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002 アズサ、ソロでダンジョンに潜る

「女将さん、ダンジョンに潜ってきます。期間は一月です」


「アズサちゃん、ちょっと待ってね。はい、お昼のお弁当。これから毎日塩漬けの干し肉とお水だけでしょう。せめて今日のお昼ぐらいは、ちゃんとしたものを食べてね。無理しちゃダメですよ」


「了解しました。マイ、マジュステイ」ダンジョンに潜る前に、毎回繰り返されるこのテンプレが嬉しい。



 ダンジョンに潜る順番は決まってはいない。好きな時間に、好きな順番で潜れば良い。ただし、午前九時にダンジョンに潜る場合は別。先頭はランキング上位の大規模パーティ、次に中規模パーティが入る。その次が小規模パーティだ。


 小規模パーティ黒猫は、まだトップテンには入っていないので、小規模パーティのエリート「白猫」の後ろが定位置。黒猫の目標は、小規模パーティなのに常にランキングトップスリーに入るパーティ白猫を追い越すことだった。


 その他大勢組のパーティは人数の多いもの順。ソロは一番最後だ。


 この時点ではソロは思い切り不利なスタートなのだけど、ソロは危険をおかしてダンジョン内で野営することで、この不利を補っている。今回の私の目的は野営地探しだったりする。


 私の場合、三十階層までのマップが頭に入っているから、元からソロの冒険者より断然有利だ。


 ソロの冒険者は十八階層辺りを野営地にしている人が多い。ソロで三十階層にまで潜る人はいないと思う。もしそこまで潜ったとしたら、おそらく生きては帰れないだろう。


 十八階層は魔物より人間の方が怖い。稼ぎの少ない冒険者が、他の冒険者に襲撃を掛ける。当然狙われるのはソロの冒険者か、少人数で経験の浅いパーティだ。


 私の番がきたので、ダンジョンに潜る。初心者パーティが第一階層でウロウロしているのを、横目にさっさと追い抜いて奥に入る。そこには隠し扉があって十階層までショートカットができるのだ。このことはランキング五十位までに入ったパーティの常識だったりする。ソロだと知らない人が多いかもしれないな。


 十階層までに出る魔物って数は多いけれど、ドロップする魔石の品質が悪くてお金にならない。同じ魔物でも十階層から下にいる魔物がドロップする魔石の品質は断然良い。その分魔物は手強いから、初心者パーティだとたいがい大ケガをする。ポーションでは治らない。治癒師か治癒魔術が使える魔術師がいないとおそらくケガをした冒険者は生きては帰れないと思う。


 専業治癒師ってそもそも数が少ない。初心者どころか中級の冒険者パーティにもいないことが多い。黒猫に私が入ったのは、育ての親のおジンとタクミが知り合いだったから。追い出されるとわかっていれば、別のパーティに入っていたのに。


 ショートカットして十階層に到着した。十階層には初心者パーティはいない。いるのは中級以上の冒険者か追い剥ぎ強盗くらいなものだ。強盗は帰りの冒険者を主に狙うけれども、ダンジョンに潜ってきたばかりの冒険者の持ち物を狙うことも多い。


 ここからの階層は対人戦闘が主になる。お互い、以上殺られる覚悟がないと冒険者も追い剥ぎ強盗もできないのだ。追い剥ぎ強盗も、元は冒険者。結局、冒険者同士が食い合うのが十階層から十八階層。


 追い剥ぎ強盗に襲われたら、躊躇ためらいなく駆除するのがダンジョンの掟だったりする。半殺しで放置するのは禁止されている。大ケガをして十階層から生きてダンジョンを出ることはできないから。生きて魔物に喰われるより死んでから喰われる方が、幸せだろうというのが禁止された理由らしい。どっちにしろ喰われることには変わりはないのだけれど。



 囲まれた。ソロは追い剥ぎ強盗に狙われやすい。これもダンジョンの常識だったりする。


「おい、生きてここを出たければ、その荷物を置いて行け。命までは取るつもりはない」


「見逃してもらえませんかねえ。私、まだ手加減ができないんですよ」


「ふざけるな」と叫ぶと同時に矢が飛んできた。強盗の人数は十五人くらいか。矢は私のシールドに弾かれて地面に落ちている。


「魔術師か。面倒な」


「いえ、腕の良い治癒師です」私はニッコリ笑って前に進んだ。強盗の何人かが剣を抜いた。青白く光っているので魔力が付与された魔剣みたい。コイツらを駆除したら、何本か拾っておこうかな。


 剣を振りかざして私に、襲い掛かってきた。私は何もしない。キーーーンと魔剣がシールドに当たって弾かれた音がした。あんまり勢いよくシールドに剣を打ちつけると剣が折れてしまう。気を付けてほしいものだ。


 強盗たちが逃げに入ったのでは、ライトニングをぶっ放した。強盗たちが焦げている。昨日からストレスフルだったので、かなりスッキリした。でもちょっとマズいかも。


「ええ! 魔剣が焦げついているよ。これじゃ売れないよ」追い剥ぎ強盗の荷物はと、「ウギャ」全部焦げている。「無報酬かよー」良かった上質の魔石が一個だけ無事だ。私はその魔石を腰の袋に入れる。


 追い剥ぎ強盗を駆除したら、強盗の持ち物は駆除した冒険者の報酬というのがダンジョンのルール。だからわざと強盗に襲われて、強盗の持ち物を奪う冒険者もいたりする。こうなるとどっちが追い剥ぎ強盗なのかはけっこうグレーゾーンだ。どちらかというと強盗の方が、冒険者を生きて捕まえようとするから、強盗の方が人道的かもしれない。まあ捕まえた冒険者を奴隷商に売るためだけどね。

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