003
私のブックマーク
クロはすぐに気づいた。
この男こそ、自分が強くなる最大のチャンスだ。
佐賀一族で“第二段階の瞳”を開いた二人のうち一人――
最強の戦士、カマス。
「これ以上の師匠はいない……」
そう思った瞬間、クロは思わず笑みを浮かべた。
「やあ、カマス! 久しぶり!」
カマスは冷たいほど静かな目でクロを一瞥する。
「……よぉ、クロ。」
それだけ言って、まるで風のように通り過ぎた。
向かった先は、一族最大の屋敷――
父サハゴがいる本家の中心。
クロは気にしない。
どのみち、後で必ず話すことになるのだから。
本家邸・族長の間
広い和室。
サハゴは机の前で書類に目を通していた。
その向かい側で、カマスは椅子に座り、足を棚の上に投げ出していた。
サハゴは眉をひそめる。
「……前触れもなく来るとは。何の用だ?」
カマスはにやりと笑う。
「任務が終わったからな。ついでにダイヤと金を少し貰っていく。パチンコで遊ぶ。」
サハゴは目を細めた。
「……お前、気づかれるぞ。」
カマスは大笑いした。
「ハハハ! 俺が捕まるわけねぇだろ!」
叱っているはずなのに、会話はどこか楽しげだった。
兄弟。
無数の死地を共に潜り抜けた戦友。
深い絆が息づいていた。
クロは襖の外から、それをしばらく見つめていた。
――必ず頼む。
カマスに、自分の師匠になってもらう。
未来を変えるために。
一方その頃 ― 名護一族の最強
その頃、日本の別の場所では――
名護一族の頂点、
“日本最強”と呼ばれる男 ハルト が笑っていた。
彼の前には、歪んだ霊――
強烈な怨念から生まれた 怨霊 が浮かんでいる。
怨霊は絶叫した。
「ハルトォォ!! テメェが憎い!!
俺はお前に追いつくため毎日地獄の鍛錬をした!
なのに……なぜ追いつけねえ!!」
ハルトは楽しそうに鼻で笑った。
「弱いからだよ。」
怨霊が突っ込む。
その瞬間――ハルトの姿が消えた。
瞬間移動。
次の刹那、怨霊の背後に現れ、
拳で殴り飛ばす。
怨霊の体は弾丸のように吹き飛び、
巨大な廃ビルを貫いた。
ハルトは指を鳴らしながら言った。
「次、行こうか。」
――これこそ、クロが未来で立ちはだかる“敵”。
日本中をまとめ上げ、
佐賀一族を滅ぼす男。
クロに残された時間は、一年。
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