第八話
次の日、ギルドに向かうとギルド長とかいういかにも偉そうな人が俺を呼んでるらしい。
...いやだ。こういうのは漫画だとめんどくさい事に巻き込まれるテンプレなんだよ。
そもそも、結衣を守るためにも早く強くならないといけないのに、面倒事に巻き込まれるのはごめんだ。
でも、行かないで後から面倒になるのも嫌だし、ささっと終わして依頼を受けよう。そんな事を考えながらギルド長室に向かった。
中に入ると紳士なおじいさんがいた。
(おじいさん)「君がケント君か。昨日はすまなかったね」
(ケント)「いえ。俺は別に」
(おじいさん)「そうか。私の名前はレイゼルだ。一応、このギルドのギルド長をやっているんだがね」
(ケント)「で、そのギルド長さんが俺に何の用だ?」
(レイゼル)「実はね、昨日の一件でスウェル侯爵家。まぁつまりはガルトの両親から苦情が届いてね」
(ケント)「苦情ですか。どんな内容なんですか?」
(レイゼル)「まぁ長いから要約すると、私の可愛い息子が格下の庶民に傷を付けられて帰ってきた。だから冒険者資格を剥奪の上スウェル家に謝罪に来い。ってことだ」
罰にしては重すぎないか?冗談じゃない。昨日登録して次の日に無職って。強くなるために冒険者は続けないといけないし。
「 (あぁぁ!何で昨日あんな事したんだ) 」
そんな事を思っていると
(レイゼル)「まぁスウェル家はあぁ言ってるが、正直ギルドとして君の冒険者資格を剥奪する気はない。昨日の一件は明らかにガルトに非があるだろうし、話を聞く限り君はかなり不思議なスキルを持っているんではないかね?」
【略奪者】の事か?
(レイゼル)「昨日君が冒険者登録に来た時には、ギルドプレートに雷魔法の記載はなかった。でも君が昨日ガルトに撃ったのは雷魔法。つまり、昨日の短時間で君は魔法を習得したわけだ」
どういう事だ?この世界の人はどうやって魔法を覚えてるんだ?
(レイゼル)「魔法ってのは普通、初級魔法でもセンスがあれば1週間。なかったら数週間はかかる。それに君が使ったのは威力は中級魔法くらいはあったとその場にいた冒険者達が言っていた」
そういう事か。そりゃ半日で魔法を覚えたら不審がるわ。だが、俺が覚えたのは初級雷魔法だ。中級まで獲得した覚えはないぞ。
(レイゼル)「君のギルドプレートを見せてくれないか?それで今回の件は私が何とかしよう」
確実にギルドプレートを見せれば俺がスキルを1日で複数個獲得したのがバレる。そうすれば、俺に目を付けるかもしれない。だが、貴族とのしがらみに巻き込まれないのは嬉しい。
俺は迷いながらも
(ケント)「見せる代わりに、他の人に俺のスキルについて口外するのはやめてください」
(レイゼル)「いいだろう」
見せた
(レイゼル)「略奪者か。なかなかに不思議なスキルだ。昨日1日でスキルだけじゃなく能力値まで大幅に上がっている。昨日の君の能力値はそこら辺の子供よりも弱かったが、今はFランクとして妥当な能力値まで上がっている」
これでFランクくらいなのか。
(レイゼル)「こんなスキルは見た事がない。長生きはしてみるもんだな」
(ケント)「それで、俺はどうなるんだ?」
(レイゼル)「どうにもしないさ。君には引き続き頑張ってもらうよ。君がどんな風に成長するのか気になるのでな」
(ケント)「あんたがどう思おうが勝手だが、これで俺のことはギルドで何とかしてくれるんだろう?俺はさっさと依頼を受けたいんだ」
(レイゼル)「そうか。こんなに長話をしてすまなかったね。まぁ今回のことは君は悪くないし気にする必要はない。ただ、そのスキルを他人に見せる時には気をつけた方がいい。もし貴族連中に嗅ぎつけられたら面倒だぞ」
(ケント)「あぁ、肝に銘じとく」
俺はそう言って部屋を出た。
(レイゼル)「あのスキル、あれはただのスキルではない。伝えでは聞いていたが私が生きているうちに目にできるとは。長生きもしてみるもんだな」