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永遠の命で世界を救えたら。  作者: 渡利慶次
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第30話 残滓

「来たか。」



「止まれ!止まらないと撃つぞ!」

 警備兵の怒号に男はまるで散歩にでもくりだしてるかの様な軽い足取りでこちら向かってくる。


 予想が外れた。バーンズじゃない。誰だ…


「クソッ!もういい!撃てえ!!」


 狭い地下牢の通路に自動小銃の射撃音が鳴り響く。





「クソッなんだこいつ!弾がすり抜けやがる!」


「俺が行く!」

警備兵の1人が男へと駆け出しエモーションシニックを構えラッパ状の銃口から半球状に感情エネルギーを放出する。


 が、男の手のひらが大きな円形の平らな金属に変わり弾かれながら後方へ飛ぶ。



「こいつ見たことない装備を持ってるぞ!気をつけろ!」


 警備兵はそのまま放出を続けながら追いかける。


「感情エネルギーによる攻撃は防げないのか?ハハッ!このまま壁まで押し潰してやブッ!ガハッ」


 警備兵の頭から血が噴き出し倒れる。ここからではよく見えなかったが男の右足が金属に変わっており男の足下と警備兵の下のコンクリートが弾けるのが見えた。

床を経由して警備兵の下から串刺しにしたのか?

身体がまるで液状の金属みたいだ。

…最新鋭の武器とか最早そう言うレベルのものじゃない…あれは…人間なのか?


 

「クソッ!なんなんだこいつは!化け物か!?」

 

「みんな踏ん張れ!救援さえ来れば袋の鼠だ!なんとかここで抑え込むんだ!」


「グハッ!!」

 男の左手が円錐状に伸び警備兵の胸を貫通する。


 また1人倒れた…7人いた警備兵ももうあと5人しかいない。とてもじゃないが前線を離れている警備兵にこんな化け物の相手が…

クソッ!牢屋の中で人が殺されるのをただ見続けることしかできないのか!



 男は弾道を読んでいるのか弾が当たる前に体に穴を開けたりあり得ない方向に体を歪めながらゆっくりと私の牢へと近づく。


「僕はそこのトミー君に用があるだけなんだけドゥボフォ」


 最前列にいた警備兵の放ったエモーションビロウィのレーザーが男の顔を掠める。


「やったぞ!顔を吹き飛ばしてやっ…」


 警備兵の身体が真っ二つに割れた。

一体何が…男の方を見ると左手が剣の様な形をしており縮んでいくところだった。

速すぎて見えなかったが左手を鞭のように伸ばして切ったんだ。


 吹き飛んだはずの男の顔は見る見るうちに再生していく。

「僕は話を遮るやつは嫌いだな。」


「ヒィッ!撃て!撃てぇーーー!!!」


 男はヤレヤレと両手を上げ右手をポケットにしまう。男の身体はもう立ってるのが不思議なほど穴だらけになっている。

だがその足は止まらない。


「い、いけるぞ!撃ちまくれー!!!」


「ダメだ!足を止めるな!下がれ!」

 私は力の限り叫ぶ。


「はぁ……」

 男はわざとらしくため息をつくと右手を居合い切りのように振り抜き………瞬く間に残りの4人も絶命した。



 クソッ!!!クソッ!!!

 ここまでなのか!何か、何か策を考えるんだ!




 ん?なんだ?あいつ何してる。

なぜ殺した警備兵の装備を拾ってるんだ…


「よし!こんなところかな。」


 男はそう言って私の前に警備兵が使っていた装備を放り投げる。

 ヘッドギアにエモーションシニック、そして自動小銃。使えそうなのはこの辺りか、しかし何が狙いだ。なぜ武器を…


「そんなに警戒しなくても大丈夫だよトミー・オブライエン君。さぁ武器を拾いたまえ。」


 やはりバーンズでなくとも目的は俺か。男との距離は……10mといったところか。


「警戒してるのはお前の方なんじゃないのか?私を殺したいなら鉄格子の隙間からさっきみたいに手を伸ばして切り殺せばいいだろ?それともそこからじゃ届かないのか?」


「ははは、君のその人を試す様な発言はそんなに嫌いじゃないよ。僕は親切だから教えてあげる。君の読み通りここからでは届かないね。」


 男は不気味な笑顔を浮かべたままこちらに向かって歩いてくる。


 私を殺すのが目的ではない…いや、遊んでるだけか?


