第二十二話
いつも誤字脱字報告ありがとうございます。
本当に助かってます。
封筒の中には日本語の手紙が入っていた。
差出人は過去にこの世界へやってきた日本人。
魔族は見た目とは裏腹に優しく温和な種族。
友好的な関係を築いたので優しく接してほしい、という内容だった。
僕と同じ時代を生きた日本人だったようだが、転生だか転移だかでこの世界にきた時代が違ったのだろう。
そしてスキルは過去の日本人が作ったものらしい。
スキルボードそのものに認識阻害の魔術が組み込まれていて、スキルボードをフリックするという考えが浮かばないようにされていると書かれていた。
またいつか自分のように送られてくる日本人が居るかもしれないので、その人物にはスキルボードの認識阻害が働かないように設定してあるらしい。
こんな簡単なこと、何故誰も気付かないのかと思ったがそういうことかと納得した。
戦闘系のスキルはもしもの時の為、地上に出現した魔物が討伐できるように、最低限の能力だけを作ってあるのだとか。
スキルは遺伝で引き継がれる場合もあるが、殆どが遺伝されないらしい。
ただしスキルを得ていた者の子孫に、再びスキルが発現する場合はあるかも、と曖昧な表現がされていた。
しっかりしてくれよとも思うが、将来的に強力になり過ぎないように調整するのが難しかったそうだ。
そしてその後の日本人の話は書かれておらず、何処か違う世界へと旅立つのでこの世界と彼等魔族を宜しく、と締め括られている。
……この日本人と勇者の話。カロイ村で読んだ御伽噺じゃないか。
まさか二冊とも実話だったとは驚きだ。
ギルド長室の転移魔法陣のスクロールへと戻ったのだが、僕達の帰還に気付いたダリムさんが逃げるように部屋から出て行った。
「ララーさん、カノンさん、確保をお願いします」
「「了解」」
廊下を出てすぐのところで捕まったようだ。
「嫌だ! もうこれ以上問題を抱えたくないんだ!」
「まだ何も言っていませんよ?」
「表情ですぐに分かったよ。また厄介事を持ち帰ったんだろ!」
この人はエスパーか何かなのか?
でも僕はそんなに悪い顔してたのか、反省しよう。
「今回の問題は勝手に決めることができません。どうしてもアルフィネア公爵様とすぐに連絡を取ってください」
「仕事が山のように残っているのだが――」
「大至急でお願いします」
「……はい」
諦めた様子のダリムさんが、赤い魔石を使用して緊急連絡を行っている。
「……じゃあちょっと行ってくるよ」
ダリムさんがクローゼットから着替えを取り出し、公爵家に向かう準備を始めた。
そうか、普通に考えたらアルフィネア様を呼び出すのでなく、こちらから伺うのが当たり前だった。
いつも向こうからきてくれていたので勘違いしていた。
超お偉いさんを毎回呼び出していたのだ。
お前は何様だと怒られても仕方がない行動だった。
ダリムさんの小言を聞きながら着替えを眺めていると、ネネットさんがギルド長室へやってきた。
「ダリムギルド長、ギルドの魔法陣にアルフィネア公爵様がいらっしゃいました」
「大変だ、みんなでお出迎えに向かわないと!」
全員で部屋を飛び出すとアルフィネア様がギルド長室のすぐ傍まで歩いてやってきていた。
……アルフィネア様の背後に、小柄でドレス姿の影がちらついておりますが。
まだ二日しか経っておりませんが、早過ぎやしませんかね?
