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永遠の命で世界を救えたら。  作者: 渡利慶次
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第14話 ラウル・ユーイング・ミラー長官


 その日の夕方。僕とアナ、そして父とデイブはこの施設のトップでありデイブの父親でもあるラウル・ユーイング・ミラー長官に呼び出された。


 長官の部屋へ続く長い廊下を歩く。


 ミラー長官と防衛大学時の同級生で、今でも親交のある父の足取りは軽いが僕らの足取りは重かった。だが理由はそれぞれ違う。


 僕はただ単に初めて会う「偉い人」と言うものに対しての畏怖だと思う。

アナは…まぁきっと恋人のお父さんに会う。程度のものだろう。

だがデイブの足取りが重そうな理由は分からない。


「デイブどうしたんだ?顔が暗いぞ?」

 父が笑っている。


「からかわないでください。あの父親ですよ?そりゃ気が重いですよ。」


「ハッハッハッ!そうだな!あれは思春期にはたまらんな。」

 

 デイブはわざとらしくため息をつく。


 何の話だろう。気になったがデイブから湧き出る聞かれたくなさそうな雰囲気を察してやめておいた。



 やがて扉の前に着き、父がノックをする。


「どうぞ、入りたまえ。」


 そう言われ両開きのドアを開ける。左右の壁にはずらっと本棚が並び、真ん中には低めの木製のテーブルと凝った刺繍の入ったソファー。

そして奥の壁は一面ガラス張りになっており、

その前にはこちらに背中を向けた軍の黒い背広を着たスキンヘッドの人が立っている。

葉巻を吹かしながら下の訓練生を眺めてるようだ。

きっとあの人がミラー長官だろう。


 大きな事務机の上には書類が山積みになっており、その横で秘書さんと思われる黒のシャツに黒のロングスカートを履いた綺麗な女性が書類を片付けている。


 ふと先に入ったデイブと父を見ると肩がプルプル震えていた。


「さて、ここに呼び出したのは君たちの進路を……ゲホッ!ゲホゲホ!」


 ミラー長官が盛大にむせた。


 僕とアナは困惑し、秘書さんと父は咳き込むほど笑いデイブは呆れた顔をして苦笑いしていた。


「お父さん。本当に辞めてくれ。葉巻なんて吸えない癖に…それに2日前まで普通に髪の毛があったじゃないか、なんでスキンヘッドに……本当に父さんは…」


「ゲホゲホッ…すまん。ゲホッ…この方が長官らしくて威厳がでるかとゲホッ…思ってな。」


 そう言ってミラー長官はむせながら笑っている。


「私は止めたんです。威厳がないと言われるのはそう言うところだと…」

 秘書さんも呆れた顔をしてため息を着く。


 僕とアナだけ置いてけぼりだ。


「すまない、ウィル、アナ。父はこう言う人間なんだ…」


 その言葉に僕らは苦笑いしかできなかったが、ミラー長官は場を和ませようとしてくれたのだろう。

なるほど。この父あってのデイブと言う事か。



 ミラー長官が葉巻の火を消し。椅子に座るとソファーに座るように勧める。


 僕らは素直に応じソファーに腰掛けた。


「ゴホン」

 ミラー長官は咳払いすると話を続けた。


「では気を取り直して… ここに呼び出したのは君たちの進路を決めるためだ。」

 そう言ってミラー長官は秘書さんに書類を3枚僕らのテーブルに置かせた。


「先程案内があったと思うが、国の一大事という事で我が国も徴兵令が敷かれる事になった。」


 そう言ってデイブを見る。


「デイブには自分の進みたい道をちゃんと決めろと言ったんだがウィル君とアナ君と同じ道を進むと言って聞かなくてね。」

 デイブは一瞬焦った顔をしたが制止を諦め、ため息をついた。


「言わないでくれと言ったんだけどな…」


「ああ、すまんハッハッハッ」


「僕たちは生まれた時から一緒だ。だから僕はどんなことがあっても君たちと一緒に歩むと決めたんだ。」


 そう言ってデイブは笑顔を作る。その言葉に僕とアナは自然と微笑んだ。


「…でだ、大まかな進路は3つだ。まずは直接戦場に向かう攻撃部隊と、物資の搬入やレーダーや盗聴により索敵を行い敵部隊の情報を探る後方支援部隊。

そして各地の怪我人や病人を治療したり逃げ遅れた人を救う救護班だ。

この3つから選んで更に細分化されて行くが、とりあえずはこの3つで班を分け訓練を行い適材適所に回す形になっている。」


「ちなみに君の父は大まかに言うと攻撃部隊だね。」

 そう言われ父は頷く。


「別に今すぐ決めろとは言わないが早めに決めてくれると助かる。」

 ミラー長官はそう言うと僕の背後に周り肩に手を置く。


 握りが強い。無言の圧力を感じる。きっとデイブを安全な後方支援に回したいのだろう。少しの沈黙の後僕は切り出す。


「僕は人を助けたい。」


「うむ!なら救護班か後方支援だな!」


 そう遮られたが僕は続ける。


「だけど人を最も救うのは直接戦場に行ける攻撃部隊だと僕は思います。」


 空気が固まる。


「それは何故だね?」


「僕も話を聞いて最初は救護班かなと思いました。でもそれは既に傷ついてしまった人を癒すものです。僕は現在進行形で傷つこうとしてる人を救いたい。

逃げ遅れた人を探すのも戦闘があらかた終わった後ですよね?

今も戦場には逃げ遅れて必死に身を隠したり怪我をしてて身動きが取れず救援を待ってる人がいます。

なら僕は前線に立ってそういう人を助けながら戦いたい。」


「そうか、でも前線に立つなら君も含めて誰かを傷付けずにはいられない。それでもいいと?」


僕はそう言われて一瞬悩んだが答えは変わらない。


「それでも僕は前線に立ちます。」


 僕はそう言い切るとデイブとアナを見る。2人は呆れた顔をしていたが、頷き笑った。


「はぁ…本当にお兄ちゃんらしい答えね。わかった。お兄ちゃんは泣き虫だから私がついていってあげる。」


「本当にウィルらしい答えだよ。だが言っておく。あくまでアナの安全が第一だ。アナにも危険が及ぶようなら君の意志を無視して無理矢理にでも退避させるからな!」


 2人はこうは言っているが…分かってる。デイブが言う通り僕らはずっと一緒だ。本当に頼りになる。僕は素直に嬉しかった。


「ああ!それで構わないよ!2人ともありがとう!」


 父とミラー長官はため息をつく。


「ったく勝手に決めやがって。母さんに説明する俺の身にもなって欲しいものだ。」


「ああ全くだ。でも1ヶ月は仮想空間を使った訓練がある。そこで経験してからでも遅くはないだろう。」


 こうして三人の進路は決まった。書類に必要事項を書き、秘書さんがチェックする。それも問題なく終わり最後にサインをした。


「では何もなければ退出してくれて構わない。明日からすぐ訓練が始まる。今日はゆっくり休みなさい。」


 僕らは軽くお辞儀をしてソファーから腰を上げる。


「あれ、お父さんは?」


「ああ、私は長官と少し話がある。先に部屋に戻っていてくれ。」


 そう言われ僕らは素直に部屋から出た。何の話をするのだろう。少し気になったが大学時代からの友人で久々の再会だ、積もる話もあるのだろう。


 早速明日から訓練だ。しっかり休もう。


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