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永遠の命で世界を救えたら。  作者: 渡利慶次
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第45話 結成

 「やっと来たか。いつまで待たせっ………女?!なんだよ!また違うじゃねえか!」


 知らない顔に悪態をつかれながら部屋に入る。

誰だろう。ミラー長官の席に座りテーブルに足を投げ出している。声の主は見るからに柄の悪い男だった。長い黒髪を後ろで結び、耳の至る所にピアスが開いている。

だがそんなことより目に止まったのはその異様なまでに太い右腕だ。

…そう言えば、あの教会から飛空艇で救出された時にデイブが憂憂と話していた気がする。あの時は精神的にそれどころではなく耳に入ってくる声が左から右だったがうっすらとは記憶にあった。

確か【科学技術国家ビケイノック】は倫理観が我々帝国国民とは違うのだと言う。

所謂『神』とかそう言ったものは全く信じておらず『人の叡智の結晶』即ち『科学技術』を崇拝している。

その結果、無駄な人体は削ぎ落とし、機能しているかどうかではなく、より便利に、より効率よくを第一に掲げ、義手や義足に自分の体を取り替えるのが当たり前らしい。

軍の中でも噂程度には聞いていたがこれがそうなのだろうか。ボディースーツの張り付き方が明らかに人体構造としておかしい。やけに角張ってたり平らな面がある。


「あ?なんだジロジロ見やがって。」

「ちょっと、兄貴!あまり敵を増やさないでくださいよ。ただださえ空気悪いんですから。」

「うっせ!」

そう言って柄の悪い男は左手で隣に座る気弱そうな男の頭に拳骨を入れる。

「大体お前がいつもそうやっておどおどしてっから舐められんだろうが。自覚しろ。」

 隣の男にぱっと見で分かる特徴はない。強いて言うなら目が隠れるくらいに切り揃えられた金髪のマッシュルームヘアーだ。相当痛かったのか頭を抱え黙り込んでいる。


「まあまあ。君のその右腕はこの国の人間には珍しすぎるんだ。許してやってくれよ。」


 声の方に視線を向けるといつものメンバーいた。


「あ!やっぱりみんなも呼ばれてたんだ!」

 ドリィとベンが視界に入って安堵したが2人しかいないことに疑問が生まれた。

「あれ?他の子たちは?」

 昨日まで共にあの過酷な訓練を積んだ仲間の姿がないのだ。

「それが長官室に呼び出されたのは私たちだけみたい。」


「おい!まだ話は終わってねえぞ女!」

 状況を整理したいのに…どうやら見た目通り面倒な男らしい。

「ごめんごめん!初めてみたから気になっちゃって。ここにいるってことは君たちもミラー長官に呼ばれたの?」

「チッ。話逸らしやがって。ああ、かれこれもう1時間も待たされてる。遠くから呼び出した癖にどうなってんだ。」


「遠くから…そうなんだ…デイブ、お父さんと連絡つかないの?」

「そうだね。状況から察するにどうやら僕らが最後らしいし、今連絡してみるよ。」

 お父さんという言葉にロバートとラリーは嫌そうな顔をした。

「あ〜。もう一通り自己紹介とかは済んでるのかな?」

 私はドリィとベンの方を見た。

「うん。済ましてあるよ。」

 軽く笑顔を交わし、視線を初対面の2人に戻す。

「じゃあ改めて、私はアナソフィア・ホルムズ・オブライエン。アナでいいよ!で、こっちが彼氏の、」

「初めまして。僕はデイヴィッド・ユーイング・ミラー。デイブで構わないよ。よろしく。」


「ミラー?やっぱ長官と同じ苗字じゃねえか。なんだよ。ボンボンかよ。ったくふざけやがって。さっさと呼び出せ。俺はロバート。こっちはラリーだ。悪いが俺らは元々孤児だから苗字は分からねえ。」


「ロバートとラリーだね。よろしく!」


 孤児…色々と暗い過去がありそうだが触れない方がいいだろう。


「2人は第四支部の人じゃないよね?なんでここにいるの?」


「俺が聞きてえくらいだ。第二支部の所属なんだが急に呼び出されてよ。ここ数ヶ月は政府に好き勝手決められていい加減うんざりしてきたぜ。なぁラリー。」


 ラリーは先ほどの拳骨がまだ痛いのか、頭を撫でながら顔を上げる。

「ホントですよ、自分らは元々ビケイノックの出身なんですが、色々あって帝国の刑務所に入ってたんですよ。それが1年足らずで恩赦だのなんだの言って急に外に出れたと思ったら戦争が始まってて刑務所に戻りたくなければ戦えって言われ…もう散々ですよ。」


