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『有色』と『  』のA mix  作者: 金木犀
自らの色
53/53

捌:夏、それはとても悠々と過ぎて行く。――続・肆。

次話投稿しました!!


お付き合いください!!

空調の利きが良いのか、少々肌寒い。

「まずは自己紹介からだな。――言っても、私たちは同じ学園の生徒であり同じ一期生でもある。顔見知りばかりで新鮮味を感じられないだろうが、自己紹介はこの場に置いて大切だ。これから三日間を共にする同志と言えるからな」

 凛とした表情の生徒会長が吐く台詞としては(じゅう)全十(ぜんじゅう)()なのだが、裏を知っている僕にとってそれは挑発的にも捉えた。

「では、私から。――この学園の生徒会長を務めさせて頂いている(もも)(たに) (ここ)()だ。初めて私の名前を聞いて驚いた奴もいるかも知れん。何か言いたいことがある奴は直接私に言ってもらって構わない。――加えて、無色だ。以上」

 百谷 心愛。

 それを聞いて反応したのは見る限り僕だけだった。僕ら能力部を除く人間は皆が生徒会関係者。

従って、生徒会長の名前を今更聞くはずもなく、耐性はとっくの前から付いていたと言う訳になる。

 自分のことを棚に上げて言う訳ではないが――マジでギャップが半端じゃない。

 心愛っていうか、珈琲の方が幾分か似合っている。

「……ふっ。」

「――どうした、政所? 何か笑える箇所が私の自己紹介の中に含まれていたか?」

「あ……いえいえ‼ いや、思い出し笑いと言うか何というか――昨日見たお笑い番組がふと脳裏を過ってしまってですね――俺、結構お笑い好きなんですよ?」

「……そうか。以後、慎めよ」

「御意っす」

 能天気なふりをして会長を宥め、ふとこっちを睨む政所と目が合う。

『お前のせ、い、だ、ぞ‼』

 とでも言いたいのだろうか。

コクコクと頷く政所。

僕の読みは当たっている様だ。

「時計回りに行くからな。――んじゃ、次」

 場の空気が多少、やわらんだかと思いきや心愛会長の声色にて戻される。

「はーい‼ 私は第一能力混在学園生徒会学園外治安維持隊の隊長を務めさせてもらっています。(あか)(がわ) ()(ゆう)と申します! 以後、お見知り置きを‼ ――って、言っても皆とは既に顔見知り仲良しですけどね‼ えー、自己紹介って言われてもなぁ。 うーん、とにかく『笑顔』でこの四日間の合宿を終えましょう‼ 因みに私は有色でーす。『一定(サー)円内(クル)移動(ワー)能力()』って名付けたんだけど……今思えば、私ってセンスの塊ですよね! 以上になりまーす‼」

 きらっきらの丹川の笑顔は今日も絶えることなく僕らに披露している。

 表情筋すごいんだろうな……。僕も見習わなくてはならない部分だ。

 僕の笑顔は何だかぎこちないと佐伯に言われて少しばかり心を痛めたのが原因である。

「それでは時計回りと言うルールに従って。――私は能力部所属の佐伯 結菜です。今回、学園を統括している皆さんの大事な会議に私たち能力部まで声が掛かったことに多少の疑問と不安を抱いていますが、ここへ来たからには真剣に会議に参加したいと思っておりますので、こちらで過ごす四日間よろしくお願いします。――私は無色です」

 自己紹介を終えた佐伯はぺこりと一礼をする。垂れた髪を耳に掛ける仕草の後、日差しが差し込む窓へ視線を向けた。

なんとも丁寧な挨拶だろうか。

一昔前の尖った佐伯の今や伝説である担任への挑発的な態度を今は窺うことが出来ない。加えて、気にはしていたが口に出そうか迷った佐伯の『喋り方』にも変化は出ていた。

途切れることの無く、人の成長を間近で見ている僕に自己紹介の権利が移る。

「ええと、能力部所属の白木(しらき) 月乃(つきの)です。お察しの通り、能力部には有能な佐伯が居ますので僕が足を引っ張らないように頑張りたいと思います。有色です。以上」

 端的に自己紹介を済ませると、佐伯の視線が僕に変わり、

『有能って何ですか‼』

 声に出さなくとも佐伯の表情でひしひしと伝わってくる。

「それはそれは‼ 白木君も十分、有能だとは思いますよー私は‼」

 割って入ってくる丹川に軽く一礼をして僕の自己紹介終了を示す。

 いち早く、僕自身の自己紹介など終わらせたいのだ。

 その訳など逐一言わずとも、この場に居る佐伯と担任。それと心が読める政所にはお見通しなのだろうが。

「おい、待て」

 と、そんなフラグをすぐさま回収する会長は自己紹介に待ったを掛けた。

「白木 月乃――君は有色なのだろう? だとしたら、何故。能力を明かさない? この場に於いて隠し事をする理由を私は聞きたいのだが?」

 分かる。僕には分かる。心愛会長は僕に掛けた疑念を解いてはいない。

 あの日の出来事を引きずっては、僕に引け目を感じさせたいのだろう。

「――そう、ですよね。そうなりますよね、やっぱり」

 しかし、僕もここで引き下がる訳にはいかない。

 生徒会と能力部は協力関係を築き、どちらも同等の立場でないと僕に時折、不条理に課せられる『反省(けい)(ばつ)』を無くす術など今後見出すことが出来ない。

 僕は覚悟を決めて声に出す。

「でも、心愛会長? 僕の能力を明かす理由などこの場に於いてそれこそ無駄ですよ?」

 言い終えた後、覚悟をしていたとしても背筋が凍る。やはり、『心愛』と言う名は会長に相応しくは無い。


最後まで読んでいただきありがとうございます。


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