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019 アズサ、ゴブリンの領主から説諭される

「ご領主が探していた、黒髪の女性をお連れしたので、お取り次ぎをお願いしたい」


 フランソワさんがそう告げると、警護の兵士が駆け出した。すぐさま警護の兵士が戻ってきて「ご領主様がお会いするとのことです。こちらにおいでください」と言って兵士、フランソワさん、私の順番で、領主が待つ部屋に通された。


「フランソワ、ご苦労であった。下がってお茶にすると良い」


「有り難き幸せです」と言ってフランソワさんがいなくなってしまった。とっても心細い。


「私はシャルル・ドゥー・メディスンです。この地の領主です」


「お初におめもじ申し上げます。私は治癒師で平民のアズサと申します」


「アズサさんにお尋ねしたい。人種ひとしゅは我々が平和に暮らしているこの地に攻め込むつもりなのでしょうか?」


「私が知っているお話では、遠征部隊は四十階層に住む階層主を討伐するために編成されたと聞いています」


「攻め込むつもりはないと言うことですか?」


「わかりません。一月前にここに派遣された先遣隊はこの街の存在を知りませんでした」


「そうでしょうね。一人の愚かなエルフのために、私たちがこちらに移り住むようになったのは一月前ですから」


「あなたは妖魔を知っていますか?」


「はい」


「一人のエルフが五十階層の封印を、私たちの祖先とオーガの民の祖先が力を合わせやっと封印をした妖魔の封印を、一人のエルフが、封印を解きました。その結果私たちは妖魔に襲われ、四十階層に都を遷都し、この地を対人種のための前線基地にしました。


「質問をしてもよろしいでしょうか?」


「許します」


「妖魔は今どこにいるのでしょうか?」


「五十階層を根城に、たびたび王都に攻め込んでいますが、追い払っています。一匹として逃してはいません」


「二十階層がワイバーンの巣になっていましたが、なぜそうなったのかをご存知ありませんか?」


「二十階層で愚かなエルフがワイバーンの飼育をしていました。私が知っているのはそれだけです」


「最後の質問です。エルフはなぜ五十階層の封印を解いたのでしょう?」


「五十階層には知恵の泉があります。エルフは知恵を求めます」


「私からあなたに質問をします。あなたは私たちと戦いたいですか?」


「私は、皆さまと戦いたくはありません」


「ありがとう。私たちもあなたとは戦いたくはありません」


「ところで、あなたはどうして、ゴブリンの部隊にサンダーボルトを放ったのですか? 彼らはあなたを攻撃したのですか?」


「私は先遣隊の殿しんがりを務めていました。任務は安全に先遣隊を本隊に戻すことでした。私はサンダーボルトでゴブリンの部隊を追い払うつもりでした」


「知っています。あなたはサンダーボルトを数発撃って、部隊を退却させるつもりだったが、あなたの未熟さのために、サンダーボルトが止められなくなった。それに間違いありませんか?」


「その通りです。ご領主様」


「あなたに罰を与えます」


 仕方ない。もう打ち首にでも何にでもしてください。


「あなたに妖魔退治を命じます。以上です」


「妖魔退治ですか?」


「ええ、期待しています。頑張ってください。王国内の通行許可証を渡すので、少し待ってください」


 通行許可証を渡されると、砦の外に出された。「妖魔を退治」ってそれって間接的に死んでこいというのと同じだと思う。相手は不死。死なないのだから退治も何もしようがないじゃないか。


 領主様のご先祖様だって封印するのがやっとだったわけなのに、無理な罰。無理なことをさせる罰なのか。でも、すっきりした。ボワンナーレさんがすべての出来事を仕組んだ。あのあやかしはボワンナーレさんの使い魔なんだろう。


 問題はなぜ、自作自演を演じたのか? それは、私をボワンナーレさんの同行者にするため。五十階層に私が行かないと、私が妖魔に狙われ続けると思わせたかったから。最初に若様たちをワイバーンに襲わせたのは、無能な護衛を始末するため、そう考えると辻褄が合う。


 なぜ五十階層にボワンナーレさんが行くのか? おそらく、妖魔の封印を解いた時にボワンナーレさんは妖魔に力を奪われ、そのため、重病になってしまった。力を取り戻すためにはもう一度五十階層に行く必要があるから。


 遠征部隊に合流するよう提案した際に、考え込んだのは、私がボワンナーレさんたちを遠征部隊に押し付けて、ダンジョンから出てしまうと思ったから。


 そんなことがわかったからと言って、私には何も良いことはないのだけれど。とりあえずすっきりはした。それだけだ。

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