第18話 Mark.06
地下の演習場にたどり着くと入口に向かって列ができていた。ゆっくりと進む列に並ぶ。入口でなにか渡されるみたいだ。人数の割にすぐ僕らの番が来てヘッドギアが各々に渡される。何やら仮想空間に入るのに装着する必要があるとのことだが説明はあまりなかった。順調に流れている列を乱すわけにもいかずそのまま演習場の中に入る。
「わー!すごい!沢山人がいるね!ここにいるみんな同期ってことになるんだね!」
アナはそう言って辺りを見回す。
壁中に配線が通っており天井にはなにやら巨大な機械がある。これが仮想空間のための装置なんだろうか。
「アナ!ウィル!ドリィ!」
いつもの声がする方向に顔を向けるとデイブがこちらに走ってきていた。
「ギリギリだったね、もう説明が始まるみたいだよ。」
部屋の中空にデフォルメされた人の顔のホログラムが浮かび上がる。
「初めまして!私はこの部屋の管理を任されているAIで名前はMark.06と言います。
今回は初回とのことなのでまずオリエンテーションから始めます。
徴兵ということで皆さん緊張されてると思いますが、新技術の紹介及び装備の選択で終わりですので気持ちを楽にしてください。
それではお手元のヘッドギアを装着して下さい。」
皆言われた通りヘッドギアを装着していく。僕も慌てて被る。これであってるんだろうか?これからまた初めての経験をする。仮想空間か、どんな感覚なんだろう。
「…皆さん被りましたね?では後ほどこちらの世界で会いましょう。」
部屋に重低音が響く、頭が痛い…割れそう…だ
次の瞬間視界がブラックアウトし、目を開けるとさっきまでとは違うだだっ広い荒野にいた。
みんな辺りを見回して驚いている。
「皆さん注目!」
その声に皆空を見上げる。そこには3歳くらいの見た目の女の子がいた。多分Mark.06だろう。分かってはいるが何故そんな見た目なんだ?
皆言われた通り宙に浮かぶ幼女を見上げるがみんな頭にクエスチョンマークが浮かんだ顔をしており戸惑っている。
「…あんた誰だ?」
素朴な疑問、そしてなんとなく分かってはいるが誰かに聞いてほしい質問が30代くらいの男性から飛んだ。
「Mark.06ですよ!さっき外で会ったじゃないですか!」
そう言って口を膨らましている。
「いや、そうだとは思ったんだが何故見た目がそんな赤子のようなのかと…」
「単純に私が生まれて3年だからですよ!私はAIですが…見た目の成長くらいは皆さんと合わせて親近感を覚えてもらおうかと…外で会ったみたいなホログラムの見た目じゃ嫌じゃないですか?」
そう言って泣き顔をする。
皆一斉に男性の方を見る。無言の圧力だ。だが痛いほど伝わってくる幼女の見た目も相まって皆の母性が溢れているのだ。「あー泣かせた、早く謝れよ」の視線に耐えかねたのか男性は頭を下げる。
「すまなかった。Mark.06。つまらない事を聞いた。」
「うむ。よかろう!」
Mark.06は腕を組み偉そうな顔をしてる。切り替えが早い。このやりとりに慣れているんだろうか。
自然とみんなの顔が綻ぶ。これを狙ってやってるなら大正解だ。先程までの不安が少し安らいでいる。
僕は小さい声でデイブに話しかける。
「こんな緩い感じで大丈夫なのかな?」
デイブが答える前にMark.06が僕の小さな声を拾った。
「えーーっと、ウィリアム君かな?そこら辺は心配しないで大丈夫!
