異世界図書館の司書 その壱
壱
「……あれ?」
目を覚ますと、群青色の空が映った。
「え、え? 私、バスの中で、多分、死んだんじゃ、ないの!?」
体を起こして、円を描くように歩く。
しばらくして、足を止めた。
「……あ。これは、異世界転生って、やつなのか……?」
辺りを見回すと、ここは一面野原で、遠くに中世ヨーロッパの建物がそびえ立っていたり、そこを行き交う人達は、皆、肌の色が私と違っていた。
また、明らかに容姿が人間ではない者もいた。
最近、異世界転生ものが流行っているのは、ライトノベルに疎い私でも知っていることだ。
「てか……。異世界って、本当にあったんだ!?」
自分が転生したことよりも、異世界が在ることに驚いた。
在ったんだな! でも、何で……。
「……何で、異世界転生したんだろう……」
この言葉に尽きる。
と言うか、日が暮れたら大変だし……。とりあえず、あっちの街に行くか……。
足を一歩踏み出すと、硬い物を踏んだ感触がした。
「うん?」
足下を見てみると、私がバスに乗っていたときに読んでいた『ナルニア国物語』が土台のように踏まれていた。
「うわああ! ごめん! ごめん!」
足を引いて、本に付いた土などを、丁寧に払う。
ちゃんと、足下を見とけよ~。私の馬鹿~。
本を踏んでしまったことに、ショックを感じていると、話し掛けられた。
「◑§☆◑■△◁♤?」