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怨霊は絶叫した。


「NOOOOOOOOO──!!」


巨大な砂塵が爆ぜて舞い上がり、

その中心から 炎の塔 が伸び、ハルトへと放たれた。


ハルトは鼻で笑う。


「そんなもので俺を倒せると?」


次の瞬間――


位置が入れ替わる。


ハルトと怨霊の身体が一瞬でスワップし、

炎の柱は怨霊自身へと直撃した。


「ぐああああッ!!」


全身を焼かれながらも、怨霊は必死に魔力を搾り出し、

自らの肉体を霊力で覆う。

ハルトのテレポートを封じるための最後の抵抗だった。


だが、ハルトはただ薄く笑っただけ。


青い光が――彼の瞳に宿る。


「幸運を祈るよ、ハヤト。」


拳銃を構えるように指を向け、

怨霊の胸を狙った。


バン。


完全な円形の穴が、怨霊の心臓部を貫いた。


同時にその穴は、

ハルトの左手にも転移していた。


怨霊は言葉も出せないまま見開き――

その身体はゆっくりと空気へ溶けていった。


これがハルト。

名護一族の頂点。

日本最強の呪術師だった。


一方その頃 ― クロとカマス


クロは今日も、ぴったりとカマスの後ろを歩いていた。


あまりに距離が近すぎて、

ついにカマスの堪忍袋が切れる。


「……なんで毎日毎日、俺の後ろに張りついてんだ?」


クロは手を合わせて深く頭を下げた。


「お願いです! 師匠になってください!」


カマスは舌打ちする。


「この東京には強い戦士が腐るほどいる。

そいつらに習えばいいだろ。」


クロは激しく首を振った。


「ダメです! あなたほど強い人はいません!」


カマスは不機嫌そうに歩く速度を上げたが、

クロはぴったり後ろを追い続けた。


そんな日が――二日間続いた。


稽古場、庭、廊下、食堂。

どこへ行ってもクロがいる。


ついに佐賀本家の当主、サハゴが気づいた。


二人を部屋に呼びつける。


「カマス、お前は常に危険な任務に向かう。

クロが毎回ついて行けるはずがないだろう。」


クロはすぐに一歩前に出た。


「大丈夫です!

もし僕が弱すぎてカマスさんの足を引っ張るようなら、

すぐ家に戻ります!」


サハゴは額を押さえてため息をついた。


「……カマス。頼む、この子に教えてやってくれ。」


カマスは深く息を吐き出した。


「……一ヶ月だけだぞ。」


クロの目が輝いた。


「やったあああ!!」


こうして――

クロの本当の修行が始まった。

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