アルフィネア様の表情も申し訳なさそうにしているが、お嬢様の頼みを断れなかったのだろう。
「待ちきれなくてきてしまいましたわ、ダダン様」
「ご機嫌麗しゅうございます、エリーゼお嬢様。何もない場所ですが、精一杯おもてなしさせていただきます」
あいさつ程度で会話を終え、アルフィネア様に大事な話があるからVIPルームで待っていてほしいとお願いした。
カノンさんとララーさんにVIPルームへと案内してもらい、申し訳ないけどそのままVIPルームで時間を潰していてくださいとお願いした。
「すぐに向かいますから」
「お待ちしております」
エリーゼお嬢様と別れて僕とダリムさん、アルフィネア様とネネットさんの四人でギルド長室へ戻った。
ネネットさんがお茶を用意し終えたところで、本題に入った。
「まず、今回の問題はドラゴンの涙とかエリクサーとか、そういう次元を越えた話になります」
ダリムさんの顔は既に土色だ。
「もしかすると内容が内容なだけに、昨日のおじさんも呼び出した方が良いかもしれません」
「それ程の案件か。良いじゃろう、話してくれんか」
地下での出来事を全て話した。
僕や過去の勇者が日本人だという件以外は。
「ワッハッハー!」
話し終えたらアルフィネア様が大笑いし始めた。
自分の膝をバシバシと叩き、何かがツボにはまってしまったのだろう。
「こりゃ参ったわい。お手挙げじゃ」
アルフィネア様はすぐにおじさんを呼び出した。
間もなく呼び出されたおじさんは、忙しいのに呼び出すなと怒っている。
昨日も昼間から遊んでいるからじゃないですかと揶揄ったら拳骨をもらってしまった。
地下での話をすると、すぐに交易品のリストアップを始めるという。
アルフィネア様がお茶を飲みながらゆっくりと話し始めた。
「それでダダン君から見て、魔族はどんな感じだったのじゃ?」
「そうですね、容姿が僕達とは違いますので、第一印象は凄く怖い方達ですが、話し始めると凄く良い印象を受けました。温和な方達で争いを望んでいない様子でした」
「ほほう、なるほど」
「ただし実際に争いになると、かなりの高確率で人類は敗北します」
「……言い切るのか。何か具体的な理由があるのじゃな?」
「はい。現状では魔石関係の技術で圧倒的に劣っています。戦いにすらならないでしょう」
「それ程までか……」
「間違いないと断言できます」
話している内容は事実だ。
たとえそこに僕自身が戦いたくないからという理由が乗っかっているとしても、だ。
「彼ら魔族の方が望んでいたのは道具や嗜好品などが多く、手先の器用さや創作物の面では人類の方が勝っていると感じました」
「ワシら人類側から提供できる物も多いということじゃな」
「そうです。次回はお互いが喜びあえる物を持ち寄ろう、ということで話を纏めてきました。魔族の方が欲している物は先程話した通りです。契約魔術の使用も快諾いただいてますので後の準備はお願いします」
「……準備がええのぅ」
次回の交易はひと月後で、ギルド以外でも取り出せる収納袋を作ってほしいとお願いした。
そして現場で入れ替える必要があるかもしれないので、魔族の方が持ってきた交易品を入れる収納袋も用意しておいた方がいいと説明した。
それと次回の会合で交易以外の何かを望むのなら、何を伝えてほしいのか大人達で話し合って決めておいてと伝えた。
例えば交易する人物を別で立てたいだとか、魔族のお偉いさんと話がしたいとか、今後の予定などだ。
転移魔法陣のスクロールを設置してあるので、僕以外でも交渉は可能だが、次回は僕達三人で行くと伝えてある。
暫くは信用されている僕達が行った方が良いと思うと伝えた。
「……ダダンよ。其方は今回の功績を他の者に譲るつもりなのか?」
「僕は子供で政治のことはわかりません。僕が一人でやった方が良いと言うならやりますし、僕が一人でやると貴族の方々の反発が大きいと言うならアルフィネア公爵様に丸投げします」
