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3 エンドポイント

この世界にも馬はいるらしい。

会議室のあった魔王城を背中に二台の馬車が下り坂を下っていた。


関節点(エンドポイント)・・・それは、この世界に5つある結晶の事を言います」


馬車の中でウィズが地図を広げた。


「このように、少し歪ですが五角形になるような形で配置されてます。ここが、壊された場所。ここからここが人間の領土って感じです」

「ふむ・・・これを壊すことが勇者の仕事なんですか?」

「そうです。今年は珍しく人間界に、宝剣を扱える逸材が現れたようで話がややこしくなってるんですが、このエンドポイントをめぐって魔族と人間は戦争を繰り返してきました」

「この星にも人間はいるんですね」

「ええ。あなたが紛れ込むことも十分可能です」

「それで?」


人間界への潜入の可能性を、悠介は話を進めることでかき消す。


「我々の仕事は、勇者をどこかで防ぎ、進軍を諦めさせることです」

「であれば簡単なのでは?使者を送るなり、人間の土地を襲うなりすれば」

「それが、今年は妙なのです。大体人間たちが軍を派遣してエンドポイントを襲撃するにしても、勇者にエンドポイントを破壊させるとしても、それ以上の侵略は慰撫(いぶ)するなどしてきたのですが、そういう気配が見られないと」

「・・・どういうことですか?」


話はまだ悠介が地球にいたころに遡る。


第一エンドポイントのある町「イチリア」に、宝剣を手にした勇者一行が入ったという報告が入った。

先代魔王テーミスは、これを受けて手勢を引き連れて勇者を撃退するためにイチリアに向かった。

本来ならば魔王が直々に行くことはない。しかし、


「今回の敵は宝剣を手にした選ばれたもんやと聞きましてなぁ」

「軍隊を持っている他の長老たちに討伐にいってもらったらええじゃろうが」

「ワシらじゃ勝てんかもしれん」

「行けたら行きます」


と、難色を示し続けた魔族のメンバーに嫌気がさし、自ら向かう意思を固めた。

本来は文官、知恵が売りだったテーミスは、事前調査もろくにできずに勇者と相対する事になったが、結果は周知のとおり。圧倒的に強かった勇者の前にテーミスは敗死した。


「テーミスは、程々に戦って痛み分け、というシナリオを思い描いていたようです。だが、勇者側が思ったより強硬的で話し合いに応じなかったと」


悠介はウィズの言葉を受けて不思議に思った。

イメージとしては、逆である。

魔族の側が人間を滅ぼそうとして出て行くというのが悠介の思い描くものだったが、思ったより政治的な事をテーミスはやろうとしていると感じた。

というより、侵略を慰撫するとはなんなのか。


「因みに、魔族は人間界にどのくらい侵略しに行ってるんですか」

「まちまちです。それこそ、過激派と穏健派という感じで。ですが、人間側にも国があって軍隊があり、何より根性がある。魔族は強さこそ人間以上ですが、一旦不利になったりするとやる気がすぐになくなるんです。そうなったときの強さは人間と五分かそれ以下。人間は知恵と根性で魔族と上手に渡り合ってきました」


要するに、人間と魔族の力関係はそれほど開いていないということだ。


「エンドポイントをすべて破壊されるとどうなるんですか?」

「さあ・・・私も生まれる前の歴史は詳しくないんですが、魔族は滅びると言われてますな」

「もし、それが本当なら勇者の方こそ侵略者ということになりませんか?」

「そういうことです。だから会議を何度もやっているのですが、みなさん戦いたくないご様子」


悠介は大方起こっていることを察した。

エンドポイントとやらが、魔族の滅亡を意味するかどうかは()()()()()。だが、その攻防を名目に、人間と魔族は長い間戦争を続けてきた。と同時に、世界の均衡を維持し続けてきたともいえる。

ところが、特異点(イレギュラー)が現れた。今回の勇者である。

話し合いに応じないが圧倒的な強さを持つそれは、大人の事情を無視して進軍する腹積もりであり、魔族側はその対処に困っている。


「おおかた状況はわかりました。今更ですがあなたは何者なんです?」

「わたしはしがない文官のウィズと申します。テーミス閣下とは長い付き合いでした。彼が託したという存在を、どうにか助けたい一心で動いております。念力系の技を得意としていますが、戦闘力は低いです」

「私も人間ですからね。戦闘力はありません」

「それより聞いてください。近所に住んでるカスの家族がいるんですが、そいつらが毎日ゴミを散らかしまわしていて」


(なんか知らんが起こることはどこでも同じだな・・・)


しばらくして、テーミスの屋敷に到着したところでウィズと悠介たちは別れた。

屋敷には数名のメイドがおり、テーミスが貴族階級であったことがうかがえた。


「こちらがご主人様のお部屋です。何か困ったことがあったらこのヒモを引っ張ってください」

「どうも・・・」


(ねえあいつ人間だよね)

(食べちゃってもいいかな?)


メイドたちのひそひそ声にまゆをひそめながら、悠介はベッドに寝転んだ。


(死後の世界だか何だか知らんけど、ふつうに死にてえな・・・)

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