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「ふぅ、今日の放送も終わりっと」
ユウトはため息をつき疲れた喉を潤すために手元にあったお茶を口にした。
「ったく、歌リクエストなんてするなよなー俺カラオケ苦手なのに・・・でもまぁネタとしてはいいかもな。何か遠まわしに歌える機会を作れば・・・そうだツイッターだ!」
そういうとユウトはおもむろに携帯を取り出しツイッターを開きだした。
彼は俗に言うツイッターガチ勢の1人である。
「よし10RTされたらパンダヒーロー歌います!っと、でもこれじゃされない可能性あるな・・・誘うような文章をっと・・・(まぁされないだろうな)」カチカチッ
「よしこれでRTされて歌える機会も手に入るな。反応悪くても強制されたって言えばいいし俺天才すぎ」
実に浅はかな知能犯である。
しかし彼はこんな日々に何か物足りなさを感じていた。刺激を求め生放送にも挑戦したが未だにオフでの友人らとの付き合いは浅いままである。アルバイト等も親から金を貰えるので特にしていない。毎度電話だけしてその後行かず、それで受けて落ちた気になって自己満足していた。友人らとの遊びも芸能人や世間で騒がれているアイドルたちにも興味が無いので、あまり上手く付き合いができないでいた。
「でも今年20だしそろそろ何かしないと・・・」
そう言いつつもお気に入りの女性生放送者に媚を売ってツイッターに生を出しているうちに時刻は既に深夜2時。すっかり夜が静寂を告げたあとであった。
「こんな時間まで起きてたのは久々だ・・・やべwwwなんかテンション上がってきたwww」
お わ か り い た だ け た だ ろ う か
この深夜まで起きていていけないことをしているような背徳感。皆も小学生のころに感じたのでは無いだろうか。しかしユウトは今までいい子ちゃんだったので、その気分を今夜初めて味わえたのである。
「よしwww今から5代精霊探しに行っちゃうわwwww」
謎である。
「土・風・火・水・そして無これらの精霊を集めると大精霊=マクスヴェルが現れ何かがおきるらしい。ちょうどいい、今の生活に刺激を与えるにはちょうどいいかもな、フフッ」
そうクールキャラっぽく言い放ち酔いしれるユウト。正直痛い。
そしてお気に入りの黒のトレンチコートを着て静かに夜の町へと歩いていった。
月は雲に覆われ姿を隠し、街頭はチカチカと点滅し、人が居ない街路で周りの闇と同じかそれ以上に暗く、深い闇で出来た人影がそこにいた。
人影はまるで何かを探すように右に左に、と首から上を動かす。しかし、見えるのはシャッターの閉まった店のみ。
「ここにもいない……どこにいる五大精霊」(やべー俺すげーそれっぽいwww)
「しかし探す宛てもないな・・・とりあえず廃校になった母校にでもいくかー」
そう言い母校まで足を進めていった。もちろんそういう謎の人物っぽく。
「久々に来たな。まぁでも廃校なんて悲しいもんだな・・・」
呟きながら虚ろな目で学校を見るユウト
(やべーww今の決まったろwww)実に実に浅はかな人間である。
その刹那、ポケットの携帯がメールの着信を告げる。どうやらメルマガのようだ。
「おっと、今日はツイッターしかやってなかったからメール見てなかったな。何か着てるかな」カチカチ
【○○企業】先日は(以下略)今後の就職活動がより上手くいきますようお祈りいたします
「うはwwww落ちたwwwもうどうにでもなーれ☆ミww5大精霊探しちゃうもんねーwww」
吹っ切れた人間とは実に恐いものである。ユウトは規制を上げながらグラウンドにヘッドスライディングしていった。
「ずさーwwwヒュオwwwうはwww土の精霊ノーム見っけwww」
そう言いながら一心不乱に土をポケットに入れるユウト。甲子園球児が泣きながら土を詰めるのとは真逆にユウトは不気味な笑顔で土をポケットに入れていた。
時刻は午前2時半、5月とはいえ身を切るような冷たい風がユウトの体に吹き付ける。
「さみぃwwむむ、この風は・・・風の精霊シルフではないかww我に歯向かうというのかwwよかろう相手をしてやるでござるwwフォカヌポウww」
そう言うと一心不乱に空中で持ってきたコンビニ袋を振り回した。はたから見たらただのキチ○イである。
「待てってwwくそ素早いヤツめ・・・だが!これならどうだ!っしゃああああ捕まえたあああ」
もはや意味不明である。