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人間原基  作者: 黒鍵猫三朗
第二章 変化は起こり始めると止められない
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2−4

レイトがリサコの言葉を引き継ぐ。


「おとぎ話の中だけのものだと思っていましたが……。

 発動条件や“ギフト”を使われる前兆とかわかっていることはありますか?」


サコは首を振る。


「何もわかっていません。

 何をされたら獣化症にかかる対象となってしまうのか。

 なにを持って獣化症の発症とするのか。

 どうやったら防げるのか……」


リサコはこの世の終わりを見ているかのような、蒼白な顔をして言う。


「もしそんな“ギフト”を使える奴が実在してるのなら……」


リサコは部屋の中にいる面々を見渡して言う。


「これから、ここにいる誰が獣になってしまってもおかしくないと言うことだ。

 それに、それを秘匿できるのだとすれば。

 ある日、ここのメンバーが減っていても気づかないってわけだ」


部屋の中を、ねっとりとした冷たい風が通り抜けたかのようだった。

サコはブルブルっと体を振って悪寒を取っ払うと言う。


「獣化症に関して、ユキコ姫はユウト様の力が必要だと考えています。

 ユウト様は獣化症を研究していらっしゃいますから。

 それに治療の“ギフト”もある。

 きっと、ユキコ姫がなんとかする方法を見つけて帰ってきます。

 私たちはとにかくユキコ姫が戻ってくる場所を確保しなければなりません」


サコの決意。サコの後ろに立っていたミギトがすっと出てくると言う。


「さて、その話は私からさせていただきます」


そう言うとサコはチコが座っているユキコのベッドに座る。


「ユキコ様は現状声を失っておられます。

 帝国のしきたりにより声を失った王族は発言権を失います。

 よって、ユキコ様の希望は全て通らなくなりました。

 正直、帝国数千年の歴史の中で声を失ってしまった王族はいません。

 そうした王族は皆自殺、または殺害されてきたからです。

 今後、ユキコ様がどのような立場になるのかわかりません。

 大事なのは私たち部下です」

 

リサコはニヤリと笑うとミギトに言う。


「つまり、わたしらがユキコ姫の意思として行動すればいいってことだろ?

 今は、その役目をカントとかカズトなどにいいようにされている。

 なんとか取り返さなきゃな?」


だが、ミギトはあまりいい顔をしなかった。


「なんだよ」


「そううまくいくでしょうか。

 おそらく、第二位のアルスト様はユキコの王位継承権放棄を迫ってくるでしょう。

 ミズコ様は害がない分、傍観者だと思われます。

 協力は仰げないと考えるのが妥当でしょう……」


レイトはミギトの悲痛な表情を見て不思議に思う。


「ミギトさんはなぜそんなに焦っておられるのですか?

 ユキコ姫の進退はそんな急に決まる物でもないでしょう……」


ミギトは言いづらそうにレイトを見ると、重々しく言う。


「今はまだ夜中ですが、もうすぐ日が昇ります。

 本日の朝、会議が開かれることが決定しました。

 参加者はドワイト王、ユキコ様、アルスト様、ミズコ様。

 王位継承権の第三位までの関係者が集められ国の行く末を問われる会議が行われます」


リサコは立ち上がると、怒鳴る。


「それを早く言えよ!!」


「待ってください。

 後から合流されたお二人にできることはありません。

 すでにサコ、チコ、そして私でユキコ姫を守る作戦を立てています。

 おそらくEE減少に関する議題でしょうけど、それに関する詳細は姫様本人しか知りません。

 わたしらは概要のみを使いながら会議を乗り切らなければなりません」


ミギトは左手に紙の束を持つ。

ユキコの署名がしてある。

少し日に当たってしまい、日焼けしている。


「今からでは打ち合わせもできませんから、あなたたちの役割だけ決めておこうと思います」


サコはリサコに確認する。


「ゴーストって顔出すのまずいんでしたっけ?」


リサコは少し考えると言う。


「問題ないんじゃないか?

