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第10話 写真家と画家の宇宙開発競争

画家と写真家って何か魅力的です

写真家と画家の話をしよう。

2人は友人だった。


"だった"というからには、この物語は友情が崩壊した物語にならなければならない。友情が崩壊するまでは写真家と画家は上手くやっていた。お互い付き合ってるガールフレンドについても話し合ったし、ドレッシングがきらしたら借りに行ったり貸したりした。

(そもそもドレッシングは一人暮らしで使い切るのには少し難しい)


はたから見たら2人は親友だったのだ。しかしその友情は崩壊した。

人類の団結を恐れた神がバベルの塔を壊したみたいに。崩壊した後冷蔵庫のドレッシングは賞味期限が切れ徐々に腐りそして最後は捨てられた。(そう一人暮らしでドレッシングを使い切るのはベジタリアンじゃない限り難しい。)


そもそも写真家と画家は、嫁と姑のように、茄子の浅漬けと生クリームみたいに、相容れない存在と言える。

片方は自然を切りとり芸術にし、片方は自然を一回体内に入れ咀嚼し自分の物として吐き出す。


今までもケンカをしなかった訳ではない。一度2人は"写実主義"について

口論となった

「写実的に描くなら写真でいいじゃないか」

これが写真家の主張だった。

画家は少し考えてから

「僕は抽象画しか描かない。

君には青空がただの青に見えるかも知れないが僕にはどう見ても緑にみえたり黄色に見えたりする。これも一種の才能だと思う。シャッターを切るだけだったら誰にでも出来る」

この数日2人は口をきかなかったが、気がつくと何事も無かったかのようにまた喋るようになる。

しかしどちらも写実主義については避けるように話をするようになった。

2人とも親友とケンカがしたいわけではない。



その後もドレッシング貸したりしあっていたが(画家の家にはゴマだれドレッシングが写真家の家にはフレンチドレッシングが常備してある)、ある日2人の目の前に美しい女性が現れる。

彼女の笑顔は魔性的に美しく2人を虜にした。写真家はそれを写真におこし

画家はそれを抽象画として描いた。


どちらが彼女の魅力を引き出せるのか

彼らは競い合った。それは人々にアメリカとソ連の宇宙開発競争を思い起こさせたが、その争いで何も生まれなかったし、他にやるべき事だって連休明けの会社のデスクみたいに山積みなのに2人は争った。


案の定2人の中は険悪かし、そしてアッサリ崩壊した。女性の存在する理由の7割は男の友情を崩壊させる為に存在する。そして案の定、女は画家でも写真家でもなく将来が期待されている文学者と結婚した。


ゾウは鼻が長いし、キリンは首が長い。女とはこのような生き物なのだ。

男の子は女の子に振られて大人になる。そう夏目漱石の三四郎のように。


お互い目が覚めて仲直りを模索した。

どうしたら許されるのか、どうしたらもう一度あの時みたいに戻れるのか考えた。


そこで写真家はホームセンターで、新しいキャンパスと新しい絵の具を買い、2人で行ったことのある海岸へ行き抽象画を描き始めた。

そして画家は安物のカメラで2人で行った事のある山に行き山を撮り始めた。

そして作品が出来るとプレゼントとして送りあった。


「君の絵は相当まずいね。海がまるで食べ残したカップラーメンみたいだ」


「君の写真も相当酷いね。娘の運動会にやってきた父親の方がもっと上手く撮るよ」


このように2人は仲直りし、またドレッシングを借り合う中になった。


ある日写真家が画家の家に行き、ドレッシングを借りに行こうとすると、画家の冷蔵庫にはいつものサイズのドレッシングは無く、一人暮らしでも使いこなせるような、ミニサイズのゴマだれドレッシングとフレンチドレッシングが有った。


「もう君のドレッシングを借りなくても大丈夫だね」


画家は得意げに写真家に話す。


写真家はしばらくの間じっとミニサイズのドレッシングを見つめて、

画家に

「なぁ、君の絵と僕の写真。

どっちがこのドレッシングを魅力的に表現出来るか勝負しないか」


バベルの塔は一度崩壊すると、再建する事なく人々はバベルの街を去った。

一方男の友情は何度も崩壊を繰り返し

そして何度も再建される。


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