最終話
「うむ、漸くか。長かったような、あっという間だったような。それにしてもすっかりと大きくなったのぅダダンよ」
「ありがとうございます。アルフィネア様」
礼服を身に纏い、姿鏡の前に立つ。
あどけなさが若干残るものの、この世界の僕の姿は美男子そのもの。
社交場に出ることはないが、令嬢を紹介されるとその誰もが頬を赤く染めるほどにはモテている。
全く必要ないので困っている。
「ワシの公爵家としての最大の功績は、ダダンをエリーゼの夫に迎えられたことじゃ」
「何をおっしゃいますか。今も毎日領の発展の為に精を出しておられるではありませんか」
アルフィネア様はすっかりと老けてしまわれた。
忙し過ぎるのが原因だろう。
「それも今日までじゃ。今日の式を以てワシは隠居じゃ。エルノーに家督を譲る……本当に長かったのぅ」
「お疲れ様でした。そして今までのご助力誠にありがとうございました」
「何を言っておる。助けられたのはワシの方じゃ。ありがとう」
アルフィネア様に抱きしめられた。
「今まで僕はアルフィネア様のことを祖父のように慕っておりましたが、これからは本当の祖父となるのですね」
「今そういうことを言うでないわい……」
感極まってしまったのかアルフィネア様は背を向けてしまった。
「……ホレ、ワシの相手をしている場合ではないじゃろ。会いに行ってやれ」
「はい。失礼いたします」
部屋で着替えを済ませていたのは、純白のウェディングドレスに身を包んだ花のような女性、エリーゼだ。
「凄くキレイです――じゃなかった。凄くキレイだよエリーゼ」
「ありがとう存じます。ダダン様もとても凛々しくて素敵ですわ」
エリーゼとの距離はニ歩程離れているのだが、これ以上近寄るなと背後の侍女の方から視線を浴びている。
……やりにくいなぁ、この人。エリーゼが大好きなんだろうな。
「……ではまた後で。壇上で待ってるよ」
「はい」
僕達の結婚式は王宮で執り行われることになった。
本当はカルステッド鉱山のギルドの広場でやりたかったのだが、客人が多過ぎて入らなかったのだ。
世界中から国の要人が参列するので、王宮か野外かの二択しかなかったので仕方がない。
壇上で待っているのはサザーランド公爵家の面々とエストノーラ国王陛下だ。
会場からの拍手で迎えられてその壇上に上がる。
「はは、馬子にも衣裳というやつか」
「その言葉、そっくりお返ししますよ」
小声でおじさんとやり取りをしていると、エリーゼがエルノー様に連れられて、壇上へとゆっくりと歩みを進める。
会場からは更に大きな歓声が上がり、最前列に位置取っているカノンさんやララーさん、パトリックさん、そして魔王ディラ様が大きな拍手で出迎える。
エルノー様からエリーゼのエスコートを交代し、二人でもう一段壇上をあがる。
ヴェールに包まれた花嫁は本当に奇麗でずっと見つめていると、エリーゼも僕の事を見つめ返してくれる。
死の淵から奇跡的に生還できた少女が、まさか自分の花嫁になるとは思わなかったな。
エリーゼも同じようにここまでの軌跡を振り返っているのか、少しずつ瞳が潤み始めた。
「……ああー。どうやら私の話は二人には聞こえていないようなので、さっさと指輪を交換させようと思います」
国王陛下がお道化ると会場が笑いと拍手で包まれた。
「スミマセン、彼女に見とれていて聞いていませんでした」
「惚気るのは式が終わってからにしてくれ」
用意されていた指輪をエリーゼの細い指へスッと通す。
今度はエリーゼが僕の指に指輪を通してくれた。
僕の手に触れていたエリーゼが、潤んだ瞳でじっとこちらを見ている。
その仕草で愛おしさが爆発してしまい、そっとヴェールを上げて口付けした。
「おい、順序を守れ」
「スミマセン我慢できませんでした」
陛下に謝ってから、更にもう一度口付けを交わした。
会場からは悲鳴のような歓声が沸いているし、ディラ様は大いに盛り上がっている。
「いい加減にしろ!」
陛下に引き離されるようにしてエリーゼと離れると、彼女は頬を赤くして涙を溢していた。
「嬉しゅう存じます」
ヴェールを降ろす時に小声で話したエリーゼは本当に愛おしかった。
陛下もこの雰囲気をどうやって収拾するのか頭を悩ませている時だった――
「報告、報告致します!」
兵士がホールの入り口で跪いた。
「オーズウォル辺境伯領西の沖合より敵船団がこちらに向かっております。確認できているだけで大小合わせて千隻とのことです!」
兵士の言葉にホールに集まった人々が大混乱に陥った。
叫び喚く貴族や乱入した兵を罵倒する物まで含まれている。
西側諸国だ。あれからもずっとネチネチと嫌がらせを受けていたので、この式にも呼ばなかったのだ。
僕の結婚式の日に攻めてくるとはな。
どれだけ僕とエリーゼがこの日を待ち望んでいたと思っているのだ。
流石にこれは黙っていられない。
ぶち壊してくれた恨みは晴らさせてもらおう。
「静まれ!」
陛下が声を張ると、騒がしかったホールがしんと静まり返った。
「陛下!」
その場で跪くと、ウェディングドレス姿のエリーゼも同じように跪いた。
「私の式の日に攻めてきたその羽虫ども、一匹残らず蹴散らして見せましょう!」
(ちょっと行って追い払ってきます)
「良かろう、静かにさせてくるがよい」
(追い払うだけだぞ?)
