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012 アズサ、死霊と戦う

 ボワンナーレさんの案内でミドレイさんとエレンさんを見つけた。二人とも意識がない。ざっと見たところ、肋骨が折れている。足があらぬ方向に曲がっている。よくこれで死ななかったものだと思う。


「アズサさん」


「わかってますよ。ツケですね」アーサーの服の飾りは取れていて、代金が支払えないのはわかっている。私もオーガ(人喰い鬼)には成りきれないので治療することにした。


 ケガが酷すぎて普通のヒールではダメぽい。ツケでマキシマイズかと思うと暗澹あんたんたる気分になる。


「マキシマイズヒール」と私は力なく詠唱した。お陰で少々治りが遅い。ツケなんだからこんなもんさ。現金だったらもっと気合いが入ったのに。とりあえず、そこそこ治ったから良いと思う。後はポーションを飲んでほしい。


「アズサさん、ありがとう」


「いえいえ、完全には治癒していないので、ポーションを一日一回飲ませてください」


「承知した。心から感謝します」私は、感謝よりツケを払ってほしい。ボワンナーレさんが笑っている。


 ケガ人が二人、しかも意識が戻らない。ここで襲われたら、最悪だ。そうだ逃げよう。ツケのことは、この際どうでも良くなった。命あっての物種だもの。


 なんだよ。精霊の皆さん。あなたたちとは生まれた時からずっと一緒でした。感謝しています。お陰で寂しくなかったよ。監視役の精霊から頼まれたの? エルフ様を助けてやれって。こんな薄情な子に育てたはずはないって。わかりました。わかりましたよ。毎度皆さんにはお世話になっていますから。やりますよ。やるって言ってるでしょう。

 

 私が、時々精霊たちと話をすることから黒猫のメンバーから気味悪がられていたのを思い出した。


 私は対アンデット用の結界の魔法陣を地面に描き出した。


「アズサさん、何をしているのか?」


「今日もアンデットの夜襲があると思うので、結界を張ります。結界の魔法陣を地面に描いています。絶対大丈夫とは言いませんが、ないよりマシだと思います」



 ワイバーンの飼い主さんは死霊術師しりょうじゅつしなのだろうか? 今夜はスケルトンやレイスではなく、腐りかけの冒険者の遺体、同じく腐りかけの魔物の遺骸の群れが、結界にたかっている。私は、夕ご飯を吐きそうになった。


 あまりにもあわれな姿、無理矢理死霊術師に操られている冒険者たちの遺体を見ているうちに深い悲しみに、おそわれてしまった。


 皆んなを「助けてあげたい」と心から思った。みんな安らかに眠ってと願いながら「マキシマイズヒール!」と心を込めて詠唱をした。


 真っ白な光がかなしい冒険者たちを包み込み、しばらくすると冒険者の遺体は消えた。同時に魔物たちの姿もなくなった。


 その時だ「チッ」と舌打ちしたのが聞こえたのは。私は全周囲を警戒する。私の近くにいたはず。でもまったく魔力を感じなかった。


 精霊たちは「良かった、良かった」と喜んでいる。「ねえ、精霊さん、今ここにいたよね」「ああ、生きものではないものがいたよ」「生きものではないものですか。そう、厄介ね」


 ボワンナーレさんが「アズサさんが、人種ひとしゅなのが本当に残念だ」とポツリとこぼしていた。


 アサシンのカールさんは吐いていた。若様も真っ青な顔になっていた。


 ボワンナーレさんが私に話し掛けてきた。「相手は魔族でも人種でもない肉体を持たないあやかし、妖魔です」


「術師は私の隣にいました。仰る通りスピリチュアルな存在でした」


「ミドレイかエレンに取り憑いていると私は思います。あるいは二人ともにでしょうか?」


「ボワンナーレさん、妖は人の魂を食べますか?」


「さあ、どうでしょう。妖は、器がなければ、この結界からは出られません。あなたを取り巻く精霊たちに、魔力をあげてください。そして、あの二人の側に行ってください。苦しみ出した方に妖が取り憑いているはずです」



 私が二人に近づくと、ミドレイさんが意識を取り戻し起き上がった。その横でエレンさんが苦しみ始めた。私とボワンナーレさんは、じっと二人を見つめている。


「エルフ様、助けていただいて、ありがとうございます。おや、私はなくしものをしたようです。少し探してきても構いませんか」


「ええ、もちろんです」とボワンナーレさんが笑顔で答えた。ミドレイさんが、結界の外に出ようとした時、私はミドレイさんにマキシマイズヒールをかけてあげた。


 ミドレイさんは七転八倒で転げ回っている。「妖が苦しんでいますね」とボワンナーレさんが小さな声で私にだけに聞こえるように話す。


「間もなく妖がミドレイの体から出てきます。出てきたらこの瓢箪の栓を抜いてください。妖が瓢箪の中に入ったら元の通り栓を詰めてください」


 私は瓢箪をボワンナーレさんから受け取り、妖がミドレイさんから出てくるのを待った。灰色のモヤがミドレイさんの鼻から出てきたので、瓢箪の栓を抜いた。妖は瓢箪の中に入り始めた。妖が瓢箪に入りきったところで、瓢箪に栓を、元どおり詰めた。


「終わりました」と言って瓢箪をボワンナーレさんに返した。


 エレンさんには念のためヒールをかけた。苦しんでいたのが嘘のように、安心した顔で寝息をたてている。エレンさんに、もし妖が取り憑いていたとしても、浄化されたと思う。もちろん油断はできないけれど。

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