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プロローグ

 その日、叩きつけるような激しい雨が降っていた。視界も遮られる程の雨の中、一人の男が森の中を駆け抜けていた。傷だらけでずぶ濡れになり、冷たい雨に体温も奪われ、既に気力だけで走っている状態のその男の胸元には大事そうに抱えられた赤子がスヤスヤと眠っていた。

 雨に濡れないようしっかりと布にくるまれた状態で、胸元に抱えられたその赤子はこの先に起きることなどまだ知ることもなく、ただただ幸せそうに眠っていた。


―――その男の胸元で、後に裏切り者と言われる父に抱かれて。

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