悪役魔女の属性と魔石
朝目を覚ますと、トントンと台所から音が聞こえる。ほのかに焼きたてのパンとスープの匂いがした。ベッドから出て階段を降りるとエプロン姿のヘンゼルさんだった。私が起きた事に気付いて爽やかな笑顔で
「おはよう、ジャンヌちゃんっ!さあ朝ごはんを食べようか!」
テーブルにはフルーツが沢山入ったヨーグルトと焼きたてのクロワッサン、野菜スープとベーコンチーズが並んであった。先にグレーテルさんが座ってコーヒーを飲みながら新聞を読んでいた。
「おはようございます!ヘンゼルさん、グレーテルさん!うわぁ、焼きたてのパン美味しそう!」
「うんうん、元気で可愛い妹ができて僕は嬉しいよ!」
「朝からうるさいわよ…さあ早く食べて支度をなさい」
「はいっ」
クロワッサンはとても美味しく食べていたら、グレーテルさんは新聞を読みながら難しい顔をしていた。
「…また通り魔事件が発生しているわ」
「あぁ、第五王国が一番被害があったんだよね。この前ここでも通り魔事件があったし気をつけて警備しなきゃだねー」
何やら二人は最近通り魔事件が発生していると話をしているようだった。
「ジャンヌ、朝食を食べ終わって準備をしてから勉強をするわよ」
「え、僕はジャンヌちゃんと買い物しにいきたいよ」
キッとグレーテルさんはヘンゼルさんを睨んでヘンゼルさんは渋々了解した。
「…で、何故王子達までおられるのでしょうか」
眉間にシワを寄せながら話すグレーテルさん。
朝食を終えた頃にシラユキ君、ライル君、フラン君が
「ジャンヌと一緒に勉強と訓練をする」ときてくれた。
「ジャンヌ!一緒に勉強しような!」
「ライル君!フラン君とシラユキ君もありがとう!」
「フラン王子!特に貴方は他にやる事はありますでしょうに。他の王子も全員ここで特訓と勉強なんてだめです」
「えー!ケチケチババアだなあー」
そうライルが口を挟むと
「…あぁ?ガキしごかれたいのか?」
「ひっ!すんませんしたあ!!」
グレーテルさんが怖いのか三人は少しビクビクしながら
「グレーテル、えーとねー、父上から了承もらったよ。これヘンゼルとグレーテル宛の手紙」
フラン君はグレーテルさんに手紙を渡し、グレーテルさんはその手紙の内容を見てため息をしながら
「…はあ、、、わかりました」
「よしゃあ!最初からさ俺らの言う事をーってひひゃい!頬っぺたつねるな!すんませんしたあああああ!!」
「ライルも怒られると知ってるなら言わなきゃいいのに…」
そうポソと呟くシラユキだった。
こうして私はみんなと一緒に勉強をする事になって嬉しいな!
「魔女の歴史やこの国や他国の歴史についてはゆっくり話すとして、まずは魔法について説明するよ」
優しくヘンゼルさんは私に説明してくれた、基本王族貴族となる位が高い者には魔法が使える。その魔法にはそれぞれ《属性》がある。例えばシラユキ君は氷属性でこれは第一王国の王族の特徴とのこと。ライル君は水属性でフラン君は土属性。他にも、火、風、雷などもあるみたいで、一般庶民でも魔法が使える者が現れることもあり、ヘンゼルさんとグレーテルさんはその一人だった事。
「僕は魔力が普通の人より強いんだよねえ。グレーテルは少ししか魔法は使えないけど、剣術に関してはピカイチさっ!グレーテルがいつも剣にはめている、この赤い魔石が魔法を増幅させて剣を強くしているんだよー」
赤くて吸い込まれそうな綺麗な石だわ!
「うわあ。凄いんですね!!でも私は…何属性なのかな?」
「僕の先祖様は魔女にずっと眠らされてたからーみんなを眠くさせる魔法かなああ?」
「俺の先祖の妹姫は声を奪われたとかだしなあー?なんか消しちゃうのか??」
「…なんかそれってすごーく悪いことに使ってるよね。私の先祖様はみんなに迷惑かけてたんだね。本当にごめんなさい」
しょぼんとする私に頭を撫で撫でしてくれたシラユキ君はライル君とフラン君に
「……ジャンヌは悪い魔女じゃないよ」
そう言うと、二人は慌てて謝ってきたけど、このお伽の国には何百年前魔女から呪いやら戦争まで起こっていた。前世での童話の話とはまたちょっと違うなあと感じる。
「四人共うるさい!人の話を必ず聞く!」
そうグレーテルさんに叱られながらも私がなんの属性かはわからないとのことだった。
《おーえん!おーえん!》
ぴよぴよと黄色い雛達が空から飛んできた。
その雛達の声を聞いたヘンゼルさんとグレーテルさんは真剣な顔をして雛に耳を傾ける。
《通り魔じけん発生!至急!至急!いばらの森付近にて発生!》
朝から話題になっていた通り魔事件がまた起きた。
「んージャンヌちゃん。ごめんね。王子達と大人しくお留守番ね。僕らはちょっと仕事行ってくるよ」
そうヘンゼルさんは私の頭を撫でながら、いかにも魔法使いです!みたいなマントを羽織り、グレーテルさんは鎧をつけた女騎士の格好を一瞬で着替えた。女性なのに凄くかっこいいわ!!
「通り魔じけん?最近僕も耳にするけど!」
「俺らも行きたい!」
ライルとフラン君がそう言うとグレーテルさんは二人の頭にゲンコツをした。
「いったあ!僕王子なのに!?なんでゲンコツをー」
「自分の身ですら守れない者は足手まといだからですよ!ガキがでしゃばるんじゃない!」
「……っ!」
そう言ってヘンゼルさんと共に大きな鷹に乗り事件の方へ向かっていった。
お城は安全だからと私達は留守番をすることになったけどいつも冷静なフラン君が少し悔しそうな顔をし、
「だって…僕の大事な国だから……父上みたく…なりたくて」
ライル君も悔しくて、、いや、泣いていました。
「よしよし、ライル君泣かないで」
「ヒック…あのババアグレーテル…ヒック…こえー。頭いてーし…ぐすっ」
「ねえ……これ。グレーテルさんの忘れ物…」
シラユキ君が拾ったのは赤い魔石だった。え!これ重要なやつじゃん!
「さっきヘンゼルさん、魔石取り外しながら僕達に説明していたから……」
シラユキ君はどうしよう?と首を傾げる。
ライル君とフラン君は
「「届けよう!!」」
「…さっきまで泣いてたのに立ち直り早いね」
「よし!俺らもいくぞ!ジャンヌは俺らが守るさ!」
「グレーテルさんの大事なものだよね…」
「僕はお腹すいたんだけど…」
ふふ、こんなときでもシラユキ君はマイペースさんだね。
「あとで沢山お菓子食べようぜ!」
「お留守番だっていわれたけど大事なものだもの!私グレーテルさんにこの石届けたい!!」
「「「おー!」」」
魔石をギュッと握りしめ私達はいばらの森付近へ向かう。
「ちょっとたんま!トイレ!」
「…ライル…ぜんぜんしまらないじゃん…」
そうフラン君は呆れていて、私とシラユキ君はクスッと笑った。