視線で意思の疎通を行い、許可が出たのでその場を去ろうとすると――
「よっしゃダダンよ、アレの出番じゃな!」
「え、アレ……の出番かな?」
普通に船で行こうかと思っていたのだが……まぁアレでもいいか。
どうせいつかは披露するのだ。
みんなが集まっているこの時が丁度いいのかもしれない。
「持ってきておるのじゃ」
「なんでやねん!」
「いやなに、披露宴の余興にでもと思っていたのじゃ」
余興のスケールがデカ過ぎると思う。
ディラ様からロボの話を聞いた数日後、実際に見に行って、触ってみて、遊んでみて、遊び過ぎてギルド長のダリムさんに怒られて……。
せっかく人数分の機体があるのだからということで、結局みんなで遊びたおしたのだ。
操縦に慣れてからは、鉱山最下層の空間で戦い合ったりもしていた。
火器は一切積んでいないただの張りぼてなのは、僕達しか知らないことだ。
ディラ様が王宮のだだっ広い庭に、収納袋から機体を取り出し披露する。
五機のド派手な機体が立ち並んでいるのだが、花壇などは破壊されているので、庭師の方々には後で謝罪が必要だ。
「勿論私も参りますわ」
ウェディングドレスの裾をたくし上げたエリーゼが、金色に輝くド派手な機体に乗り込むと、テトナ様や数人の侍女が気を失って倒れ込んだ。
ララーさんやカノンさんもピッカピカのメタリックカラーの機体に乗り込んだ。
勿論ドレス姿のままだ。
ディラ様も三倍強そうな真っ赤な機体に乗り込み、真っ先に動かし始めると、周囲では更に気絶者が増えていた。
「……おいダダン。お前ホントふざけんなよ。いい加減にしろよ!」
「口調が戻ってますよおじさん」
「これ以上仕事を増やすつもりか!」
「そんなの西側諸国に言ってください。では僕も行きますので」
降ろされた掌に乗るとコックピットまで案内され、慣れた感覚で乗り込む。
僕の機体は真っ白のボディーに大きな赤い半円が一つという、日の丸カラーに塗装されている。
僕ならではのカラーリングだ。
船上からこの五つの機体を眺めて、それでも戦意が残っているというなら西側諸国の兵士を褒めてあげたい。
「いくぞみんな」
「「「「おー!」」」」
王宮の庭園から、無音無振動で上空に飛び立つ。
目指すのはオーズウォル辺境伯領だ。
さっさと問題を片付けてみんなでカルステッド鉱山に帰ろう。
「僕は採掘に専念したいんだよ!!」
おしまい。
炭鉱夫ヒャッハー! ~採掘に専念したいのに周囲がほっといてくれないんです~
いかがでしたでしょうか。
勿論賛否両論あると思いますが、ここを読んでいただけるということは最後までお付き合いいただけたことと思います。
最初に一気に完結まで書き上げて、ブラッシュアップしながらの投稿、という形を取らさせていただきました。書き終わっているならさっさと投稿しろ、という意見もあるかと思いますが、何度読み返しても何故か誤字脱字がすり抜けてしまいます。そして日を変えて読み返すと、またおかしな部分が見つかって書き直して――を延々と繰り返しておりました。
この作品で大切にしたかったのは、勢いです。タイトル通りヒャッハーな感じで最後まで書き通すことを目標にしておりました。
そして長々と書き続けることだけは避けようと思い、二十万字程度でひとまず完結させることを目標にして書きました。
そして如何に短い文章で伝えるか、ということも意識して書いておりました。その為表現が少な過ぎて情景が思い描けないという場面があったかもしれませんが、そこは私の実力不足だと思い、これから精進していきたいと思います。
設定上『こんなことはあり得んだろ』と思う箇所も多々あったと思いますが、無茶苦茶なことが、理不尽なことが最後まで起こり続けるというあらすじにしたかったので、今回のような作品になりました。
私自身もやり過ぎかもと思う場面もありました。ただし今回の作品ではタイトルやタグ、あらすじを読めば、これくらいなら予想できる範疇かなと思い、そのまま突き進んだ感じはあります。
突然書きたくなったので書いた、というのもありますが、自分が読みたい作品を心掛けて書きましたので、自己満足感の強い作品でもあると思います。
それでもここまでお付き合いしていただけたのなら、私としましても書いた甲斐があったと思います。
ありがとうございました。またお時間が許されるなら次回作も読んでいただければ幸いです。
少しでも評価していただけるのであれば、ポイントの方をポチポチしていただけると次回作の意欲にも繋がりますのでよろしくお願いいたします。
そして最後に、誤字脱字を指摘してくださった皆様、本当にありがとうございました。
山田の中の人