「刑務所?」

 皆の警戒心が上がったのがすぐ分かった。勿論ロバートとラリーも気付いてるだろうが顔には出さない。やはりここにいるということはそれなりの手練なのか。


「ああ、思い出したよ!ロバートとラリーって2人組に聞き覚えあると思ったら『親殺しのロバートとラリー』か。」

 皆がデイブの方へ視線を向ける。

「なんだ?そんな有名人になってたのか?」

「ああ。って言っても僕がたまたま覚えてただけかも知れないけどね。」


「ねえ、親殺しっていったい…。」

 ドリィは視線を右往左往しながら口を開いた。


 デイブはロバートとラリーに視線を送る。

「別に構わねえよ、話してやれよ。」


「簡単に説明すると、この2人は元々マフィアで用心棒として雇われてたらしいんだけど何を思ったか急にボス、まぁ親ってのはこのボスのことだね。を、含めて組織ごと壊滅させたんだ。」


「…ってことはいい人たちだったってこと?マフィアを一つ潰したなら社会に貢献してるじゃない。」


「いや、ドリィそれは違うよ。まぁ結果としては社会に貢献はしたけどやはり殺しはダメなんだよ。それを認めてしまったら被害者たちが復讐に走ったりヒーロー気取りの人が続出して下手したら内戦状態になるからね。だから国民に対する見せしめもあるのかもね。」


「なるほど。」


「でもなんで急にそんなことしたの?急に正義にでも目覚めたの?」

 ロバートに視線が集まる。ロバートは目をキョトンとした後、笑い出した。

「正義?そうだな!間違っちゃねえな!なぁラリー。」

 ラリーは苦笑いをした。


「俺らは小さい頃に2人一緒に拉致されこの国に来た。んでこいつと一緒にマフィアに買われて、将来はボスやファミリーを守れるように最強を目指せって言われた。そこからはずっと地獄のような訓練が続いた。

同じような感じで拾われてきた奴が何人もいたが10歳になる頃には俺ら2人しか残らなかった。

ある程度の歳になったら汚い仕事もさせられたし、なんでも言う事聞いてやった。それが当たり前だったからな。だがある日気づいちまった。こいつら偉そうに怒鳴りつけてきたり命令してくるけど俺より弱いじゃねえかって。」



「…それで殺したの?」

 ドリィが質問をしたのを私は無言で見つめる。


「ああ、でも殺すつもりはなかったんだぜ。あの親父、ボケ始めたのかすぐ癇癪出すようになって少し腹たったから頭を軽く小突いてやったんだ。したら首が直角に曲がってやんの。ありゃ驚いたよなラリー。」

 そう言ってロバートは笑う。ラリーはまた苦笑いをした。

「驚いたところじゃありませんよ。僕が咄嗟にシールド張らなきゃ蜂の巣にされてましたよ?」

「そうだな!はははっ!」

「はぁ。まぁそう言う訳でこの人頭おかしいんです。」

「だれがこの人だ。」

 ロバートはまたラリーの額を小突く。


「まぁそう言うわけだが、俺は親父に言われた通り最強を目指してるだけだ。その過程で親父を越えなきゃなのは当たり前だろ?その壁を超えた結果親父が死んだ。きっと親父も本望だろ。」


