父の裏切り
この国は女王が代々統治してきた国であり、歴代の中でも最高の力を持った女王がいたと母に教えてもらっていた。この国の最後の女王であり、国を守り亡くなったオクタヴィア女王。民に慕われ、騎士達は自分たちが仕える女王を心から尊敬し、そんな女王に仕えることを誇りに思っていた。しかし、闇族との戦いの最中、民を守るために亡くなったと聞いている。女王には子がなく、女王が亡くなった後は女王の補佐を務めていた宰相が国をかろうじて統治している。
(そう聞かされていたその女王がまさか・・・)
お父様が裏切ったと町の人も言っていたことを思い出す。裏切り者の子供だと私を見たあの子供の目も。
自分達がなぜ森の奥深くで住んでいるのか、町にはあんなに沢山の人が住んでいるのに。その理由は、町に住むことなど許されないからではないのだろうか。
『リリアーヌ・・・』
気遣わしげに自分を呼ぶ声で我に返った。自分がビッショリと汗をかいていることに気づく。身体中が冷え切っている。手に力が入らない。
『リリアーヌ、リリアーヌ、あの子供達を追い払ってあげる』
気づくと鳥達が私の周りを飛び回っている。そのまま、子供達に向かっていくと、子供達の周りを素早く旋回しながら、かん高い声で鳴き始めた。
突然鳥達が飛び回り始めたことに子供達が怯え始めて、泣き始める。オーマが一声空に向かって吠えると、沢山の動物達が子供の前に現れた。怯えた子供達が町への道を走って戻り始めた姿を見て、ホッとした自分がいた。
オーマの背にしがみつきながら、声を殺して暫くの間泣き続けた。