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人間原基  作者: 黒鍵猫三朗
第二章 変化は起こり始めると止められない
40/50

2−6

「なんですと!!」


ミギトが大きな声で驚く。

サコはかろうじて声が出てしまうのを堪えたが、驚きに満ちた表情は隠しきれなかった。

正面に座っているミズコも驚いている表情はしている。

目を見開き、これからどんなワクワクする出来事が起きるのか楽しみにする子供のような表情を浮かべている。


——アルストは……?


アルストは平然としている。

リュッコも大して驚いてはいなかった。


——これはアルストの書いた筋書き……?


「お待ちください、国王陛下!

 王位継承権は血筋によって決められるはず!

 第一皇女であるユリコ様の娘であるユキコ様が第一位なのは不文律でございます」


「慣習ではな。それは法律で決まっているわけではない」


「どういうことですか……?」


ミギトは考える。


——そんなことはないはず。

法律によって順番を決めておかなければ争いの原因になるではないか!

随分昔に決められた法律に順位の決め方が記載されているはず!


だが、リュッコがミギトを見つめて言う。


「つまりね〜。法律は変わるの〜。時代に合わせてね〜。すでに順番は関係ないわ」


「いつのまに……!」


リサコが後ろで絶句している。

どうやら、知らなかったらしい。


——ゴーストのメンバーでも調べられない間に法律を変えてしまったのか!


「ユリコ様はそれでよろしいのですか!?」


ミギトはドワイトの隣で静かに座っているユリコに話しかける。

だが、声による返答はなく儚い笑顔と一つの頷きだけを返された。


——だめだ。あの方は本当に興味がないのね。


ユキコの姿をしているサコですら、少し悲しい気分になる。


ユキコ(サコ)のことをニンマリと見つめるアルスト。

まんまるな手入れされていない顔が浮かべるニヤケ顔は気持ち悪かった。

だが、それどころではない。


——この攻撃!

明らかにユキコを引き摺り下ろしにかかっている!


「へぇ、それはとっても面白そうね」


ミズコはにっこりと笑う。

ユキコ(サコ)は笑顔を崩さないことが精一杯だった。


——なに、この会議……!

一体誰の筋書きなの……!?

ユキコ様のおっしゃっていた通り、敵がユキコ様を貶めようとしていることは確かなようだけれど……!


「さあ、これでお前たちの立場が完全に平等なものになった。

 そこで、問いたい。我が国のEEが逼迫しているのは知っているな?」


誰も声を上げない。

それぞれ、独自の情報網で調べていたのだろう。

全員が少し表情を引き締めてドワイト王を見つめる。


「そこでだ。君たちには今後、ラーティン王国が取るべき道を示してもらいたいと思う」


「取るべき道……? どう言うことでしょう?」


ミズコがドワイトに聞き返す。


「ああ。EEがほとんど残っていない今。

 この国に未来はない。産業、軍事、インフラ。

 全てEEで賄っている。EEがなくなるとはこの国が滅びると言う意味に等しい。

 そこで、この国を存続させるに当たっての案を提示してもらいたい」


ユキコ(サコ)はキタッと心の中で叫んだ。

議題に登るのが遅すぎるくらいだった。

そして、ユキコはそのために準備してきている。

継承権がおかしなことになってしまったが、ここできっちり挽回しなければならない。


「それぞれ、案を提示する意思を聞かせてもらおうか」


ユキコ(サコ)はさっと手をあげる。その意思をミギトが代弁する。


「ユキコ様は参加なされます」


「いいだろう。

 ユキコよ、発表までに声が戻らなければその資料のことを発表せよ。

 それ以外は許されぬ。

 もし声が戻ったのなら、自由に発言するがよい」


ユキコ(サコ)はぺこりと一礼する。


「アルストはどうだ?」


「アルストは参加しますわ〜」


リュッコが猫なで声で答える。

ドワイト王はゆったりと頷くと、ミズコを見る。


「私は辞退しますわ」


「それでいいのか?」


「ええ、構いませんわ」


ミズコは不参加を表明した。

やはり、ミズコは王になる気がないのか。

それとも、なる気はあるが案がないだけなのか。

もっと別の理由があるからなのか。


「では三日後、ユキコ、アルストの成果を見てどちらを順位の高い継承権を得るのか決めることとする!」


——三日!? いくら何でも短すぎる!


サコは心の中で驚く。

アルストは三日ということに対してなんの感情も示していない。

王位継承権の事といい、どうやら、この決定の裏で糸を引いているのはアルストらしかった。

全てか彼の手の上というわけらしかった、


だが、ユキコは声が出ない。

流石に日程に関しての事柄を手元のレポートから言うことはできなかった。


ドワイトは見渡して不満が出ないことを確認すると手元にある木槌で机をダンッと叩く。

同時に全員が立ち上がり、国王に敬意を表し礼をする。

ドワイト王と皇女が退出するまでその体勢でいなければならない。

王たちはゆっくりと部屋から出て行った。


ミズコは礼を解き顔をあげるとそのままの足で会議室を出て行ってしまった。

本当に興味がないらしかった。


ユキコ(サコ)は後ろに控えていた面々に振り返ると手に持っていたメモに書く。


『とりあえず、部屋にもどりましょう』


後ろにある扉から廊下に出たが、サコは心の中で謝罪していた。


——ユキコ様、申し訳ありません……。なんだか大変なことになりました……!!




