第一話
「ようこそ我がエリシタル王国へ。」
「 (なんだ・・・ここは) 」
目を開けた先には明らかに周りにいる人間とは位が違う王様のような人間と、玉座の間を囲むように立派な身なりをした人達が立っていた。
俺はとっさに結衣に名前を叫んだ。
「結衣!」
すると後ろから「けんちゃん?」と結衣の声が聞こえた。
とりあえず安心しため息が溢れた。
そして目の前の男の方を見た時、そいつは話し始めた。
「ここはエリシタル王国と呼ばれる大陸西部に位置する国である。この国では長きに渡って魔大陸を支配している魔族と戦争をしている」
「 (エリシタル王国?魔族?) 」
聞いたことのないような国の名前と、ゲームと漫画の中でしか聞かない種族の名前。
「君たちには勇者と共に魔王と呼ばれる魔族の王を倒して欲しいのだ」
こいつは何を言ってるんだ。
その瞬間、結衣が強く手を握ってきた。俺は結衣の手を強く握り返した。
すると王の横にいた金の甲冑をした騎士のような身なりに男が話し始めた。
「俺はエリシタル王国第一王子にして勇者のカイサルだ。お前達は俺の従者となり魔王討伐に付いてきてもらう」
俺は冷静に答えた。
「魔王討伐だと?そんなもの認められるわけないだろ!」
するとカイサルは「申し訳ないがそれは認められない。お前らにはこの世界に渡ってくる時に神から強力なスキルを与えられているはずだ」
「スキルだと?」そんなものに身に覚えがない。
「そうだ。それを我らのために使うのだ。拒否すればこの場でお前らを殺す。まぁ、女の方は顔が良いから俺の女にしてもいいが」
こいつは何を言っているんだ?怒りで手が震える。
その時、結衣がまた手を強く握った。「 ( そうだ。俺が結衣を守らないと) 」
「お前ら、ステータスオープンと言ってみろ。それでお前らの獲得したスキルと能力値が分かるはずだ」
俺は半信半疑ながらも結衣に「大丈夫」と声を掛け互いにステータスオープンと言った。
すると目の前に小さなスクリーンのようなものが浮かび上がった。
結衣はそこに書いてある事を読んだ。
「職業:聖女」
「スキル:聖の癒し 初級光魔法 中級光魔法 上級光魔法」
すると周りにいる貴族のような男達と王は声をあげた。
「聖女様とは。やはり転生者の能力は素晴らしいものですな」
「聖女のスキルは魔王討伐には必須スキル。これで討伐に光が見えましたなぁ」
「世界でも使えるのが10人といないとされてる光魔法を上級まで扱えるとは」
そしてカイサルは「聖女とは。お前は俺の勇者パーティーに入るために転生してきたようだな」
カイサルはとても興奮しているようだった。
そしてカイサルは俺に向かって「お前のも読んでみろ」と言った。
俺もスキルを読み上げた。
「職業:略奪者」
「スキル:無し」
すると男達は
「略奪者だと。なんだその職業は?」
「名前からして盗賊系か?」
「スキルも持ち合わせていないとは」
明らかに結衣の時と反応が違った。
「略奪者だと?なんだそのスキルは?能力値はいくつだ?」
俺はステータスの書かれた部分を読み上げた。
「攻撃力10、防御力10、俊敏10、魔力10、体力10」
それを聞いたカイサルは、「職業はゴミ、スキルもない、あろうことか能力値までゴミとはなぁ。お前のような奴は勇者パーティーには必要ない」
「な。まだこの職業がどんなものか分からないじゃないか!」
するとカイサルは「そもそも俺のパーティーに男は必要ない。あっ安心しな。お前の横の女は俺の女として大事にしてやるからな。もちろん夜も俺がたっぷり教えてやるよ」
そしてカイサルは周りに立っている騎士達に命令した。「そこにいるゴミ男を捕えろ!」
その瞬間、俺は周りにいた騎士達に身柄を押さえつけられた。