最後に着く:この町
「愛着」って不思議な言葉だ。
「愛」が、「着く」。
で、愛着かというとなんか違うが、
愛が着くだと、まあまあ腑に落ちる、
おれのこの町への気持ち.......。
町田駅と、別の大きめな駅の間、
駅前にはちゃっちい今っぽい駅ビル、
古い通りはシャッターがむすっと並び、
バイトしてたコンビニだいぶ前つぶれた。
駅から家まで歩いて15分、
通り過ぎる人らは知らない顔ばっか、
つのもおれが高校ん時移ってきたからで、
「地元愛」的盛り上がり、一切ないここ。
せいぜい、2、3の店でバイトして、
(そのうちの1つは1週間で辞めて、)
あとはもう、駐輪場でチャリ置き引かれただの、
社員、パート、バイトで飲んで気まずい飲みになっただの。
浮かぶ、さえない思い出ばかり。
この駅を発ち、目指す駅で降りて、
はじめて本当のおれになれる。
そうやって、長いことそうやって。
町田、ハンズに向かう通りを歩いて。
相模大野、深夜のジョナサンで。
井の頭公園に舞い散る桜の下で。
神保町の喫茶店で、ナポリタン食べながら。
中目黒のよそよそしいバーで。
大塚のラブホの部屋で。
西新宿ビル街の27階で。
深夜に知らない街飛ばすタクシー後部席で。
クラッシュは、何の前触れもなくて。
抜け出して、さまよった先は。
あの子の住まいの最寄り駅。
(でも、結局、迷った末、行かないどいた。)
おれの住むマンション。
あの猫がたまにいる公園。
(残念、いなかった。)
職場の玄関先、機械警備はすりぬけられた。
中に入って、おれの机周り。
途中にしてる仕事のやり方とか、
残したほうがいいのかなって、でも
PCの電源、スルって透過して押せずに。
父が入ってる、愛甲石田の病院の病室。
おれはがらにもなく父の手を触ったりして、
でも心電図の波形、なんら変わったりしなくて。
母が実家に行ってることは知ってたんで、
夜鷹のようにおれは空を翔び、
盛岡から東へ、山を越えて海のそばの町へ、
ある山のふもとで降りて一軒の家へ、
母の寝顔を見つめ、ごめんねと囁いて。
これくらいだな。
でも、次の瞬間。おれは駅前に。
この町の、駅から家に向かうその場所に。
愛があるとか、そりゃ嘘だとか、
生まれ育ったとか、途中からとか、
そんなの一切意味もなく、関係もなく。
おれはとにかく、ここで降りつづけた。
なにかあるとここへ帰り、
また、はじめるために、ここから出てった。
それがこの場所。
この町とおれ。
この町の、
この町の地形の、
この町の積み重ねてきた時間の、
この町の空気の、
はるかに見える丹沢山系の、
空の、夜の群青の、月の光の。
おれは一部になるだろう。
おれはふふっと笑った。