「そんなことをされたら、ワシはまた返せぬ恩を受けてしまう。勘弁してくれんか」
「お前が自分でやれ」
おじさんにはっきりと言われてしまった。
「僕は採掘が忙しくて――」
「両方やれ。こんなこと、他にできる奴が思い浮かばねー!」
なんだかおじさんもヤケクソになっているのではないだろうか。
おじさんと話していて、そうだそうだと思い出したことがあった。
机の上に魔石を三つ転がした。
「……これは何だ?」
「魔族の方から頂いた魔術を無効化する魔石だそうです。良かったら護身用にどうぞ」
今回の話が出鱈目でないことを証明する必要があったのを忘れていた。
「そんな魔石の存在は聞いたことがないぞ……」
アルフィネア様とおじさんが机の上の魔石を見て唸っている。
「よし」
おじさんは何かを決めたようすで僕の方を見ている。
「今回の件でダダン、お前を騎士爵にする。土地を持たない一代限りの名誉貴族だ。そしてサザーランド公爵領のもとで魔族領交易大使に任命する」
「えー」
「それに加えて現在空いているギルドの副所長も兼任しろ、今後彼一人では持たないから手伝ってやれ」
指差されたダリムさんがおじさんに感謝している。
「そしてエリーゼとの婚約も命令だ。公爵令嬢と騎士爵では釣り合わないと文句を言う貴族も出てくるだろうが、一度婚約を解消されてしまったエリーゼなら話が通る」
「お、おじさんにそんな権限はないでしょう?」
「ほほぅ、言ったな? では今月中に王都に召喚するから逃げるなよ」
「ぐぅ……」
釘を刺されてしまった。万事休す。諦めるしかなさそうだ。
「ダダン君よ、其方が採掘を続けられて、他の権力者から其方を守り、更に注目を受けるこの鉱山を守る方法は他にはないじゃろう?」
そうだよ。他に方法がないんだよ、くそー。
「しかもじゃ、エリーゼはどうやら其方にお熱のようだしのぅ」
「モテる男はつらいなぁー」
おじさんが揶揄ってくる。仕事も大量に押し付けられたし、いつか絶対に仕返ししてやる。
「それともなんじゃ、ウチのエリーゼでは不満かのぅ?」
「いえ、全然そんなことは――はい。喜んで」
アルフィネア様に止めを刺された。
まさか七歳で雁字搦めにされるとは思わなかったが、もう仕方がないと受け入れるしかない。
「ただ、今月中に召喚と言われましても、僕はただのマイナーですので着て行く服がありませんよ?」
「心配せんでええ。前回食事の時に作ったサイズで既に製作しておる。無駄になることはないと思っておったから、礼服一式を用意しておったわい」
流石アルフィネア様、準備が宜しいことで……。
おじさんが帰る準備を始めたので、またお菓子が欲しいとおねだりしたら、転移魔石を沢山やっただろう、自分で取りにこいと怒られてしまった。
アルフィネア様と一緒にVIPルームへと戻った。
エリーゼお嬢様とカノンさんとララーさんの三人は、すっかりと打ち解けていて、女子会に花を咲かせていた。
どうやら食事の時には話せなかった、カノンさんとララーさんを回復させた経緯や状況を聞いたらしい。
エリーゼお嬢様からご立派ですと尊敬のまなざしを受けている。
「エリーゼよ、正式に決まったぞ」
アルフィネア様がそれだけ言うと、エリーゼお嬢様は華が咲いたような笑顔を浮かべた。
婚約路線は本人の承認済みだったらしい。
「大変嬉しく存じます」
「うわー! ダダンに先を越された!」
エリーゼお嬢様は喜び、ララーさんは頭を抱えている。
「なんじゃ? ララー殿は婿を探しとるのか? そういう話なら、寄子貴族の三男四男じゃと選びたい放題紹介できるぞい?」
「ホ、ホントですか?」
「勿論じゃ。仕事のできる者を紹介するから、今後ともダダン君を支えてやってほしい」
「はい! 喜んで!」
ララーさんはやったーと喜んでお礼を言っている。
僕達の利益を外に出さない為に、アルフィネア様が囲い込んだとは理解していないのだろう。
本人が喜んでいるのだから良いか。
カノンさんはアルフィネア様の紹介を遠慮した。
