漆:人の想いはそれぞれで、それぞれが幸せの在り方。――続・陸。
次話投稿しました!!
少ないですが、お付き合いください!!
日時 同日。午後五時過ぎ。 場所 第一能力混在学園教室棟一階能力部部室。
一つ、また一つ。華奢な身体から落ちるその雫は、外の雨とは混じり合うことの無い程に冷たく濁っていた。
張り詰めた空気がどうしても抜けてくれない。一歩でもその場を動こうとするならば、柔らかな頬を擦り切るのだろう。
「どうして……どうして、そのようなことしか言えないのですか……?」
「どうして? いや、どうしてもなにも本音を俺は言っただけじゃんか? そっちの低俗な勘違いを俺のせいにしないでくれないか?」
場に飲まれているのか、同調しているのか、佐伯のそんな冷たい言葉も初めて聞いた。
「低俗って……」
「なんだよ、結菜ちゃん? 別に結菜ちゃんには関係のない話だろう? いくら能力部の依頼だからって、人の感情までも説教できる立場なのかよ?」
質問に質問を返し合う二人の会話。冷酷なそんな空間がこの部屋に似つかないのは今までの生活が甘いものだった、と僕は心の隅に思う。
絶えない無意味な口論。比例して冷たくなっていく温度と暗くなっていく部屋――。
「たかが傘を貸したぐらいで――」
政所が結論を述べる寸前、
バチンッ‼ と、高く乾いた音が響いた。
「……最低です」
目を丸くする政所に、それに自分自身でも驚いて右手を隠した佐伯。
「佐伯少し落ち着いたら――」
そんな僕の言葉に耳を傾けることなく、佐伯は部室を出て行った。その後を追うかのように、古国府も目を真っ赤にしながら身支度の準備を済ませ、
「……白木君、本当にご迷惑を掛けました。 ――それと政所君、傘お返します。ありがとうございました。それとごめんなさい」
小さく、とても小さく、じめっとした廊下に消えて行った。
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次話は二十一日です!!
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