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011 アズサ、馬の骨と呼ばれる

「それは重畳ちょうじょうですな。それでその遠征部隊とやらはどこにいるのでしょう?」


「アズサさん、今、その部隊はどの辺りにいると思いますか」


「おそらく、十八階層で休息をとっているかと思います」


「若様、急いで十八階層に参りましょう」


「そうだな。ミドレイ」


「エルフ様、十八階層に参りましょう」


「ああ、私はアズサさんとゆるりと行くので、アーサーたちは先に行けば良いよ」


「エルフ様、なりません。そのどこの馬の骨だか知れない者と行くなんて、絶対になりません」と戦士が気色ばんで叫ぶように言った。


 ボワンナーレさんは、どうもこの護衛たちに見切りをつけたみたい。魔術師と戦士の視線が痛い。若様は困惑している。アサシンは、何も考えてはいないな。


 私は関係ないので、さっさと歩き出した。私が歩き出すとボワンナーレさんも歩き出す。それにつられるようにして、帝国騎士の皆さんも歩き出す。虫除けの線香なしで十四階層は抜けられないから、結局こうなるしかないわけだ。

「ハアー」とまたため息が出てしまった。お荷物を抱えてのダンジョンは気が重い。


 十五階層、別名魔物の楽園に入った。ここはから十七階層までは沢山の魔物がいるので中級冒険者の狩場、森が鬱蒼うっそうと繁っているので、極めて見通しが悪い。魔物の不意打ち要注意地帯だ。空を飛べる魔物も多いし、ほとんどの魔物が木に登れるので頭上も注意が必要だったりする。


 ここで、夜襲をかけられると迎え撃つしかないか。


「トレインだあ!」とどこかで冒険者が叫んでいる。「最悪だ」ワイバーンの飼い主はとても性格が悪いと思う。


「トレインとはなんですか? アズサさん」と若様も、いつの間にか私の名前を呼ぶようになっている。まあ良いけど。


「魔物の暴走です。巻き込まれても良いことは何もないので、魔物の進行方向から離れるのが定石です……」私たちを歓迎する魔物の暴走だから、私たちがどこへ逃げても、ワイバーンの飼い主さんが誘導するはずだよね。面倒くさい。


「アズサさん、どちらに逃げれば良いのか?」


「どちらに逃げても誘導されますから。無意味だと思います」


「どうすれば良い?」


「私だけなら棺おけに入ります」


「不吉なことを言うな、冒険者!」と魔術師と戦士がハモった。


「棺おけとはどういう意味ですか?」


「若様は私が地面から首だけ出した姿を見たでしょう。あれを私は棺おけに入ると言っています」


「地面に埋まるのか?」


「地面に埋められると墓に入るですかね」と思わず言って顰蹙ひんしゅくを買ってしまった。


「アズサさん、でしたら私もその棺おけに入れてくださいませんか」


「御守りを頂きましたので、良いですよ。オマケします」


「エルフ様、おヤメください。我々が魔物を片づけますから」


「アーサーたちは魔物を討伐すれば良い。安全になったら、私たちを呼んでほしい」


「承知しました」


 私とボワンナーレさんは地面の下に退避して、魔物の暴走が通りすぎるのを待つ。アサシンさんも地面の下に入りたかったようだが地上に残ることを結局選んだ。


 地響きが聞こえる。地上は大変なことになっていると思う。おそらく治療が必要になると思うけど、目ぼしい物と言えばアーサーさんの服の飾りくらいだろうか?


 小一時間、私たちは地面の下にいた。地響きが遠ざかるのを聞いて、地上に出た。


「誰もいませんね。アズサさん」


「そうですね。魔物の暴走に巻き込まれて連れて行かれたのかもしれませんね」


「どうします。アズサさん」


「そうですね。お茶にしましょうか」私たちはお茶をしながら待つことにした。待ち合わせの基本は動かないことだから。


 待つこと一時間。若様がけっこうぼろぼろになって戻ってきた。ケガはしていない。若様の話だと戦士と魔術師は魔物の暴走を真正面から止めようとして、そのまま姿が見えなくなったそうだ。


 カークさん、アサシンさんのことだが、魔物の暴走を見て避けようとして木に登っているところまでは見たのだが、その後はわからない。若様は魔物に引っかけられて空に向けて放り投げられたところまでは覚えているが、そこから先の記憶がない。気がつくと、茂みで倒れていたそうだ。


 カークさんが戻ってきた。やはりぼろぼろの服にはなっているけれど、ケガはしていない。カークさんは木に登ったものも魔物が木に体当たりをしたため、落下してその後の記憶はないそうだ。


 ボワンナーレさんが詠唱を始めた。「ミドレイとエレンを見つけました。二人とも大ケガをしています。急いだ方が良いです」戦士の名前はエレンというのか。

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