みんな初めてのことだらけだし最初くらいは明るく行こーよ!明日から少しずつ厳しさを上げてくつもり!1ヶ月後にはみんな立派な兵士になるわ!」
そうかここは仮想空間で言うなればMark.06の世界だ。声の小ささなんて関係ない。僕は発言する時は気を付けようと肝に銘じた。
「ではまずは皆さんに着てもらっている戦闘服の説明からでーす。通称スタンスーツと呼ばれてます!」
そう言ってMark.06は戦闘服の3DCGを自分の隣に出現させる。
「と、その前に皆さんは最近実用化された新しいエネルギー源の話は知ってるかな?」
皆お互いの顔を合わせるが首を振る。デイブは…何か知ってるような顔だ。
Mark.06は戦闘服の横に光り輝く太陽のような物を出す。
「見た目はどう言ったものか表現できないので仮にこれを新しいエネルギー源とします。」
そう言って太陽の周りをMark.06はくるくる回る。
「このエネルギーは通称、感情エネルギーと呼ばれてます。」
感情?想像していたものとかけ離れた言葉が出たため皆困惑した表情を浮かべている。
「頭のヘッドギアがあるでしょ?そこに感情をエネルギーに変換する装置が入ってるの。
私には感情がないからよく分からないけど怒りや喜び、悲しみなんかの感情を抱いてる間エネルギーを供給し続けるらしいわ!ある意味無限のエネルギーね!羨ましい。」
無限のエネルギー?そんなことあり得るのか?
「それによって今まで理論はできてたけど実用化出来なかった技術を今回の戦争から導入できるようになったの!ここまではいいね?じゃあ戦闘服の説明に戻りまーす!!」
太陽のような物が消えスタンスーツが拡大される。
「この戦闘服は対象物と装着者の間にバリアを貼れます。」
スタンスーツの前に六角形の半透明な壁ができる。
「ただこれはエネルギー量と言うよりは技術的な問題で3回までしか攻撃を防げないから気をつけてね!」
ホログラムの半透明な壁が銃で撃たれ三発目に壊れる映像が浮かぶ。
そして4発目が戦闘服に当たるが弾は当たると下に落ちた。
「ただこの戦闘服自体も防弾がしっかりしてるから安心して!でも衝撃を吸収して貫通させないだけだから当たるととてつもなく痛いから注意!」
そう言ってMark.06は顔の横で人差し指を立てている。さっきからあざとい動きが多い。
「あとこの戦闘服の目玉は反重力システムね!経験してもらった方が早いかな?」
そう言われ何かが起こるのかと思ったが何も起きない。
「えっと、基本的なONとOFFは頭の中で操作できるわ!念じてみてから少しジャンプしてみて!」
皆試行錯誤して念じ方が分かった者からジャンプする。
「わー!すごいよお兄ちゃん!」
そう言いながらアナが人2人分ほど飛び上がっていた。
「本当だ!」
僕らはみんな飛び跳ねる。初の経験に心が躍った。なんだかレジャー施設にでも遊びに来た気分だ。
「基本的にこの星の中心に向かってかかってる重力を反転するものだから上下方向にしか作用しないから気をつけてね!
あとは個人個人の感情エネルギーの出力の問題ね、人によって飛距離や速度に差がでるから気をつけてねー!
あと!これから紹介する武器よりは消費エネルギーは少ないけどしっかり消費されるから常にONはしないでね。」
そう言えばさっきから気になっていたが感情エネルギーを消費しすぎるとどうなるんだろう。
「Mark.06さん!」
僕は手を上げ呼びかける。
「なんでしょう、ウィリアム君!」
Mark.06が僕を指刺さす。
「感情エネルギーが枯渇するとどうなるんですか?」
「それがまだよく分からないの!導入されてから日が浅さすぎて!ただその時々に感情が湧いてなくても使えてるみたいだから私の推測としては過去の感情、つまるところ思い出の部分を消費してるんじゃないかな?まだ人体への影響が分かってないから消費しすぎないでね!」
なんだかサラッととんでもない事を言った気がする。
周りのみんなは反重力システムに夢中なようで話半分しか聞いてなさそうだ。
大丈夫なのか?僕は絶対なんらかの反応を示してるであろうデイブを見る。
デイブはとても険しい顔をしていた。
「父から少し話は伺ってたけど分からない事だらけらしい…そんなにこの力に頼らない方が賢明だと思う。」
デイブも僕と同じ意見みたいだ。
「じゃあ次は武器の紹介に入るよ!」




