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第4話「戦う覚悟」

三か月ほど一座と行動を共にしてわかったことは、この世界では、村で培った知識だけでは旅はできないということだ。


役に立つ知識もあった。

野草の調理方法や自生している香辛料などの扱いは旅に豊かさを与えてくれる。

水場の探し方も動物の狩り方も、教わったことはすべて生かした。


一座で習った知識も有用に活用させてもらった。

人形を操る傀儡の術、楽器や歌を使った演奏術、舞台の演出や踊りの神楽術。

うん、いい稼ぎになりました。


四つほど村と街を回ったけど、この国の王子様の活躍を喧伝する旅はなかなか楽しかった。




けど、ここでちょっと問題が発生した。



そこは白い場所だった。


木も草も水も土も白い、光を反射して気持ちが悪いくらい白い。

白いということがこんなに気持ち悪いとは思わなかった。

あるところからを境にあらゆるものが白い。


「・・・・まずいな。」

「アイザックさん、これなんなんですか?」

「ここは白界(はくかい)と呼ばれてる、今はここを離れないといけない。」


一座のみんなが馬車の方向転換を始めた。

五歳児なりに頑張って手伝ったがあんまり役に立たなかった。

邪魔だけはしないようにしたが馬車の車輪がぬかるみにはまった時は板とか棒とかで上手いことやった。


馬を一旦馬車から外して繋ぎ直せば引き返せるのだが・・・



うわおおおおおん!!



遠吠えが聞こえた。

なにか来る。



「そっちに行ったぞ!」


林を抜け前衛をしていた座長のアイザックさんの防御を突破し、後衛の私たちの方へ走りよってくるのは狼のような何かだ。


まず全身が白い、骨のような濁った白さの鎧のような外見。

所々から動く度に黒い煙の様なものを吹き出している。


黒い煙の帯を引きながら襲い掛かってくるのは狼のような姿をした魔物だ。


「ていっ!」


私はそんな魔物にくの字の鈍器を投げた。

ブーメランである!


パコン!というバットで球を打ち返したような快音がした。


どうやらうまく行ったようだ。


狼の魔物は吹っ飛び若干ヒョロヒョロとだが投げたブーメランが戻ってきた。


無属性魔法、衝撃の魔法文字を刻んだお手製の武器である。


「マジかよ。」


非戦闘員として馬車で逃げるタイミングを伺っていた演奏担当のマックさんがビックリしていた。


ただ、流石にとどめを刺すまでには至らずヨロヨロと狼の魔物が起き上がった。しかし、そこまでだ。シャンと鋭い金属を張る音が響いて魔物の首が落ちる。


「いいわねアル君、魔具職人の才能とかありそうよ!」


人形使いのリアンドさんの指から伸びた金属性の糸が私の弱らせた魔物を切り裂いたのだ。

馬車の周辺に縦横無尽に張り巡らせて防御陣としている。


「結界の準備できました!皆さん戻ってください。」


背景担当のメルリヌスさんが注いだ魔力が反応し魔道具が唸り声をあげ起動した。


「このまま一気に魔物の領域を駆け抜けるぞ!」


座長のアイザックさんはあまり戦いが得意ではないが足が早かった。ものスッゴク早い。

あと仕込みの天才だ。小麦粉と風の魔石で作った即席の煙玉で近寄る魔物を撹乱し馬車に戻ってくるまで二秒もかからなかった。

見習おうと思う、私も戦いが好きではないので。


準備万端で逃げる馬車の後ろから狼の魔物がおってくるのが見えた。


「追いつかれます!!」

「任せろ!」


アイザックさんが槍を馬車の荷台から突き出した。

飛びかかってきた狼の魔物の頭を打ち据えたが白い殻に守られている。


「くそ、槍が欠けた。」


ほかに長柄の武器がないらしい。


「任せて!」


リアンドさんが取り出したのは劇で使う人形だった。


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