伍:確かな存在、奥深い場所へ。――続・肆。
次話更新しました!!
お付き合いください!
日時 同日。午後六時半。 場所 第一能力混在学園教室棟一階能力部部室。
シーンとしたこの部室を僕は絶望と呼ぶ。部活生の掛け声など既に聞こえない。異様に薄暗いこの空間は僕の感情そのものを表しているようだった。
改めて話をしよう。――佐伯は消えてしまった。いや、佐伯そのものは確かに存在する。存在するが、僕のことを知っている佐伯又は僕が知っている佐伯はどこにもいない。
中学二年生へと姿を変えた佐伯を佐伯中学生と表わしていたが、それは無慈悲に誠となってしまったようだ。
記憶がどこまで消えてしまっているのか。佐伯中学生に尋ねてみると、記憶が消えていることすら自覚がないと言う。変わらず、私は私のままでいる。そのように主張していると捉えることが出来た。
だが、それは間違いであり偽りであるのだ。しかし、そうやって直接的にぶつけることも出来ず、僕は佐伯中学生と話を続けた。
そして今のところ分かったのが、私、佐伯 結菜はこの学園に入学した。と、それだけだった。
「……すみません」
「ああ、いや、別に謝ることはないよ。仕方ない――って言い方は間違っていると思うけれど、それでもこの状況を焦りに任せちゃいけない。ともかく、冷静が一番だ」
冷静が一番。と、不安な表情を浮かべる佐伯中学生と僕自身にも向けた言葉でもあった。
「それで……白木先輩。私はこの後どうしたら良いのでしょうか……一応、寮に自分の部屋があると思うのですが色々と怖くて……」
「そうだな、寮ではどのような交友関係があったのかは把握していないから、どのように周りに振る舞えとはアドバイスは出来ないし、何よりその姿は色々とまずい」
この学園に通う生徒であれば『体が幼児化されちゃった』とでも言えば信じないことは無い。が、記憶まで幼児化され失っている佐伯を大袈裟ごとに巻き込むのは危険である。
そうして思い付いたのが、担任の家で一時保護してもらう。という案だったが、『担任』という言葉を聞いただけで佐伯中学生はぶるぶると首を横に振った。
「何故だか分からないのですが怖いです……」
理由を聞くとそう返された。東屋での出来事がうっすらと佐伯中学生を制御しているのだろう。
「……困ったな」
他に頼れる人間はいない。そもそもこの事態を知っているのは僕と担任だけ、その時点で詰んでいるのだ。
加えてこのように部室に居ることが出来る時間も限られている。午後七時を過ぎると生徒は速やかに学園から出なくてはならない。時間が迫っている中、僕は一つ新たな提案をする。
「とりあえず僕の部屋に来るか? そこでこれからの事を考えるってのはどうだろうか?」
「白木先輩の部屋ですか……?」
「ああ、そうだ。――女子寮、男子寮はお互いに異性厳禁だが裏口からこそっと入ればバレることはないだろう。それに女子寮とは違って男子寮は警備が甘いから尚更、大丈夫だ」
「ですが……」
即答とはいかないのは承知の上だ。佐伯中学生が僕のことをどこまで知っているのか分からない。そのような男の部屋に女子一人で上がるのは怖いのだろう。
「そうだな……別に強制ではない。嫌ならそれで他に考えればいいだけの話だ。うーん、学園からは出ないといけないから――」
ファミレスでも公園でも、ともかく冷静に話が出来る場所へ。荷物を持ち帰る準備をしながら問いかけようとすると、佐伯中学生はその間もなく答えを出してしまった。
「白木先輩の部屋で良いです。――あ、えっと、白木先輩がよろしいのであればですが……」
「え、ああ、大丈夫だ。――それじゃあ、案内するよ」
そんな事で場面転換は早くなり、申し訳ない。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そろそろ、使っているパソコンも買い換えようかな・・・・
Surface pro4 欲しい・・・この頃です!!w
余談ですが、
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