第1話 魔王との最終決戦!?
「なかなかやるではないか、勇者ラザロ・クロフォードよ」
血に濡れた魔王の口元が、不敵な笑みを浮かべる。
全身に傷が深々と刻まれているというのに、その瞳には今なお余裕が見えた。
「はあ、はあ、お前もここまでのようね、魔王ベルファゴーラ」
私は剣を構えたまま、乱れた呼吸を整える。
互いに限界まで追い込んだ戦いの果てに、残された時間はわずかだった。
「誉めてやろう。たった1人で我をここまで追い詰めるとは。……だが」
魔王は黒剣を大地に突き立て、漆黒のマントを風に委ねた。
――その瞬間、周囲の空気が凍りつく。
「だが勇者よ、そろそろ見せてやろう。我の、真の姿を……!!」
魔王の身体に闇の力が流れ込んでいくのが分かる。
立ち昇る暗黒のオーラ。渦巻く力に大地が軋むような轟音を響かせる。
「なっ!?」
信じられない、まだ変身が残っているなんて!?
……いや、私だって。
誰にも見せたことのない、とっておきの奥義がある……!
人類の未来のためにも……
ここで負けるわけにはいかない……!
「畏れよ、勇者よ。これが我の真の―――」
「勇者ラザロ・クロフォードよ! ここにおるか!?」
えっ、めっちゃいいシーンで誰か来た!?
―――ってしかも王様!?
「…………」
ちょっとちょっと、魔王も黙っちゃったじゃん。
なんならめっちゃキメてたから少し恥ずかしそうじゃん、かわいそうに。
「え、ちょ、王様! なんでここに!?」
私は至極まっとうな疑問を王様にぶつける。
「おお、やはりここにおったか、勇者ラザロ・クロフォードよ!」
なんで毎回フルネームで呼ぶんだこの王様。
「いや、ここにおったか、じゃないですよ!? ここ魔王城ですよ!? しかもここ魔王の間ですし!? なんならコレが魔王ベルファゴーラですし!」
私が指差すと、魔王は「あ、どうも」と王様に頭を下げた。
「おお、そうか。まあ、それはよいとして」
よくないよ!?
せめてどうやってここまで来たか教えて!?
「勇者ラザロ・クロフォードよ。お主に頼まねばならんことがある」
「……この状況で? 魔王城に来てまで?」
「一刻も早く伝えねば、と思ってな」
「……黙って聞いていれば、我の前で好き勝手しおって……!」
いや、その通りだよ。魔王はもっと怒っていいよ。
「聞かせてもらおう!! そこまで大事な頼みとは何なのだ!」
ちょっと気になっちゃってるじゃん魔王も。
「お主は黙っとれ! 部外者が!」
いや王様が部外者だよ!? この状況どちらかというと!
「す、すまん……」
魔王、謝らないで……こっちが辛くなるから……
「そ、それで? 頼みとは何でしょうか?」
「……勇者ラザロ・クロフォードよ!」
王様がどこからともなく赤ん坊を取り出す。
「お主をこの子の親に任命する!!」
―――こうして、私は親となった。
こうして勇者は、育休を取ることになりました......
魔王カワイソス......