「お、おう。なるほど。で、ボスを殺した報復で襲ってきた組織の人間をみんな返り討ちにしたと。」

 ベンの顔は少し引き攣っている。


「ま、そゆことだな。いいじゃねえか過去の話なんか。俺らの最強への道を阻まなければお前らに害はねぇし。」

「ら、はいりませんよ。一緒にしないで下さい。もうそんな人類最強だの夢見る歳でもないでしょ。

僕の夢は顔も覚えてませんが、いつか両親に会ってちゃんと家族ってのをしたいだけです。あんな偽物のファミリーなんかではなくね。」

「ああ。それも勿論俺が叶えてやる。安心しろ。」


 ロバートは立ち上がり軽く体を捻り入口へと向かう。ドアを開けて廊下の左右を覗いている。

「に、してもだ。呼び出しといていつまで待たせんだミラー長官とやらは。」


 この2人は出自?それとも環境のせいか?頭がおかしいところが多々あるが不思議とそこまで悪い人間には感じられなかった。いい意味でも悪い意味でも純粋なのかもしれない。


 バタン ガガガガガガ

 なんの音だ?モーター音?皆が辺りをを見回す。

先程までロバートが座っていた椅子が勝手に動き机に仕舞われ、部屋の四方にあったスポットライトが椅子のあった場所を照らす。


 ギ、ギギィ

 床が開き大きな箱が迫り上がってくる。なんだ?一体何が…ふとデイブの顔を見ると額に手を当て苦笑いしていた。その顔を見て理解した。理解したと同時に笑いが込み上げ抑えられなくなってしまった。

私のその様子を見て更に混乱した残りの4人は入口側の隅に移動し武器を構えている。

大きな箱が天井まで達すると再び大きなモーター音と共に扉がゆっくりと開き始める。何処からともなくラッパによるファンファーレが鳴り響く。


ギ、ギギィ、バタン

扉が開き切ると中から誕生日帽を被ったミラー長官が現れクラッカーを鳴らした。

「ジャジャーン!!新チーム結成!!おめでとう!!」

やたらとテンションの高いミラー長官が現れ、対比かの様に申し訳なさそうな顔をしてウォーレン元帥が出てくる。

「父さんこれは……ウォーレン元帥も流石にこれは。」


 ダメだ笑いが止まらない。事の顛末がやっとわかったのか隅で武器を構えていた4人からも笑い声が漏れる。


「いや、ワシは嵌められたんだ。部屋までの近道があると言うから着いとったらやたらと待たされるし。」


「失敬な。近道なのは本当です。ウォーレン元帥殿。ただ、この状況で私の席に座る不届き者が居たせいで稼働できなかったのです。」


 視線がロバートに集まる。

「あ?俺のせいか?いやいやいや。そもそも普通に来いって話だろ。」


「うん。父さんが悪い。そもそもこんなのいつ作ったのさ?」


「先週閃いて作った!」

 そう言ってミラー長官は親指を立てる。ウォーレン元帥は後ろで難しい顔をしていた。


「ミラー。勿論自費だろうな?」

「いえ、緊急避難経路の名目で経費に回してあります。」

 元帥は頭を抱える。

「はぁ…抜かりないな。…分かった。ただし、スポットライトだのの装飾はダメだ。デイビット。君の父は本当にどうにかした方がいいぞ。」


「…後でよく言っておきます。」


「おーい!そろそろ話を進めてくれねえか?新チーム結成ってなんの事だ?」

 ドリィとベンも頷いている。ミラー長官は一つ咳払いすると口を開いた。


「そうだな。ロバート君とラリー君は元帥の推薦でここにいるから訳が分からないだろうが、あとで説明を受けてくれ。」


 ミラー長官は誕生日帽を外し、少し真剣な顔つきになる。


「噂程度に聞いている者もいるかも知れんが改めて。ウィリアム・ジョン・オブライエンを筆頭に精鋭部隊を結成する。作戦内容は基本的に敵地への潜入し、『人類を超越した者』を殺すことにある。ウィル君はその超越者を殺すのに特化した能力を有している。君たちは敵国の超越者にウィル君を接触させればいい。」


「詳しくは分かんねえけど超越者の話は聞いてる。なるほど。俺ら以外は大体の話は知ってた顔だ。」

 ラリーはまだ理解できていないのか目をキョロキョロとさせているがそれ以外は覚悟の決まった顔をしている。

「で、だ。俺とラリーはそのウィル君を知らないし、元々この国の人間でもないから愛国心もない。どう考えても危険なミッションだ。勿論俺らが釈放されてるとは言え帝国に飼われてるだけな事も理解してる。だがそれなりの報酬が欲しい。一体いくらくれる?」


 ロバートの言葉に元帥が笑い出す。

「ははは!いいね。やはり君みたいなのは今の時代貴重だよ。良かろう。準備金として500万ダルク、成功報酬として5000万ダルクだ。どうだい?君の命に釣り合うだけの値段かね?」


 ロバートはニヤリと笑う。

「ああ!十分だよおっさん。」


「ちょっ!元帥におっさんは…」


「構わんともラリー君。では交渉成立だな。出発は一週間後。目的地はノセリアス。目標はゴミ山の女王の撃破だ。解散。」





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