伍:確かな存在、奥深い場所へ。――続・弐。
こどもの日・・・と言う訳でこどもになってみたい願い・・・
お付き合いください!
日時 同日。午後五時過ぎ。 場所 第一能力混在学園内。
「その姿で堂々と外を歩いていても平気なのか?」
「大丈夫ですよ、だって私はこの学園の生徒なのですよ? 自分の通う学園を練り歩いてはいけないほどに悪いことはしていません!」
「そもそも、この学園に中学生はいないんだがな」
平凡な学園内を特別目的がある訳でもなく歩く僕と佐伯中学生は一体、傍から見る感想としてどのようなことを囁かれているのだろうか。
当然、僕ら能力部が部活動をしているのだから他の部活もハツラツと部活動をやっている。
ランニングをしている野球部の生徒、ベンチに腰掛け休憩なのか油を売っているのか確信持てないがジュースを片手に楽しそうに駄弁っているテニス部、追いかけっこをしているサッカー部、多種多様な部活動の生徒が僕らと交差していく。
なに、こいつは妹でも連れてきているのか? そんなことを思われたって仕方がない。制服こそ、この学園指定の物だがそれを召しているのはあどけない容姿の女の子なのだから。
「だがな、佐伯。目的もなくその姿で学園内を練り歩くのはあまりおすすめ出来ないと思うのだが……確かに、佐伯はこの学園の生徒だ。でもだな、その姿を見て誰もが『あ、能力で体を幼児化させられちゃったんだ、かわいそー』ってならないからな」
「白木先輩、そんなことは断じてありませんよ。だって、この学園は有色と無色が混ざり合った特殊な学園、そんな非日常的なことが起きてもそれは日常的と判断されてしまうだけです。ですから『わー、あの子かわいいー、能力で体を幼児化されちゃったんだー、うらやましい、うっふん』ってなるのが妥当です」
「いや、普通は『うらやましい、うっふん』ってならないから――てか、もう既に普通じゃないのだった……」
「そんなことよりも、白木先輩。目的もなしに学園内練り歩くのがおすすめ出来ないのであれば、目的を作れば練り歩いてもそれはおすすめ出来るのですよね?」
「目的を作ったとしてもおすすめはしないが、あるのであれば仕方がない」
「では、目的を作るのが目的で学園内を練り歩きましょう!」
「言うことも考えることも中学生になっていないか……?」
クエストを与えてくれる町人を探すように佐伯中学生は先頭を切る。その後を僕が続き、その姿はさながら冒険者である。
目的を作ることが目的。願いを叶えることが願い。そのような屁理屈染みた言葉を背負って歩かなければいけないのだ、それも女子中学生を先人として。
僕の嫌な予感はさらに増幅していく。こんな状況にあいつと出くわしたりしたのならば……。
最悪な展開の想像を頭から振り払い、『やっぱり部室へ戻ろう、好きなお菓子買ってあげるから』と佐伯中学生に提案しようと手を伸ばした瞬間、僕の肩に手が置かれた。
「ちょっと、何しているのかなぁ?」
この抑揚を無駄に付けた喋り方に肩の感触。将棋ならば王手、チェスならばチェックメイト、人生ならば死だ。
恐る恐る振り返る事もせずに僕は立ち止まり、向かい合うことなく僕は確認をする。
「えっと、もしかして生徒会の方ですか?」
「そうですよぉ」
「えっと、もしかして僕と初対面ですか?」
「違いますねぇ」
「えっと、もしかして定留 日和ですか?」
「正解です‼」
正解と同時に僕の肩に置かれた手の力はギュッと強くなる。いたた、逃げるなということですか。まったく、生徒会の方々はおかしな人ばっかりだ、もお。
僕が敵に捕まったことも気付かずに、どんどんと先を突き進む佐伯中学生冒険者を呼び止めることはせず、僕は大人しく振り返った。
「やあ、定留。久しぶりだな」
「こんにちは、白木君。久しぶりだねぇ、ところでだけどさぁ、あの女の子誰?」
ちくしょう、久しぶりという単語を先に述べ、そこからお互いに世間話を開始、話を逸らすといったはずの僕の必殺技がこうも簡単に見抜かれてしまうとは……恐るべし、悪魔族。
「女の子……? はて、何のことですか?」
「もぉとぼけても無駄だよ、白木君。ストーカーのように推定中学二年生ぐらいの女の子を後ろから下心零しまくって歩いているところ目撃しちゃったし、その目撃情報だって多いんだからねぇ?」
妹ではなく、女子中学生を下心零しまくってストーカーしているロリコン野郎に思われていたようだ。――普通に、泣きそう。
「僕にそんな趣味はない。あれは――」
さて、ストーカーではないことを理解してもらい尚且つ、佐伯から佐伯中学生へと変貌を遂げたという問題をなるべく他言したくはない。しかし、それだと僕がストーカーだといった疑いがはれる確率は少ない。一番丸く収まる言い分を考えなくては。
「み、道を教えていたんだよ。定留は、あの子を推定中学二年生ぐらいって言っていたが、よく見たのか? うちの学園の制服を着ていただろ? それに高校一年生だ、小柄であどけなさが残っている女子生徒だって当然いるだろう」
「確かに白木君が言っているように小柄で中学生と間違えそうな女子生徒はいるけどぉ、でもそれは良しとして。どうして道を教えているのに白木君が後を付いているのかなぁ?」
これは痛々しいミス。笑みを浮かべて首を傾げる定留その姿、全てお見通しだと言っているようで、嘘に嘘を重ねる僕の心に釘が刺さる。
「いやさ、『道を教えてほしいのだけれど、あなたの後ろは付いていきたくないから後ろから教えて』って前もって言われていたんだよ。どうしてなのかな、プライドが人一番高いんじゃないのかな。確かに僕なんかに道を尋ねるだなんて、ゴミ箱に頭から突っ込んで逆立ちするぐらいの屈辱だろうからね、仕方ないよ」
「自分で言って悲しくないの……?」
何を言っている、当たり前だ。めちゃくちゃ悲しい。
「とまあ、そんな訳なんだ。――それじゃ、僕はあの子に道を教えないといけないから、また今度」
これ以上に定留と会話を続けることは、自分で自分の首を絞める自殺行為になってしまう。
従って、僕は話を強引に終わらせ立ち去ろうと片足を後方へ下げたその時『待って』と案の定止められてしまうが、定留が吐いた次の言葉に僕の足は自然と止まる。
「すでにその子は先に入っちゃってるよぉ?」
おい、おい、おい。パーティー一人だけになっちゃったじゃん。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
僕は18とまだまだ大人だと言うには未熟な点もいっぱいあります。
そのくせ、会社は休みではない・・・・
僕の事を大人扱いだから出勤なのか・・・・
時にはこども扱い・・・・
世界は今日も上手く回っていますね!!
と、余談になりましたが、
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ピックアップして話を書けたらなと思っております!
よろしくお願いします!!