使用人として生涯僕を支えると自分に誓いを立てているそうで、結婚する気はないと熱弁している。
「おじい様、何とかなりませんの?」
エリーゼお嬢様もカノンさんの生い立ちを聞いているので、気持ちが理解できるのだろう。
「ではこういうのはどうじゃろうか。エリーゼと結婚したのち、将来的にカノン殿を妾として迎え入れるのはどうじゃ?」
「そんな、私のような者がダダン様のお妾などと、恐れ多いです!」
「そんなことはございませんわ。これまでダダン様をお支えされていたのですもの。これからは私と共にダダン様をお支え致しましょう!」
「……宜しいのでしょうか? 私などが――」
「あー、うん。良いと思うよ。これからもよろしくね、カノンさん」
使用人として一生独身とか宣言されたら、気まずいじゃないか。
カノンさんにはお世話になっているし、超優秀だし。
立場上正妻にはしてあげられないけど、カノンさんが納得してくれるならそれで良いと思う。
エリーゼお嬢様と結婚した後、すぐにカノンさんを娶るわけではないので、カノンさんの気が変わることもあるかもしれない。
その時はその時でまた考えればいいと思う。
前世では結婚できなかったので、前世の分と合わせて二回で数が合うと考える僕は、ちょっと自棄になっているのかもしれない。
「ありがとうございます。まさかダダン様に娶っていただけるとは思っておりませんでした……」
カノンさんが喜んでくれているので良かった。
「でもダダン様が成長なさる頃には、私は適齢期を過ぎておりすますよ?」
「特に気にしませんけど、カノンさんが気にするならドラゴンの涙を飲めばいいですよ」
あっさりと言ったらアルフィネア様に微妙な顔をされてしまった。
エリーゼお嬢様と婚約中は、カノンさんとララーさんとは別の住まいで生活するようにと言われた。
流石に公爵令嬢と婚約中に、年頃の娘二人と同居というのは対外的に良くないらしい。
婚約発表以降は別で住むように説明された。
「アルフィネア様にお願いがあります。防犯面で安全な住まいをカルステッド鉱山に用意していただけませんか?」
「そうじゃのぅ。VIPルームに住んどるのもそれが理由じゃと聞いておる。わかった、手配しよう」
「ありがとうございます」
「出来上がるまでは時間が掛かる。それまでは副所長室で寝泊りしたらええ」
職場で寝泊まり……まさかのブラック企業時代に逆戻りするとは。
シャワー室とベッドはあるので、生活できないことはない。
ただし仕事と生活が密接になることは間違いない。
僕の住まいと同時にエリーゼお嬢様の住まいも建てるらしい。
アルフィネア様はララーさんの結婚が決まれば、ララーさんの住まいも提供してくれると約束してくれた。
ララーさんは大喜びである。
アルフィネア様はダリムさんと話があるそうで、ギルド長室へ戻っていった。
「ここカルステッド鉱山は、私の将来の職場でもあります。今から現場を体験させていただきたく存じます」
キレイな青い瞳をウルウルさせてお願いされてしまった。
困ったお転婆お嬢様だ。
「エリーゼお嬢様を連れて行きたいのはやまやまなのですが、お嬢様のドレス姿では鉱山に入れませんよ」
「た、確かにそうですわ」
「ですので、今日は町に行って視察を行い、僕達と同じ装備品を作りに行きましょう」
「はい! 嬉しゅうございます!」
ギルドから歩いて麓の町を目指した。
「私、ずっと寝たきりでしたので、町を歩くのなんて凄く久し振りですわ」
「そうですか。もっと見ごたえのある町なら良かったのですが、ここはまだ何もない町ですから」
「こういう町は初めてでとても新鮮です。私、ワクワクいたします」
公爵家のお嬢様だもんな。
こんな何もない古びた町なんて見たこともないだろう。
エリーゼお嬢様は大層目立ってらっしゃる。
歩いている人達が勝手に避けてくれるくらいには目立っている。
僕達が三人で警護しているので、安全面でぬかりはない。
そんな状況でモルツさんのお店に顔を出したら、モルツさんが腰を抜かした。
