどちら様でしょうか?」
「見た目に誤魔化されるな。この階層主のエルダーリッチだ」
「お嬢ちゃん、見る目があんね。お菓子をあげよう」
「奴から貰ったものを食べたり飲んだりすると冥府に飛ばされるぞ」
「私は主の使いの途中ですので、お菓子は遠慮します」
「そしたら、アメあげる。持ってて損はないで、嫌いな奴に食わしたら、即冥府行きや」
「エルダーリッチ様、遠慮なく頂きます」
「ええ子や。ほんであんたの名前は何て言うの?」
「私くしは、治癒師のアズサ、こっちは私の弟子のアリス、そして元同僚のヒロシです」
「後なあ、生き霊がおんねんけど。まあええわ」
「私はここの階層主のエルダーリッチや。覚えておいて損はない。得もないけどな」
「この階層を通るには、通行料が必要やねん。通行料は私がその日の気分で決めるさかい、時価や」
「このイグノが通ったときは、こいつほんまに何も持ってへんから、体毛で我慢しった。ええ、筆がでけたで」
イグノがもの凄く嫌な顔をしているように見える。
「ほんだら、このパーティの代表者は前に」
全員が私を見つめるので、私が前に出た。
「ほなら、持ち物検査させて貰うで」
「わかりました」せっかく集めたお宝がエルダーリッチに巻き上げられる。最悪だ。
「腰の袋を見せてちょうだいか? 心配せんでええって全部は取らへんから」
私は腰の袋をエルダーリッチに手渡した。
「小さい魔石が一個、小銀貨一枚ってとこか、ブルーサファイアかこれは金貨二枚はいけるか、使用済みエルフの御守り、銀貨一枚」
「エルダーリッチ様、エルフの御守りですよ」
「使用済みやし、エルフが作ったという価値しかあらへんけど」
チクショウ、ボワンナーレに騙された。
「あんた、未使用やと思ってもろたんか。魔力を軽く流してみ。未使用やったら中に流れ込むから」
私はエルフの御守りを手に握って魔力を少し流したら、パチパチ音がするだけで魔力は御守りの中には流れ込まなかった。しくじった。
「これは凄い、このペンダントは凄い。一度だけ願いを叶えてくれる魔法のアイテムや。値がつけらへん。アカン、アカンんねん。私、母娘もののにめっちゃ弱いねん。涙がでえへんのが辛いわ」
「このペンダントは返す。後は通行料としてもろとく」
「あのう、白の手袋は?」
「白の手袋? ぐちゃぐちゃに入れたらアカンよ。皺になってるやん、いらんわ」
「あのう、一月前ですが、人種の冒険者の一行がここを通ったと思うのですが、通行料は何だったのでしょか?」
「エレクシエル三本やった。私には必要のないもんやけど、売れるさかいな」
「お幾らで売って頂けるのでしょうか?」
「そやな、一本金貨五十枚、三本まとめて買うてくれるんやったら金貨百四十枚やな」
「そんなにするのですか?」
「百年に一度の品質やからな。金貨五十枚でも良心価格、ボッてへんで」
「見せて貰えませんか?」
「見たいか? どうしようかな。近所のゴスケさんに聞いてみた。運がええね。お嬢ちゃん、見せたろ」
紅のポーションって初めて見た。普通は青のポーションだ。
「お嬢ちゃん、よう見ときや、ちょこっと魔力を注ぐとやな、ほら真紅のポーションになんねんで、凄いやろ」
「ハアーー、私、赤の旅団に入りたいよ」
「師匠が赤の旅団にお入りになるのでしたら、弟子であるアリスも一緒に入ります。ヒロシ君、リーダーにそう言っておいて」
ヒロシ頑張れ、人は見かけに寄らないのだ。ポワンとした外見に騙されてはいけない。アリスは思い込んだら突進する子だ。ヒロシは頭を抱えてウンウン言っている。
「三十四、三十五階層で動物、魔物を狩って、三十六階層での焼肉はお勧めやで、三十五階層に酒屋があるさかい、三十三階層のエルダーリッチさんの紹介やって言うたら、なんと、お酒が通常販売価格の三割引や! 必ず言うんやで」
「ありがとうございます。エルダーリッチさん」
「かまわへん、かまわへん。酒は買わんでもええから、エルダーリッチの紹介で来ましたって、必ず酒屋で言うてな、後で紹介料が私に入るさかい」
「はい、必ず言います」なんかもの凄く疲れた。私たちは三十四階層に向かった。