 一応、ドワイト王お抱えの直属部隊ってことにはなっていたけど、ここ一年間は仕事なくて。

 実際にドワイト王に会ったことないからな。

 部隊に下される命令もEE石版に送られてくるメッセージで一文『〇〇を殺せ』ってくるだけだったし」


リサコはそう言いながらもレイトを見る。


「隊長の言う通りですね。

 我々はもうユキコ様の配下になりました。

 堂々と素顔を晒しましょう。

 それだけでも他の陣営を威圧することができましょう」


「そうして敵が出てくるんじゃないの?

 ゴーストを消すための部隊とか」


チコの指摘にレイトはふっと花で笑う。


「我々がその部隊だったんですよ。

 それに、そうして攻めてきてもらった方が楽ですよ。

 我々も伊達に鍛えているわけではありません。

 返り討ちにしてユキコ様の敵がどんな奴らなのか、検討をつけることができます」


ミギトはうんと一回頷くと、リサコ、レイトを見つめる。


「姫様に強力な味方がついたこと、嬉しく思います。ご協力をお願いします」


とてつもない実力を隠しているミギト、それを見抜いていたリサコだからこそ低姿勢なミギトにこうしてお願いされてしまっては心踊るのを抑えきれなかった。


「よっしゃ、任せろ! なんでもこなしてみせるぜ!」


元気よく返事をしたリサコだが、この後、心底後悔することになる。



ユキコに扮したサコは緊張した面持ちで扉の前に立っていた。

青が強めにあしらわれたロングスカートのドレス。

ボディラインを出しつつ、腰を高い位置に見せてくれる。


サコはスカートの裾を掴んで直し、掴んでは直し緊張を和らげる。


ここから先は後ろにいるメンバーに頼るしかない。

何しろユキコは喋れない。


「頼みますよ、みなさん……!

 姫様の名誉、守った上で敵を絞り込みますよ」


ミギトは恭しく礼をする。

だが、その表情は狂犬のようだった。


「もちろんでございます。

 ユキコ様を我が物にしようとする輩がいれば捻り潰します」


サコはユキコの影に隠れるようにほとんど喋らなかったミギトがここまでの闘志を心に込めていたと知らず意外だった。

知られざる一面を見れて嬉しかったが口ではこう言った。


「きちんと言葉を使って交渉してください」


チコはメイドに似合わぬ、格闘のリングに上がる前の野生児のような顔をして、右手に作った拳を左手に打ち付けていた。


「私も。必ずボコボコにするわ」


「あなたは喋っちゃダメですからね。バカがバレますから」


そして、リサコ。リサコは騎士団の服ではなくメイドの服を着せられていた。

スカートがスースーすることを初めて知ってしまった女装男子のように顔を赤らめ恥ずかしがっている。


「な、なぁ、わたし、これ脱いでいいか……?

 こんな、ひらひらな服、きてらんないぞ……」


「リサコ。しょうがないのです。

 二人いるはずのメイドですから。

 それになんでもするっておっしゃいましたよね?」


サコはあえて厳しく突き放す。


「はうっ……なんとかならねぇのか?」


「なら、そこで今すぐ脱いだらどうですか?」


「脱いでいいのか?素っ裸でいいなら脱ぐぞ!」


「リサコ隊長。似合ってますよ。そのままでいきましょう」


「ん? そうか……? もしもの時動きづらいんだけどな」


レイトはそんなリサコを見てちょっぴり嬉しそうだった。

サコはそんなレイトにピーンとひらめくところがあったが、この場では言わなかった。

代わりにこう言った。


「レイト。あなたが頼りです。

 ミギトと二人でなんとか切り抜けてください」


目を外してしまうのが勿体無いと言わんばかりに、少し不機嫌な顔になりながら、サコの方を向いたレイトは頷いた。


「わかってる。なんとかやってみる」


サコはハァと息を吐く。

ゴーストの協力がもっと早ければ、交渉やもしもの時の恐喝のカードを用意できたと思わずにいられなかった。

ないものは仕方ない。

それに、私ができるのは筆談のみ。

レイトやミギトに方針をこっそり渡すことはできてもそれ以上のことはできない。

あとはなるようになれと願うしかなかった。


「ユキコ・フォン・ラーティン!入場!」


号令がかかった。ユキコに扮したサコは会議場へ入場する。


宮廷闘争の始まりです。


読んでいただきありがとうございます。

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