「心臓に悪いから、次から事前に連絡してくれるかな……?」
「ごめんなさい」
公爵令嬢が突然店にやってきたら、そりゃ怒りもするか。
モルツさんは幾つかのサイズを予め製作してくれていたが、流石に公爵令嬢に既製品を渡すわけにもいかないそうで、一から気合を入れて製作するようだ。
緊張しながら採寸していたらしいのだが、僕は店から追い出されている。
見てはいけないらしい。
「私もカノンさんやララーさんのように、この町に合った動きやすい服装に着替えとうございます」
「それ、後でアルフィネア様に怒られませんか?」
「戻る前に着替え直せば大丈夫ですわ」
全然大丈夫そうじゃないのだが。
なるほど。お嬢様はかなりのお転婆さんなのだな。
僕としては、お人形さんのようにお澄ましされているよりも、こちらの方が親しみが持てて良いと思う。
仕方がない、怒られるときは一緒に怒られてあげよう。
そのまま雑貨店に向かったら、雑貨屋の店主もたまげていた。
店の外で待っていると、カノンさん達に着替えさせられたエリーゼお嬢様が戻ってきた。
「ドレス姿のエリーゼお嬢様しか見ていませんから、普段着のお姿は新鮮ですね。とても可愛らしいですよ」
素直に褒めるととても喜んでくれた。
気品すらある容姿が目立ち過ぎてアンバランスな面もあるのだが、それは仕方がないだろう。
「お仕事の作業服姿のダダン様もとても凛々しくて素敵ですわ。ダダン様は色々なお顔をお持ちですので、こうしてお話ししているだけでなんだか胸がドキドキいたします」
エリーゼお嬢様もお返しとばかりに僕を褒めてくれているのだが、恥ずかしかったのだろう。
白い肌がどんどん赤く染まっていく。
あんまり見ないでくださいまし、とカノンさんの背後に隠れられてしまった。
更に歩いて到着したのは酒場。
お嬢様を連れて酒場ってどうなの? と思うが、ここしか外食できるお店がないので仕方がない。
最近やっと商店の建築ラッシュが始まり、路肩で商売を始める人が出てきたところだ。
それでもエリーゼお嬢様は、物語で聞いていた通りの場所だと酒場でも喜んでくれている。
周囲で宴会が始まり、ララーさんが本領発揮で残念な姿を披露していると、僕とカノンさんだけが気付いた。
ポケットに忍ばせてあった敵意を知らせる魔石が、ブルブルと震えている。
次第に振動が激しくなっていて、陽気に近付いてくる男に警戒する。
カノンさんには、男が行動に出るまで待機しているように、と視線だけで合図を送ると小さく頷いてくれた。
「……あっれー、お酒がなくなっちゃった」
ジョッキを片手に近付いていた男は、白々しく空になったジョッキを逆さ向けてアピールした後、踵を返してカウンターに戻って行った。
男がカウンター側に振り返った瞬間に魔石の振動が止まったので、敵意を失ったのだろうか。
僕達のちょっとした変化に気付いたのだとしたら、相当な手練れだと思われる。
そっとスキル鑑定士で男のスキルを覗くと『しのびあし』というスキル持ちだった。
スキルに加えて、特殊な訓練を受けているようすだが、まぁあのくらいなら大丈夫だろう。
「どうなされますか、取り押さえますか?」
「……彼はお酒がなくなってカウンターに戻っただけです。せっかくの楽しい時間。エリーゼお嬢様も居るし揉めごとは避けましょう」
「美人のアタシを差し置いて、先に婚約するなんて――」
「いかがなさいましたのララーさん! お気を確かに――」
ララーさんのグダグダに付き合わされているエリーゼお嬢様を不憫に思い、今日はここで戻ることにした。
「数日前まででは考えられない、素敵な時間を過ごさせていただきました」
VIPルームで着替えを済ませたエリーゼお嬢様が丁寧に挨拶してくれた。
置いてけぼりをくらったアルフィネア様は不満そうにしていたが、エリーゼお嬢様が満足そうにしているので渋々納得していた。
また近いうちにくると言い残して、アルフィネア様達は転移魔石で戻って行った。




