嘘つきな笑顔
どれだけの間、泣いていただろうか。目が腫れてしまっているのがわかる。このまま家に帰っても心配されるだけだろう。
(少し冷やしてから帰ろう…)
オーマにいつもの湖まで乗せてきてもらい、そのまま冷たい水に顔をつけた。冷たくて気持ちいい水で目が醒めるような気がする。父の過去は気になるし、何故、父が女王を裏切ることになったのか、そもそも、本当に裏切ったのか、裏切ったのなら何故、何故、何故…。ここにこうやって隠れ住んでいることが何よりの証拠でもあると思っていても、どうしても父が裏切ったことが信じられない、信じたくない。本当はすぐにでも父の口から聞きたい。でも、本当なのか聞いてしまいたい気持ちと聞きたくない気持ちで、自分でもどうしたいのかわからない。
冷たい水で暫くの間目を冷やし、大好きな父の事を考える。寡黙で厳しくて、でも、時折ふっと優しく微笑んで頭を撫でてくれて、転んで泣いてる私をおんぶしてくれた広い背中…何を思い浮かべても父が大好きで、嫌いにはなれない。誰がなんと言おうと、私は父が大好きだというところに行き着く。
「オーマ、帰ろう。」
慰めるかのようにオーマは私の頬に自分の顔を擦り寄せると、私を背に乗せて家に向かってくれた。私はもう泣かないようにと家に着くまでオーマの背に顔を埋めたままだった。
――そうして、家に帰った私は、笑顔で父と母にただいまと笑いかけた。いつものように、笑顔で。