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事実はラノベよりも奇なり  作者: 蒼月 紗紅
第一章:そんなものただのファンタジーだって
12/33

終幕はハッピーエンド(仮)

(仮)まで含めてタイトルです。

 俺はしどろもどろになりながらもなんとか言葉を繋ぐ。

「え、あ、えっと、久しぶり? だな、祈莉」


「な、本当に、お兄、ちゃん? なの?」

「え、あ、うん、そ、そうだけど、お前も本当に祈莉なのか?」

 いかん。互いに混乱してるからか会話が全く進まない。どうしようか。


 そうこうしてたら伶が会話に加わってきた。ありがとう、助かる。

「久しぶり、祈莉ちゃん」

「あぁ、伶さん! あのときは本当にありがとうございました。えっと……」

「あはは、敬語じゃなくていいよ。昔みたいにさ」

「ふふ、それもそうだね」

 む。なにやらいい雰囲気に見えなくも無いが、余計なことは言わないでおこう。いや、嫉妬なんてしていない。断じてしていないからな。



「ところで、こっちでなんとかやっていけた?」

「あーえっと、それは」

「そうだ、祈莉、なぁ、大丈夫だったか!? ちゃんとご飯食ってるか? 怪我とかしてないか? 変な野郎に襲われたりとかしてないか!?」

 俺は思わず祈莉の肩を持って、揺さぶりながら次々に質問した。いやだって心配だしさ。仕方ないだろう。


「も、もう、私そんな子どもじゃないんだから。いつまでも昔のままだと困る」

 な。あんなに小さくてずっと泣いていた祈莉にそんなことを言われる日が来るとは。嬉しいような寂しいような、なんとも複雑である。



「あー、えっと。感動の再会に水を差すようで悪いんだけどさ。祈莉ちゃん、しばらく仕事、大変になるかも」

「え!? 一体なんでですか東堂さ」

 そこまで言って祈莉は黙ってしまった。改めて店の惨状を見て、なにも言葉が出ないようだった。

「……まぁ、こんな所だからさ。頼むね」

「うう、そんな」



「あ、あの、それなら俺、出来ることだけでも手伝います」

「お兄ちゃん!?」

 どうせ他の日はみんな授業があるだろうから暇なんだし。それに、なにか役に立つのなら手伝いたい。――決して祈莉が働いているところを間近で見たいとかそういう訳ではない。

「卯野原君……それなら助かるよ。ありがとう」



「……あの、えっと、それなら私も、痛っ」

 店の奥から、アンが出てきた。もう立っても平気なんだろうか。


「んにゃ、アン!? 目、覚めたの? 大丈夫? ああでもまだ起きたら駄目だよ、ちゃんと横になってて」

「……元はと言えば、私のせい、だから、やらない、と」

 アンにもアンなりの罪の意識があるのだろう。でも大丈夫なんだろうか。記憶喪失だから責められないとはいえ元を辿ればアンの破壊魔術が事の発端だし。


「アン、いけませんわ。またこのようなことが起こったら貴女どう責任取るおつもりで」

「ああ、それなら大丈夫だよ。身体強化魔術を応用して弱体化させればもう今回のようなことにはならないと思う。それにこれは彼女の意思でやったことじゃないだろうしね。手伝える人は多いほうが助かる」

