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『有色』と『  』のA mix  作者: 金木犀
密かな色
39/53

陸:哀れと、内緒事。――続・肆。

次話更新です!!


お付き合いください!

日時 六月四日。午後四時過ぎ。 場所 第一(だいいち)能力(のうりょく)混在(こんざい)学園(がくえん)教室棟(きょうしつとう)一階(いっかい)能力部(のうりょくぶ)部室(ぶしつ)



 前回の物語同様に噂と言うか、恋沙汰と言うか、ともかく話が広がるのは光の速さより速いのではないかと思ってしまう。

 昨日、僕は火売の告白(本気なのか定かではない)に告白で返し、なんと『お願いします』と返事が返ってきた。

 それでも火売本人も僕の言葉に驚いていたが、更に驚いていたのは佐伯である。しかしそれは仕方のないこと、惑わされるなと忠告したはずなのに目の前で無様に男は操られたように告白しているのだから。

 今日の出来事としては、まず教室へ入ると角刈りに一発殴られ、他のクラスメイトには歓喜と罵声の割合が一対九であった。

 忘れないように言っておくが担任も僕を見る度にニヤニヤと、面白そうに眺めていた。

 ……仕方ないか。

 僕は居心地の悪い教室の中、席に着く同時にトタトタと近づいてきた火売が飛び切りの笑顔で挨拶をしてきた。

 僕は天使の手助けを受け、周りの目などどうでもいいやぁ。と言わんばかりに笑顔で挨拶を返した。

 この物語って、笑顔が素敵な人多いよね。

 しかし、僕の苦悩は終わることなく、隣の席である佐伯は他人のような態度を僕に振りまくのだ。

 いや、他人であるのは確かなことだが、何というのであろうか。――冷たいのだ。

 それは今朝に始まり今も続いている。


「佐伯、今日は早く帰りたいのだが……」

「あ、火売さんとデートですか。――はーん、そうですね。今日は至ってすることないので部室の片づけをしましょうか、きっちりと部活終了時刻まで」

「しかし佐伯、見渡す限りでは片付けをするまでもなく綺麗ではないか?」

「え、待ってください白木君。恋は盲目と言いますが、埃も見えなくなってしまったのですか? ほら、ここをこうやると……埃積もっていますよ?」

 佐伯は姑のよう指で机をなぞった。その人差し指には微塵な埃が付着していたが、大袈裟に几帳面をアピールし始めたのだ。

 今まではそんなことも無かったのに――。

「……佐伯、僕に苛立っているのは分かるが、そこまでしなくても――」

「……はい? 苛立ちですか? いえいえ、私は白木君に苛立ってなんかいませんよ?」

 ……怖い。表現力が乏しくなるほど怖いぞ。

「それじゃあ、どうして――」

「白木君。私は火売さんとのことを応援していますよ? 異性に免疫がないと思っていた白木君が火売さんのような同性の私でも惚れてしまいそうな程に美人な女子に面と向かって告白してしまうだなんて……もう、尊敬に価しますよ」

 裏が無い笑顔、それが何よりも怖いんだが……。

「分かりました。――私も少々意地悪でした。今日はこれといってやることも無いので定時よりも早く部活を終えましょう。そして白木君は火売さんとデート、私は一人で寮へと帰ります。――それで良いんですよね?」

「……ああ、それで――お願いします」

 僕は深々と佐伯に頭を下げた。それは感謝の意を示すものでもあるが、佐伯と目を合わせるのが怖いと言うのも含まれている。

 そんなことは口が裂けても言えないのだが。



 そんなこんなで時間が過ぎ、僕らは帰る準備を始めた。

「午後五時半ですか……三十分も早く部活を上がれるだなんて私たちは自由ですね」

 佐伯の呟きに反応はしなかったが、グサリと心に刺さる。

「それじゃあ、佐伯。今日はすまないがいつもより早く上がらせてもらう」

「いえいえ、上がるのは私も一緒ですから謝らないでくださいよ。それと白木君、初めてのデートということで緊張していますか? いつもより表情が強張っていますよ」

 それは佐伯、君のせいでもあるのですよ。

「それじゃあ、白木君。楽しんできてくださいね」

 佐伯は鞄を手に持ち、先に部室を出て行った。部室の鍵はいつも佐伯が閉めるのだが、今日は机にポツンと置いてある。

 後始末は僕がしろ。ということなのだろう。

 僕は鍵を手に取り、部室を後にする。

 そして、僕の少し先を歩く佐伯の後姿は何故がくっきりと見えた。

 その訳は分からないが、それもなんだが僕の日常なんだと思えてしまうのだ。




最後まで読んでいただきありがとうございます。


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