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永遠の命で世界を救えたら。  作者: 渡利慶次
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第28話 低い天井


 この牢には私を含め4人いる。だが誰も会話をしようとはしない。この牢に入れられた時に見た3人の顔は酷く暗いものだった。私も人から見ればきっと同じような顔をしてるのだろう。

それもそうだ。みんなどこかしら負傷し、捕虜として連れてこられてるのだから。


 私は空いていた入って右側の2段ベットの上段を与えられ横になっている。

この状況で何もすることがないと言うのは残酷だ。

私は右手を天井へ掲げる。


 流石にそこまで低くはないか……。

手が届きそうで届かない。これまでの人生で掴めたものなどあったのだろうか。

やり場のない後悔の感情が私を支配する。


 私はどこで何を間違えたのだろう。

バレンチアに出稼ぎに来たこと?

それとも妻が死にノセリアスに帰ったことか?

そもそも結婚し子供を授かったことか?

息子と共に前線に出たことか?

いや、戦争は徴兵令で強制的だった…戦争に参加したこと自体はどうしようも……。



 …また言い訳だ。逃げる道もあったはずだ。

どこまでも醜く、ドブネズミの様に怯えながら隠れ続けることもできた。


 だがこうなった最大の原因は…私の足の負傷か…

息子は戦争で酷く怯え、常に警戒していた。なのに大人の余裕という怠慢であの事故が起きた。

まさかあんな前時代的なトラバサミなど設置されてるとは…

 そしてこの様だ。そんな私を見ても息子は逃げなかった。私と最後まで一緒にいると。優しい子だった。無理にでもあの子だけ逃すべきなのを私は…。



 優しい子に育てすぎたのか…いや何を考えているんだ私は…なるようにしてなった。すべては小さな出来事一つ一つの私の判断ミスの積み重ねだ。


 私はどんどん底の見えない暗闇に沈んでいく。

あの時耳を貸していれば。あの時やめておけば。

あの時逃げていれば…あの時手が届けば。


 この先私はどうなるのだろう。


 もし仮に生かされたとしてもこの戦争が終わるまでは解放されないだろう。そして解放された時には帰るべき故郷ノセリアスはきっとこの世に存在しない。


生かされることが私の罪なのか…






… …ドスッ……







遠くの方で微かに何かが倒れる音が聞こえた。


………グッ……ドスッ………


 先ほどより近い…聞こえるか聞こえないかくらいの悲鳴も聞こえた。誰かが助けに来たのか?


 いや、ノセリアスにそのような力はない。それにこんな負傷兵たちを助けてもなんの役にも立たない。


 ノセリアスの最大戦力と言われているゴミ山の女王とやらもノセリアスの地から離れられないと聞く…。

…ならなんだ…口封じか?封じられるような情報を私は持ってないはず…。



「誰だ!!止ま!グワッ!!」


 静かな廊下に断末魔が響き一人分の足音が近づく。

何事かと同じ牢の奴らが音の来る方を覗き込んだ。


「おいおい騒がしいな。なんだって言う…」

 …バタッ…

 最初に鉄格子の隙間から顔を出した男がその場に倒れる。こめかみからは血が噴き出していた。

サイレンサー付きのハンドガンか何かだろう。

それを見た2人は我先にと牢の奥でうずくまり薄い布団で身を隠す。


 牢に入ってる時点で逃げ場などない。薄っぺらな布団一枚で何を守れると言うのだろう。

死の恐怖の前にはこうも人間は愚かになるのか…


 足音と共に全身を黒いローブで覆った男が姿を現した。体型は中肉中背。顔は…整いすぎている。イケメンではない。不細工でも…何の特徴もない顔だ。それこそ記憶に留めておくのが難しいほどに…


「やぁ、初めまして。ここにバーンズ・レイモンと言う男はいるかな?少しお願いがあるのだが。」


 私が目当てか…更に訳がわからないな。


 …ここは素直に名乗り出るべきか…。


「バーンズ・レイモンなら私だが。」


「おお!良かった!牢から顔を出してたのがそうだったらどうしようかと思ったよ。つい勢い余って撃ち殺してしまった。名乗り出てくれてありがとう!」

 そう言って男は嫌な笑みを浮かべながら銃を牢に向ける。


「ま、待ってくれ!」

布団から出て小太りな男が両手を上げて立ち上がる。


「ん?なんだね?」

 男がとても穏やかな声で問いかけ首を傾げる。

この男はやばい。私の本能がそう訴えかける。

その優しい声色からは想像もできないほどの殺気が漂う。まるで空気すら震えているかのような。


「わ、私たちを助けに来た訳じゃないんだよな?」


「ああ、そこのバーンズ君に用があるだけだよ。」


「な、なら俺たちは無関係のはずだ!ここで見たことは全て忘れる!特に俺らを殺す理由はないだろ?」


男は腕を組みわざとらしく悩んでいる素振りをする。


「確かに君の言う通りだね。君たちを殺す理由は特に見当たらない。」


小太りの男はホッとした表情を見せ、上げていた両手を下げる。


「ありが…」


 パスン。


「だが特に生かしておく理由も見つからないな。」



「ヒイィッ!」

小太りの男が倒れ残り1人は更に怯え縮こまる。



 パスン。


 薄っぺらな布団が血で滲んでいく。


「よし!これで邪魔者は消えたね!話をしようかバーンズ君!」


 イカれてる。返答次第では私もここで……


「はははははは!」

 どうしようもないほど笑いが込み上げる。


「あれ?どうしたんだい?」


「はははは!酷く滑稽だと思ってな!はははは!」


 男は不快感を露わにし私を睨みつける。


「いやいやいや!違うとも、君じゃなくて私がだよ!何もかも失って死にたいと願っていたのに、

返答次第では君に殺されてしまうんじゃないか。

などと考えてしまった!はははは!笑えるだろ?死にたいと願いながら本音では生に未だしがみつこうとしている!はははは!」


 男は呆れた顔をしながら銃をしまった。


「ははは。殺しはしないとも。君はだいぶお疲れのようだね。」


「ははは!ありがとう。あなたのおかげで少しスッキリした気がするよ!よし!もう大丈夫だ。」

 そう言って私は負傷した左足を庇いながら右足でゆっくりとベッドから降りる。


「待たせて悪かったな!お願いとやらを聞こうか。」

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