009
日本中が震えていた。
SNSでも、ニュースでも、街中でも人々は叫んでいた。
「政府は役立たずだ!」
「なぜ司家は止められなかった!?」
「本当に日本最強なのか!?」
中にはこんな声もあった。
「もしハルトがいたら、あの重力の男に勝てたはずだ!」
だが京都は東京から遠すぎた。
ハルトは間に合わなかった。
戦う機会すらなかったのだ。
そして――
世論は完全に司家へと向けられた。
政府の宣言
その日の午後、総司令官がカメラの前に立った。
顔は青ざめていたが、声だけは強く見せようとしていた。
「本日より……
日本政府は MASK BAND を“国家脅威”と正式に認定する。」
続けて言う。
「MASK BAND の構成員を一人倒した者には
一千万円を支給する。
日本英雄部隊は国民を守るためにここにいる。
どうか恐れずにほしい。」
彼の背後には――
日本英雄部隊 … 政府直属の戦士
ハンター協会 … 魔物を倒して報酬を得る独立戦力
各大クランの戦士 … 司家、佐賀家、名護家に仕える精鋭
それぞれの役割は明確だった。
英雄部隊 → 国を守る
ハンター → 危険を倒して金を稼ぐ
クラン戦士 → クラン領を守り、高額の給金を得る
(朝から夜まで警護して金を得る。ハンターのように倒した数で報酬が変わらない)
今、日本中の目標はひとつ――
MASK BAND。
クロウの修行開始
今日もクロウはカマスと訓練していた。
カマスは腕を組み、真剣な表情で言った。
「強くなりたいなら、魔力の扱いを学べ。
魔力ってのは“圧力”だ。
それを常に外へ出し続ければ、身体は強くなる。」
クロウは試した。
体から魔力が弾けた――
――が、ほんの一瞬だけ。
すぐに制御を失い、魔力は煙のように消えた。
カマスはため息をついた。
「魔力を放てば、周りの人間には分かる。
強すぎれば気絶する。」
彼はクロウの額を指で軽く弾く。
「魔力を放ち続けろ。
でも失うな。
人に気づかれない程度で、絶やさず流し続けるんだ。」
クロウは深く息を吸った。
魔力がふっと光り――
……たった2秒。
すぐに消えた。
「うあああっ……むずすぎる……!」
カマスはニヤリと笑う。
「だから訓練するんだ。
ほら、続けろ。」




