表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ウサギと鈴と就職面接

作者: euReka

 人間の大きさをしたウサギだ。

 そいつが、人間の服を着て受付の席に座っている。

「あのう、面接に来た鈴木ですが人事担当の鈴原さんは……」

 私がそう尋ねると、ウサギの受付は無言で頭を掻いたあとふわふわした手で受話器を握りながら電話で確認を取る。

「えーと、鈴原は今いないから代わりに鈴音が来るってさ」

 私の名前も鈴木だし、この会社の人も鈴のつく名前ばかり。

 それに受付もウサギだから、頭が混乱して今すぐ帰りたい気分になっていた。

「あなたが鈴木さんね」

 数分後に現れた鈴音という担当者は、普通の人間にウサギ耳が生えている女性だった。

「ああ、この耳が気になるのね。でもすぐに慣れるから」


 私は彼女の後についてエレベーターに乗ったり廊下を歩いたりしたあと、突然、青空の見える場所にたどり着いた。

「あなたはもう書類選考で採用されたから、この世界を楽しむことが最初の仕事よ」

 そこには沢山のテーブルがあり、ウサギ人間や、中世の貴族や、怪物のような生き物が賑やかに祝宴を楽しんでいる。

「これはあなたのための宴なのだからステージで一言挨拶をしなさい。ほら、皆あなたに注目しているわよ」

 私はステージに上がると深呼吸し、採用には感謝するがここで働く気は一切ありませんと言い捨ててステージを降りた。

「あらあら、この場所まで来たらもう誰も逃げられないのよ。アタシの仕事は人を騙すことで、それでお給料を貰っているの。あなたには想像もできない世界でしょうけど」


 出口と書いてあるドアを見つけて開くと、今度は星の輝く夜空が広がっていてキャンプファイアーの明かりが見えた。

「こんばんは鈴木さん。わたしが本当の人事担当の鈴原で、さっきの鈴音はとても悪い女です」

 いま目の前にいる鈴原にはウサギ耳はないが、さっきの鈴音と同じ顔だ。

「わたしは鈴音のように強引なことはしないし、帰りたければ今すぐに帰ってもいいのよ。あなたはどうしても欲しい人材だから、無礼を働く者もいて本当に申しわけないわ。でも、あなたを歓迎するためのバーベキューパーティーを……」


 結局、私はすべてを無視してそのまま帰ったのだが、気になって一週間後にその場所を訪れると会社のビルはどこにもない。

 近くの街路樹には、私の名前と“不採用”と大きく書かれた紙が貼ってある。

「あんたのせいで、あたしもクビよ」

 肩を叩かれて振り返るとウサギの受付がいた。

「ねえ、ラーメン奢ってよ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