012
クロはカマスと合流した。
夜の空気が、重い。
本能が告げている――これは簡単な任務ではない。
カマスが静かに口を開いた。
「今日の任務は、厳しい」
クロとダイゴを見る。
「ギャング組織の拠点に強行突入する。
クロ――二十分間、生き残れ。それで任務は成功だ」
クロは喉を鳴らした。
「……二十分?」
ダイゴがニヤリと笑う。
「俺とクロが外で暴れて注意を引く」
カマスが目を細めた。
「その間に、中は俺が片付ける」
作戦は単純。
だが、失敗すれば即死。
クロとダイゴは正面ゲートへ歩いた。
四人のギャングが見張っている。
「おい、誰だ――」
言葉は途中で途切れた。
ドンッ!!
クロの蹴りが炸裂する。
同時に、空間が歪んだ。
カマスが指を鳴らす。
無から――
十本の剣が出現し、斜めに斬り裂いた。
血が舞う。
「敵襲だ!!」
警報のような叫び。
ギャングたちは一斉に建物の中へ雪崩れ込む。
中を覗いたクロは、息を呑んだ。
「……多すぎる」
ざっと見ても――
五十人以上。
思わず、身体が震える。
(無理だ……)
その時。
ダイゴがカードを一枚取り出し、地面に叩きつけた。
「展開」
ゴゴゴゴ……!!
地面が割れ、
五体の石の巨人が姿を現す。
「行け」
石の巨人が突進し、
ギャングの隊列が一気に崩れた。
だが――
炎が爆ぜる。
「下がれ!」
火の中から、一人の男が現れた。
全身を包む、圧倒的な炎の魔力。
(……別格だ)
ダイゴが一歩前へ出る。
「そいつは俺がやる」
振り返らずに言う。
「クロ。
ここからは――生き残れ」
クロの周囲には、
なおも押し寄せる敵。
五十人のギャング。
逃げ場はない。
クロは拳を握りしめ、深く息を吸った。
(二十分……)
(生き残ればいい)
(それだけだ)
そして――
地獄のカウントダウンが、始まった。




