010
その日、クロはカマスとダイゴに同行することになった。
目的地は――京都。
新たな任務が発生したのだ。
そして、それは簡単なものではない。
本来、カマスはクロを連れて行くつもりはなかった。
「この任務は危険だ。お前は残れ」
しかし、クロは首を横に振った。
「行きます。
一緒に行けないなら、意味がありません」
その瞳には、強い意志が宿っていた。
カマスはしばらく黙ってクロを見つめ、やがて小さく息を吐いた。
「……いいだろう。
ついて来られるならな」
移動しながらの修行
カマスとダイゴは地下鉄で京都へ向かった。
そしてクロは――
走った。
条件は一つ。
魔力を常に放出し続けること。
しかも、失わずに維持すること。
高速で走りながら、
魔力の圧を保ち続ける。
二つを同時に行うのは、地獄だった。
三十分も経たないうちに、体が悲鳴を上げる。
呼吸は乱れ、
脚は焼けるように痛む。
それでも、クロは止まらなかった。
(俺は……
日本一になるんだ……)
再び、魔力を強く意識する。
変化
――おかしい。
さっきより、明らかに速い。
走るたび、クロの背後には微かな気流が生まれていた。
完全に制御できていない魔力が、風を歪めている。
現在の速度――
時速60キロ。
一時間以上走り続け、
クロはナマズ地区に到達した。
その瞬間――
ドンッ!!
横から強烈な衝撃。
クロの体が吹き飛び、地面を転がる。
腹部に激痛が走った。
顔を上げると、そこには三つの影。
――獣人。
狼の頭をした男が、にやりと笑った。
「よう。
こんなところで、何してる?」
クロは腹を押さえながら、かろうじて答える。
「……京都へ向かってるだけだ」
狼男は大笑いした。
「ははは!
ここは俺たちの縄張りだぜ」
次に、ライオンの頭をした獣人が前へ出る。
「通りたきゃ、金を出せ」
クロは首を振った。
「持ってない」
次の瞬間――
ゴッ!
ライオン獣人の蹴りが、クロの頭を直撃した。
視界が揺れる。
三人の獣人が、一斉に襲いかかってきた。
(……ここで倒れるわけには……)
クロは歯を食いしばり、
ゆっくりと立ち上がる。
京都への道は――
すでに、戦場と化していた。




