001 アズサ、パーティを追い出される
パーティリーダーのタクミに呼び出された。「アズサ、今までご苦労だった。これはわずかだが退職金だ」と数枚の金貨を握らされた。
「どういうこと」と私はタクミに詰め寄った。
「お前はクビだ。これからパーティ黒猫はアグレッシブに行くことにした。お前がいると足手まといなんだよ」と歪んだ笑顔を見せるタクミだった。
「他のメンバーはどう思っているのよ?」
「全員一致でお前は不要だと言うことだ。わかったらとっととこの部屋から出て行ってくれ、話は終わった」
温厚な私はそれ以上何も言わず、タクミの部屋を出た。トップテン入り目前でクビとは、「はあ、人生ままならないものだ」
私が借りている、小料理屋の二階の部屋に戻って、私は天井の節をぼんやり数えていた。ガランとした部屋だなあ。もう少し飾った方が良かったな。冒険者稼業はいつ死んでもおかしくない稼業だし。物は置かないようにしていたらこん風になってしまった。
なんか今の私そのものって感じがする。中身が空っぽだよね。ホントけっこう頑張って良い仕事をしてきたと、思っていたのに、周りはそうは考えていなかったのか。堪えるね。
明日から私はどうしようと、私はぼんやり考えていた。
「アズサちゃん帰っているの。夕ご飯よ」という小料理屋の女将さんの声が聞こえた。
「はーい、今行きます」と私は返事をした。
冒険者稼業をしていると、どうしてもお肉中心で、しかもお塩たっぷりの不健康な食事になりがちなのを、女将さんは心配してくれている。私がダンジョンから戻ってくると、賄い料理を食べさせてくれる優しい女将さん。ちなみに女将さんも私と同じこの世界では珍しい黒髪に瞳は茶色だったりする。
女将さんも私もご先祖さまが異世界からきたみたい。料理は、女将さんのご先祖さまが美味しいと思った料理が賄い料理だったりする。今日の夕ご飯はお魚の開きにほうれん草のお浸しに、お豆腐のお味噌汁。それと女将さんが自分で漬けたきゅうりのお漬物。
私はどうもお味噌が苦手だ。魔物が吐く息の臭いに似ているから。できればコンソメスープが良いのだけれど。賄い料理はタダなのでワガママは言えないか、とくに明日から私は無職だし、食べられるだけ有り難いと思わないといけない。生活費はタクミに握らされた金貨数枚。半年は過ごせるか。「ハアー」
夕ご飯が終わって、私が女将さんたちの分の食器を洗って、片付けた。ここで雇ってもらうのはどうだろうか? と考えたけれど、その結果あの娘がクビになったりしたら嫌だな。今は突然クビにされたので混乱しているし。まあ色々考えても仕方ないし、気晴らしに神殿に出かけた。お祈りをしにではなく、神殿に併設している無料のお風呂に入りにだけど。
自分の家にお風呂があるのはお貴族様だけ。私は生活魔法全般が使えるので、ダンジョンにいても体全体を清潔に保てる。なので神殿の湯に入るの必要はない。でも、大きな湯船にのびのび入るのはとても心地よいのと、同業者の情報収集もできるから。混乱している今の私の頭を整理するためのお風呂だったりする。
「うえー、極楽、極楽」とうっかり口に出して言ってしまった。いつも周りが黒猫のオッサンたち、中にはオッサン化した少年もいたけど、連中の思考に染まっている。早く汚れを落とさないとだね。
「黒猫の治癒師さん、クビになったんですって」
早いなあもう私の噂が流れているよ。
「黒猫ってアリスが入ったパーティじゃなかった?」
アリスって誰だよ。
「アリスが黒猫に入ったせいで、元々いた治癒師さんが押し出されたのだって」
「美少女は得よね」
まさかアイツら顔で選んだのか? 黒髪の私は美人のカテゴリには入らないのはわかっているよ。治癒師として実力勝負で負けたのなら、納得はできる。でも能力ではなく顔で選んだアイツら、絶対に許さん! アイツらがいつもたむろってる店に特大の雷を落としてやろうか。
落ち着け、落ち着け。表の私は文句も言わない穏やかな人を演じている。でも裏の私は物凄く短気でイライラしやすい。その短気な性格を抑えるために、精神力の八割を費やしているのを知っている人はおジンくらいだ。もっともおジンが亡くなってもう七年は経っているから、生きている人間で本当の私を知っている人はいない。
私は、攻撃魔法が使えないのではなく、使うと加減がわからず毎度大爆発してしまうから封印しているだけだ。もっともこれからは、チームで動かなくて良いので、加減なしでぶっ放しても良くなった。とは言え、私もそこそこ名前が売れているので別のパーティからスカウトがあるかもしれないけれど。しばらくの間、この傷ついた心を癒したい。パーティには、今は、入りたくない。
ソロでダンジョンに潜って、行けるところまで行けば、無謀だけどソロでランキング入りを目指すのも良いかも。私を追い出したアイツらを見返してやりたい、リベンジしたいんだよ。
だからと言って命を捨てるつもりはない。私を拾って育ててくれた、おジンに私はいつも元気だよって言いたいから。ヤバい、目から水が溢れてしまった。お風呂は良い、すぐに顔を洗えば、誰にもわからないからさ。




