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第十六・五話

ダダン達がギルドに戻って来るまでのお話。



――アルフィネア・サザーランド公爵視点――


 ギルド長のダリムからダダン少年の報告書を受け取る。


 「……しかしこれはのぅ。どうしたものか――」


 貧しい農民の子で七歳。

 契約奴隷を僅か二日で解消。

 約半月の活動でぶっちぎりのエースになる。

 一人でデスマンティスの群れや岩石魔人を数体討伐。

 龍の背中を採掘可能。

 詳細は不明だが、魔石や鉱石の位置を把握できる。

 エリクサーを入手可能。


 「私の方でもどう扱って良いか困っております。報告書にある通り、強硬手段に出たとしても――」

 「手に負えん……ということじゃな。この前に会った時はしっかりと確認はできなかったが、お主から見てダダン少年の人間性はどう見えておる?」

 「ダダン君の人間性に問題があるとは思えません。エリクサーの件でもカノン君を治したり、アルフィネア公爵様にお譲りしたり、それでいて裏があるような態度を取ることもありません。そして普段の会話でも人柄の良さが出ております」

 「むぅ……ワシが思ったそのまま、ということか」

 「はい。それに現在ではマイナーとしての活動に生きがいを感じているようにも見えます。これは今まで農民として日々の食料にも不安だった生活から抜け出せたからだと思われます」


 ……本当にそれだけなのか?

 

 「話した時に思ったのじゃが……孫と会話しとるより、遥かに知性と教養を感じたぞ?」

 「私も同じです。普段の会話では少し教養があるという程度しか感じませんが、ふと疲れた時などに会話をしていると、長年共に肩を並べる同僚と話をしている感覚に陥ります」

 「ハハハ! オッサン臭いというのじゃな? 七歳の少年が!」

 「いえ、そういうわけでは――」


 カロイ村に記録が残っておるので、ダダン少年が七歳なのは間違いない。

 村を調べさせた時に村人からの証言も聞いておるが、字を覚えるのは早かったが普通の子だったという。


 「彼は優秀です。私を助けようと行動してくれていると感じる時もあります。彼はあんな性格ですので秘密を聞けば、あっさりと教えてくれるかもしれません」

 「では聞くか?」

 「……正直私自身ずっと迷っております」

 「教えてもらえん場合、か……」


 マイナーとして優秀で、戦力としても高ランク冒険者と同等、或いはそれ以上。

 しかも報告では毎日の買い取り価格表を記録していて、上昇傾向にある鉱石を選んで採掘しておるらしい。

 エリクサーを入手できて、その価値を理解した上でほぼ無償提供という形で譲れる人間性の持ち主。

 そんな人物がギルドを離れてしまう可能性がある、ということが気掛かりなのじゃろう。

 さてどうしたものかいのぅ。

 孫の命の恩人じゃ、無下に扱う事はしたくはない。

 将来有望で優秀な人材なら確保しておきたいが、無理強いもしたくない。

 しかし、じゃ―― 

  

 「陛下にはエリクサーの存在を報告した」

 「やはりそうなりましたか」


 陛下に隠し立てする訳にもいかず、孫にエリクサーを使用したと正直に話すしかなかったのじゃ。

 そこでエリクサーはもうないのかと聞かれて、わからないと答えるしかなかった。

 本当に分からなかったのじゃが、ないと答えて次にエリクサーが出てきてしまっては、言い訳ができないと考えたのじゃ。


 二本目が出てきたのじゃ。三本目がないとは言えんじゃろう。


 陛下もまだ入手できる可能性があるのかと口にはしなかったが、ワシの態度で感付いた事じゃろう。

 その場に居たのは宰相だけじゃったが、人の口に戸は立てられぬ。

 王宮の人間や商人達の伝手で話が国外に広まってしまった可能性もある。

 王家や我が公爵家で匿えるのならまだいいが、今のままじゃと貴族達が権力をかざして強制的に搾取する可能性も、引き抜かれる可能性も否定できぬ。

 他国の王族の者がエリクサー発見の功績で、ダダン少年に貴族の身分を与えて、エリクサーを定期的に入手させるようにするかもしれぬ。


 更には周辺国や国外の貴族や皇族、サッテール教会の教皇に知られれば、この国に攻め入る可能性も否定出来ぬ。

 現にエリクサーが発見された事のあるダンジョンでは、その所有権を巡って度々争いが起こっておる。

 それ程エリクサーの存在というのは危険じゃ。


 貴族や他国の脅威からダダン少年の身を守る方法は限られる。

 一つはダダン少年が手柄を立てて、身分を手に入れることじゃ。

 武力ではなく政治力で周囲を黙らせられれば、誰に守られるわけでもなく、今の生活を続けられるじゃろう。

 しかし七歳のダダン少年に、これは難しいと言わざるを得ない。

 彼が大人になるまでは、やはり力のある大人が守ってやるしかないじゃろう。


 サザーランド公爵家で養子にすることも勿論考えた。

 しかし養子にしてしまった場合、今度は将来誰を嫁に迎えるのかという問題が浮上する。

 王家には年頃の娘は居らぬ。

 ニーアカルド王国でそれなりの身分、他国からの干渉を抑えられる身分の娘となると、我が孫のエリーゼと婚約させるのが一番良い。

 病気を患った為とはいえ、一度婚約が解消されてしまったエリーゼじゃ。

 今後名家に嫁ぐのは難しいじゃろう。

 それならサザーランド公爵領の為にエリーゼと婚約させて、将来公爵領を継ぐ息子のサポートをさせるのが良いじゃろう。

 もしくはダダン少年には、今まで通りエースとしてカルステッド鉱山で力を発揮してくれればええ。

 そうすれば我が公爵領は更に潤うことじゃろう。


 しかしじゃ。今の平民のダダン少年ではエリーゼとの婚約は認められぬじゃろう。

 陛下からダダンに身分を与えてもらい、その後にエリーゼと婚約させるか、或いは寄子の貴族と養子縁組させてからエリーゼと婚約させるか。


 だが時間を掛け過ぎると他国にダダンを引き抜かれて、エリクサーが他国に優先で流れてしまうかもしれぬ。

 それだけは何としてでも阻止せねばならんのじゃ。


 「この先どうするのかダダン少年に選ばせるにしても、急ぐ必要があるのぅ」

 「私では彼を守り切れませんので、アルフィネア公爵様に御守りして頂くしかありません」

 「むぅ……せめて成人なら幾らでもやりようがあるのじゃが、七歳ではのぅ……」


 七歳で国を揺るがすとは、将来が末恐ろしいわい。


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― 新着の感想 ―
[一言] 一難去ってまた一難、これからも貴族や王族や他国や宗教関係のゴタゴタでダダン君大変そうだな。
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