ユキコ姫の部屋に戻った彼らは状況を整理すべく話し合いを始める。


「それじゃあ、遮音するぞ」


「お願いします」

メイド服を速攻で脱ぎ捨て、黒い騎士団服に着替えたリサコ。

盗聴を防ぐ遮音のEE鉱石が込められたフィギュアを机におく。


「どうでもいいんだけど、なんでそれユキコ様の形してんの?」


チコはそう聞く。

リサコは指摘してもらえたことを心底嬉しそうな表情を浮かべる。


「せっかく久々に再会したし、ユキコ様をよく知るためにまず、体の形から調べようと思ってね。

 ユキコ様の体の形を隅から隅まで調べ上げて作った特製フィギュアなんだぜ!」


サコはそれを聞いて眉をひそめながら言う。


「それは後で没収します」


「ええっ。そんな……殺生な……」


「姫様のスリーサイズは我が陣営の最高機密です。さて……」


サコは周囲の人を見渡す。

リサコ以外全員沈んだ表情をしていた。


「さて、まず第一目標、ユキコ様の権利確保ですが、最低限確保することができました。

 とりあえず、意見を表明できただけ御の字です。

 ユウト様が一緒であればユキコ様の声は戻ります」


「ちょっと不気味ですけど。

 声が戻ったら普通に発表していいという条件。

 敵はユキコ様の声が戻っても問題ないと考えているのでしょうか」


レイトがそう問いかけるとサコはうなずく。


「そうだろうと考えられます……。ユキコ様は舐められているのです」


ミギトは頷いた。


「ええ……。そして、残念ながら第二目標だった、敵の把握は難かしゅうございました」


「そうですね……。今回の会議、敵の目的は間違いなく王位継承権の順位撤廃です。

 本来であればユキコ様を殺してそれを手に入れるつもりだったが、殺しづらくなりこんな手を打ってきたのでしょうけれど……」


サコは頭を抱える。

想像以上に宮殿の中はややこしい状況になっているらしかった。


王位継承権を撤廃して得をしそうな人間など、こんな状況になってしまえばいくらでもいる。

第二位だったアルスト。

第三位だったミズコ。

ユキコに協力をお願いしにきて突っぱねられてきた大臣たち。

ユキコは特権などの考えは好まなかった。

どんな奴が近づいてきても全て突っぱねてきた。

今となってそれが裏目に出ている。


リサコはユキコフィギュアを眺めながら発言する。


「敵筆頭はアルストっぽいよね。

 この会議の結果、三日後となった発表、全てアルストが糸を引っ張っていると言われたあ納得がいく。

 あの落ち着き様。

 発表の準備もほとんど終わってるんだろうな。

 最も、彼自身は王になって自由にしたいだけかもしれないけど。

 そこについているリュッコが優秀。

 だいたい、元娼婦なのに王族に取り入ってドワイト王の前で発言すら許されているなんて異常よ」


「人脈を築く力がすごいって言うけど、どんな風なの?」


チコはそう聞いた。

リサコは少し悩んでからこう答えた。


「うーん。

 もし、チコが一般市民のそれも奴隷のような扱いを受けていたとして、そこから人脈を広げていくだけで王様に話しかけられるほどになれるなら、彼女は大したことないわ」


「……なるほど」


チコは黙った。

要するに彼女は会話術だけでここまで登ってきたのだ。

ある意味、今回の会議で王の座を決定するような状況では最強に近い存在だろう。


「彼女の元には様々な人材が集まっていて、リュッコはある意味万能なメイドになっていると?」


ミギトはそう問いかけた。リサコは答える。


「そうよ。

 そして、その人材をフル活用してEE鉱石がなくなってしまったことに対する回答を得られるまでになった」


「まるで、ユキコ様がEEの代わりになるものを探していることを知っていたみたいですね」


レイトがそうこぼすとリサコは言う。


「まるでじゃなくて、実際知ってたんだろ。

 知ってて、それに上回るものを見つけてきた。

 ということだろう。

 アルスト……。ほとんど人とコミュニケーション取れないやつだと思ってたから舐めてたけど。

 リュッコなどと言う人材を味方につけただけで、只者ではないことを証明している」

 

レイトは頷きながら次の話題を提示する。


「ミズコ様についても結局よくわかりませんでした。

 最初、ユキコ様の意見具申のチャンスを潰しにかかったかと思ったのですが、以降はほとんど干渉してきませんでした」


「あれに関しては何考えてるか全くわからないからな……。

 ま、私としてはミズコよりもユキコ様の方がタイプだけど」

 

リサコは真顔でそう言った。


「ここにいる全員そうですから、宣言していただかなくて結構ですよ」


サコはそう言うとふうと息を吐く。


——何はともあれ、ユキコ様の判断を仰がねばならない。

あと三日で準備して発表しなければならない。

リサコに連絡係を頼まなければ。

一体、宮殿の裏で何が進んでいるのか!?


読んでいただきありがとうございます!

よければブクマしていただけると、嬉しいです!!

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