「そ、そうですの、大智さんがそこまで言われるなら……」


「それじゃ。ちょっと失礼して。<奥底に宿りし力よ・その暴走せし力を鎮めたまえ>……これでいいかな?」

「……ありがとうございます」

 よかった。アンもメンバーに加わるというのなら心強い。




「ああ、そういえば祈莉は今、一体どこで暮らしてるんだ?」

「あ、えっと、それは、えっと」

「なんだよそんなに言えないようなとこなのか?」

「あはは、えっと……怒らないでね?」




「はぁ!? ほとんど野宿、だと!?」

「ちょ、お兄ちゃん声大きいよ鼓膜破れちゃう」

 そんな。まだ十四歳の祈莉が野宿、だと!? ありえん。そんなこと祈莉が許してもお兄ちゃんが許さない。絶対に。


「ちょっと、いくらなんでもそれは危険すぎるんじゃないかな」

「んにゃ、そうだよ。お姉ちゃんの言うとおりだよ。もし襲われたりなんてしたらどうするの?」

 咲織ちゃんと一颯さんも口を揃える。やっぱりそうだろう。


「ああ、そうですわ、もし妹さんが良いと言われるのならうちに住みませんこと? 周也もそこで暮らしている訳ですし、兄妹で一緒なら安心だと思いますわ」

 確かに、それが一番だろう。裏庭に寝かされているのをあまり見られたくはないが、祈莉の危険に比べたらどうってこと無い。


「そうそう、それに僕もそこに住み込んでるからね。もし周也がなにかやらかしても安心でしょ」

 だから何かって何だよ。さすがに祈莉が見ている前でそんなことしねぇよ。


「じゃあお言葉に甘えて……ありがとうございます」





 今日はあまりにも一日が長かったように感じた。祈莉はどうやら空き部屋で寝るようだが俺は相変わらずの裏庭。だけど眠たすぎて秒で眠りに着けそうだ。


「おーい周也、まだ起きてるか?」

「どうした伶。今から寝るところだが」

「ああ、えっとアンさんについてなんだけど……」

「それ今言う必要があることか?」


「いやだってお前、明日から祈莉ちゃんとアンさんと一緒に金剛堂でバイトするんだろ? 僕、明日の朝早いから多分伝えられないしさ」

「いやまあそうだけどさ。で、何だ。早くしてくれ」


「結論から言うとね、経過観察だって」

「へぇ、そうか。なら良かったよ。でも大丈夫だったのか?」

「主人様がね、故意じゃないのならって。まぁこのまま見捨てる訳にはいかないし」

「でもビックリだよな。まさかアンが西部陣営の、しかも機械人間オートマタだなんてよ」

「本当に、見かけだけじゃ分からないからね。……もしかしたら周りに他にもいたりして、なんて」

「おいおいあんまり縁起でもねぇことを言うなよ」

「あはは、そうだね。……呼び止めてすまなかった。おやすみ」

「おう、おやすみ」


 明日から楽しみだなあ。祈莉とアンと一緒にバイト、か。今までバイトしたこと無いけど頑張ろう。――そういえばいつになったら元の世界に帰れるんだろう。まぁいいか、祈莉にも会えたし。また今度考えよう。






 ――某所。

「申し訳ありません。『ノワ』の捕獲に失敗して」

「……まさかあんな邪魔が入るなんて」

 なにやら厳かで、でもどこかひりついた空気が漂う一室で、『ルゥ』と『アズ』が先ほどまでのことを誰かに報告していた。


「いいえ、大丈夫です。あの子については焦らずにいきましょう。まだ機械人間オートマタ達はたくさんいますし、だそうです」

 報告を受けての言葉が、秘書らしき人物を通して伝えられる。暗い空間の中、淡々と読み上げるその姿は少し不気味だった。



「そ、それは、まさか私達は用済みということで」

「そんなこと言ってないじゃないですか。貴方達のことは一番、頼りにしてますよ。総督様も、私も、そして()()()も含めて」

「……! よかった。これからも頑張ります」



「それに、なにやら楽しいことになってきたじゃないですか。『勇者』? だとか。そうだ、『ノワ』のことは一旦置いておいて、泳がせてみましょう、だそうです」



「――記憶を失ったはずのあの子がまた破壊魔術を使うだなんて。こちらにとってあれはとても大事なものだから良かったです」


「……あれ、外に出てこられて大丈夫なんですか?」


「少しくらいなら。――まだ私はこの場所から出られないから、後ろから指示することしか出来ないけれど。さぁ、計画を進めましょうか。この国を私達、西部陣営の掌中に。あぁ、あいつの無様な顔を、泣き顔をこの目で見るのが楽しみです。ふふふ……」


「必ず成し遂げましょう。全てはこの国のために」

「えぇ、私も着いて行きます。この身朽ちるときまで、いつまでも」

「……この世界が間違っているって、僕たちが教えてやるんだ」



「ええ。この世界を、紛れも無い、私達の事実で塗り替えましょう。だってありきたりなハッピーエンドなんて存在しないのだから」

 その人物はふふふ、と笑いながら静かに奥の部屋に戻っていった。その瞳の中はただただ憎悪だけで満ち溢れていた。そのことに気づいた者は誰一人としていなかったが。

これにて一章完結です。とりあえず一区切り。

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