「少し鉄格子から離れててね!」


 男が縦横無尽に右手を振るうと鉄格子が切り刻まれ通路へとつながる。

やはり速すぎて見えない…そして男の距離は約8m。先ほどの発言がブラフでなければ男の間合いは8mから10mの間と言ったところか。

どちらにせよあの男が余裕な態度を示してる間に…


「そんなに警戒しなくても大丈夫だって。武器を拾う隙をついたりしないし、それにそのヘッドギアは改良前の型だから安心して使ってくれ。」


 こいつヘッドギアのことを知ってるのか。関係者…いやバーナードの言う先生とやら本人か?


 ともかく会話を続けて情報を集めよう。

それにどう考えても素手で勝てる相手じゃない。ここは罠だとしても拾うしかないか…


「ヘッドギアのことを知ってると言うことはバーナードの先生とやらなのかな?」


「ははは!もうそこまで知ってるのか!本当に君は面倒事に首を突っ込むのが好きだね!」

 

 ヘッドギアを装着し、エモーションシニックを肩からかけ、自動小銃を手に持つ。

 しかしなんだ?まるで昔から私を知ってる様な言い回しは。私のことを徹底的に調べたのか?そこまでして私を殺す理由があるのか?


「準備は終わったかい?じゃあそろそ」


 私は男が言い切る前に駆け出し自動小銃を乱射しながら一気に男との距離を縮める。


「だから私は」


 男まで5m。行ける!


「話を遮られるのが嫌いだと」

 

 

 あと4m!自動小銃を男の顔めがけて投げつける。

男の視線が少し上方に移る。よし!一気に体勢を低くしスライディングの体勢に入る。


「言ってるだろ!!!」


 自動小銃を男が右手で振り払う。


「ん?どこにいっ…下か!」


「遅い!」

 

 スライディングで床を滑りながら斜め下方向からエモーションシニックを放出する。薄緑色のエネルギー体が半球状に広がり男に触れ、男が斜め上に吹き飛ぶ。

範囲ギリギリの3m、この武器の吹き飛ばす力の最大火力だ。


 男は天井にぶつかる寸前に身体の背部を液状金属に変え衝撃を吸収するがそのまま天井にめり込む。

読み通りだ。こいつは最初から全身液状金属な訳じゃない。意識して変化させてる。つまり不意打ちや意識の外なら生身に当てられる。

しかし、エネルギー体が触れて爛れた皮膚がもう再生を…2…3…

私は思考をフル回転させたまま全力で走る。


 男の下を通過するタイミングで前方に飛び、空中で仰向けになり天井の男にダメ押しでもう一度放出する。攻撃しつつガードにもなる。これが最善だ。

しかし…あの程度の傷だと4秒と言ったところか。


 先ほどよりかなり至近距離だったが流石に2発目は液状金属で盾を作られ弾かれてしまった。



 金属状態では弾かれる。意識の外から生身に当てても再生される。だが無敵なんて事はないはずだ。

無敵ならわざわざ弾を避けたり防いだりなんてしない。

液状金属の部位を破壊するとどうなる?

再び液状金属になるのにラグが発生するのか?

生身の再生能力はどうだ?回数に制限があるのか?

情報が少なすぎて結論まで至らない。



 しかしわざと手を抜いてる様にしか見えない。

何故こんなにすんなりと通過できる。


「ははは!いいねいいね!これで本当に残滓しか残ってないのかな?すごいよ!はははは!」


 残滓?何のことだ。

私は振り向かず全力で上へ続く階段を駆け上がる。


「うんうん!いい判断だ!丁度ここは狭すぎると思ってたんだよ。さあ!いつまで冷静でいられるかな!感情の爆発を見せてくれ!」


 男の笑い声が狭い通路に嫌に反響する。


 スタンスーツがないから反重力システムは使えない。壁や天井に貼り付ける相手に中途半端な広さは不利になる。

どこか大きく開けた場所は…




 大丈夫だ。身体はついてきている。

反重力システムなんてなくても今まで散々この身体一つでやってきたじゃないか。

弱気になるな。やれる。必ずこの男を捕縛して裏で動いてる企みを暴いてやる。

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