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021 アズサ、ベイルウオルフと対峙するその2

「おいちゃん、ヒロシの言っていることは本当なの? それと私のことを全員一致で、不要って判断したとか言うのは?」


「全員一致は嘘だ。俺とヒロシは反対した。それとアリスはその場にはいなかった」


「そうなんだ。タクミとレンジャーと斥候は賛成したんだ。あれ、黒猫って七人のパーティだったよね」


「アズサさん、何でいつも僕の存在を忘れるのか、一度聞いてみたかったんです」


「戦士さん、超お久しぶりです。影が薄すぎて気が付かないの。ごめん。戦士やめてアサシンに転職した方が絶対良いよ」


「戦士さんは賛成だったの反対だったの」


「僕が何を言ったのか、きっと誰も覚えてないと思うから、証明はできないですが、僕もアズサさんの追放には反対しましたよ。盾役の僕としては、アズサさんのシールドは命の綱でしたから」


「反対が三人、賛成が三人ってことで、リーダーがクビに賛成だから、私はクビになったのか。そっかあ」


「わかった。アリスちゃん込みで反対派三人は助けることにした」


「レンジャーさん、斥候さん、自分たちで生き抜いてね」


「俺たちだって内心は反対だったんだ。タクミから借金してて賛成しただけで……」


「仲間割れは見苦しいよ」


 タクミが土壁をよじ登って中に入ってきた。「アズサ、お前、ワザとやっただろう」


「さすがはタクミ、死ななかったんだあ。いやあ凄い、凄い」と棒読みで言ってやった。


「アズサ、どうするつもりだ、ベイルウオルフは壁を三つ破壊した。残り五つだ」


「パーティ黒猫の逃げ足は光よりも早いはずだよ」


「アリスは無理だ。俺たちについてこれない」


「アリスちゃん、無理なの?」


「初めまして、アリスです。私のせいでこんなことになって……」


「アリスちゃんのせいではないから、私は治癒師のアズサです。よろしく」


「私は本業が治癒師見習いで、副業が料理人ですから。それに黒猫のメンバーの方との実力差が大きいので、おそらく逃げるのは無理だと思います」


「了解です。アリスちゃんは私が何とかする。おいちゃんとヒロシは行けそう?」


「心配ない。逃げ切る」


「あのう、アズサさん」


「戦士さんは逃げなくても見つからないと思うよ。保証する」


「ありがとう、アズサさん」と戦士さんは気落ちしていた。おかしい。影の薄い戦士がいても良いと思う。魔物が戦士さんを見つけられずに、キョロキョロしている内に魔物を倒せる盾役って滅多にいないもの。


「では皆さん、いつもの野営地でまたお会いしましょう。それじゃあ逃げて。ベイルウオルフが七つ目の壁を壊したから」


「アリスちゃんは私と一緒ね」タクミたちは思い思いの方向に逃げた。


 私たちは地面の下に退避してベイルウオルフをやり過ごすことにした。私としては、私の追放に加担した三人を、ベイルウオルフが追いかけてくれることを、心から願っている。


 私はアリスちゃんと一緒に地面の下でベイルウオルフをやり過ごし中なのだが、ベイルウオルフは私たちに気づいたのか、私たちの上からなかなか移動してくれない。その分地上を逃げている連中が、生き残る可能性が高くなるので良いのだけれど。なんとなく、私たちがおとりになったみたいで、釈然としない。


 アリスちゃんが私をキラキラした目で見つめるので、かなり気恥ずかしいし、気詰まりだ。


「アズサさん、ごめんなさい。私のためにパーティを追い出されて」


「アリスちゃんのせいではないし。決めたのはタクミだし」


「アズサさんと同じパーティになるのが嬉しくて、涙が出るほど喜んだのに……」


「それは残念だったね」


「わずかな期間で弱小パーティをランキング入りさせた、凄腕治癒師に、私、憧れていたんです」


 私が参加する前から、黒猫って弱小パーティじゃなかったし、私が加入して攻守のバランスが取れて、一気にランキング入りしたのは、そうだけど、元々実力はあった。決して弱小パーティなんかじゃない。


 私を賛美するために、黒猫をおとしめるのは、お話としてはどうかと思う。アリスちゃんのお目めキラキラで見つめられると、そうじゃないと言えないのが辛い。


「私、ヒロシ君にも言ってたのですが、アズサさんの弟子になりたいって」


「私ってそんなに凄くないから、今だって、ほらベイルウオルフから隠れているわけでしょう」


「アズサさんはサポーターですから、アタッカーが強ければ、ベイルウオルフは倒せないことはないと思います。白猫の人たちはベイルウオルフを倒したって聞きました」


「確かに、白猫さんの盾役も剣士も凄腕だから、トップスリー常連組と黒猫とを比べられると、タクミは辛いかも」


「タクミさんは、黒猫が、白猫を抜くって毎日、言ってますけど。身の程知らずだと私は思います」


 アリスちゃんって、危険な香りがする子に見えてきた。


 タクミは、この子を扱えるだろうか? 私を追い出したことで、アリスちゃんを怒らせたみたいだし。この子は見た目と違って、激しい性格かもしれない。


 


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