道連れ危機一髪
分量が、少ない!読みにくい!ありきたり!
「…あの、えーと…」
他のクラスメイト達のいない2人だけの教室。その静かさが話しづらさを強調させ、途切れ途切れの言葉のみが口から漏れ出る。
「…今間。名前は今間 真舞由だよ。…さきほどの授業の自己紹介を聞いていなかったのかい?まぁいい、ユーリ君だっけ?キミは私の趣味を知ってしまった。あぁもちろん学園初日に有るまじき不注意を冒した私も悪いとはいえ、私の秘密をキミが知ってしまったのは事実だ。ここまではいいね?」
ーー今間、か…正直自己紹介は自分のことで手一杯だったためほとんど聞いていなかったが、よくよく思い出してみればそう言っていた気もする。
「そこで、だ。……このことはどうか内密にしておいて欲しい。了承してくれない場合は最悪の手段を執ることになる。」
「弁明させてくれっ!…ってあれ?」
秘密を知られたからには死んでもらおうというような内容を予測し戦々恐々としていたが、彼女の口から飛び出したのは拍子抜けするほど小さなお願い。
そしてそのお願いは、生活に荒波を立てたくない現状において諸手を挙げて歓迎するものであった。
「…?弁明とはなんだ?こちらはただ秘密を黙っていて欲しいだけなのだが。」
「いや、弁明のことは忘れてくれ。…えー、もちろん今間さんの趣味のことは黙っている。決して口外しないと約束しよう。誰だって人に言えない趣味の一つや二つあるもんだし、実際俺も百合好きだけど隠してるしな。」
その言葉を聞いた彼女は目に見えて機嫌が良くなる。おそらく約束を信じてくれたのだろう。ここまで態度が変わるなら、もしかしたら案外自分には話術の才能があるのかもしれないなどと考える。
「ーーそうかそうか君はいわゆる腐男子と言うやつなのか!こんな初日で同類に出会えるとは思ってもなかった!いやぁ女の子は可愛いし同志に出会えるしでこの学園は最高だな!」
違った。ただ同類を見つけて喜んでいただけのようだ。
ーーしかしこんなに喜ぶものなのか?…いやそうか、おそらく彼女はボッチだったんだろう。外見や喋り方はともかく挙動が仲間を見つけたオタク友達にそっくりだ。今となっては連絡が取れないが…いや、今のところそんな記憶、人物は存在しないハズか。
「…ふふっ、もちろんキミの秘密も黙ってあげよう。その代わりといってはなんだが…『links』を交換しないか?」
「…いいぜ。」
特に断る理由もなかったため、彼女と『links』を交換する。
「えーっと、この『まままま』?ってアカウントで合ってるか?」
「そうだ。本名が今間 真舞由で『ま』が4つ連なっているだろう?…そちらはそのまま『ユーリ』か。」
「そのまま…っていうかそれも本名じゃないんだけどな。」
ーー今の名前を絶対公表してはならない。
「む、そうか……ではそろそろ帰ろうか。待つ人はいないが今日は少し疲れた。明日の準備もあるし、用があれば『links』で会話すればいいしな。むしろ『links』で会話しようではないか。…とりあえず、今回は急に残らせてすまなかった。」
「ああ、こちらこそ色々見てしまってすまなかった。
あ、教室の鍵は俺が職員室に返しとくから先帰っといていいぜ。」
「重ね重ねすまないな。それでは好意に甘えさせてもらおうか。」
そう言って彼女と別れ、職員室に鍵を届け終わったところで、やっと最初の1日が終わったことに安堵し自分の部屋に帰るのだった。
「これで一日が終わったと思ったか?残念だったな、これまでの今間さんとの話をみっちり聞かせて貰うぜ!」
ー部屋へ戻ると光が待ち伏せしていた。そのまわりには帰りに光と一緒にいたクラスメイト達もいた。
「初日からぶっ飛ばしやがって、このこのっ!」
名前も知らない短髪が脇腹を小突いてくる。
「…リア充死すべし!」
名前も知らないキノコ頭も足を蹴ってくる。…心なしか本気で蹴っているように見える。
「……イタッ、痛いって!タンマタンマっ!別に何も無かったって!…授業中のプリントの内容を聞かれただけだよ。」
嘘は言っていない。
「本当かぁ?とてもそうには見えなかったが。まぁいいか、…ところでどこまで行ったんだ?玉砕したか?」
光が獲物を狙うような目でこちらを見てくる。
「いや、ホント何も無かったんだって。やったとしても『links』を交換したくらいだって。」
ーーしまった。
「「やってるじゃねーか!」」 「リア充死すべしっ!」
またもやキノコ頭が蹴ってくる。明らかにアキレス腱を狙って蹴っているようだ。
「いや『links』交換してもメッセージ来るとは限らないしーー」
ーぴろん♪
『まままま から写真が送信されました。』
ーぴろん♪
『まままま 今日はありがとう。お詫びと言ってはなんだが、↑の写真を見納めください』
ーぴろん♪
『まままま がスタンプを送信しました』
ーーあっ詰んだ。
「……あ、明日の準備があるから部屋に…」
「「「……」」」
「…えへっ//」
「「「えへっ、ってなんだよ!」」」
もはや誤魔化すこともできず、男三人衆に部屋に連れ去られて事の顛末を根掘り葉掘り聞かれた。そして色んな方向に誤解を受けたが、なんとか彼女の趣味のことは誤魔化し通せたのだった。
なお彼女から送られてきた写真は非常に尊いものであったことだけは追記しておく。
…ギリギリLily(百合)




