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議題:最推しとヒロインの友人になった件について


『ぶっかけチュートリアル』──ファンからそう呼ばれる主人公VS悪役令嬢の一発目のジャブは、名の通りチュートリアルとされる程どのルートにおいても必ず通るイベントだ。

 まず、主人公が平民だが〝悪魔の血〟──土地や人に触れると色々良くない状態を引き起こす血色をした泥を浄化する異能〝イノセンス〟を持ちうる少女であることを紹介される。故に貴族の後見人を持ち、卒業後には爵位を得て宮仕えに準ずる誓約を国と交わしている。その為、貴族子女でなければ通えないブリューフェル学院に特例として平民の身分のまま(ゆくゆくは男爵令嬢であるが)彼女は入学する。いわば下剋上上等のシンデレラストーリーである。

 さて、それが気に入らないのは生粋の青い血を持つ貴人レティーシア・ジーン・ル・ヴェ・リオンだ。そも、彼女は平民を自分と同じ種族であると認めていない。人の形をした家畜──その程度の認識だ。かろうじて自分に仕える者達の人権ならば検討してやっても良い、なんていう暴君まっしぐらな思考に育ってしまった超特級の問題児である。

 オイオイそんなのが未来の王妃で大丈夫なんかい、とヒロインの目線から初見のレティーシアを見たプレイヤーならば誰もが思うところだが、そこはそれ。ぶっちゃけ恋愛が主流のゲームなので階級設定だったり学院のシステムだったりはストーリーのオマケでしかないのだ。冷静に考えれば国が回らなくなるとんでもルール(断罪イベントとはいえ公爵令嬢を公開処刑しちゃったりね!)が潜んでいたとしても、ストーリーの主軸はそこじゃないのでうやむやで流される。ヒロインが抱える『秘密』はまるっと世界を変えるくらいのクソデカスケールを誇っているのだから、ちまちま学院やら国営方法やらまで事細かに設定を詰めている場合じゃないというのが制作側の本音なのだろう。隠しルートをプレイした身としても、それどころじゃねえの感想しか生まれなかった。

 閑話休題。

 これから、いずれ男爵令嬢へと成り上がるとはいえ家畜たる平民と学びの席を共にするという事実に、案の定レティお嬢様はヒステリックを起こした。それも、非公式とはいえほぼ聖女確定の女だ(実のところルートによっては聖女の役割なんてぶん投げるルートもチラホラあるのだが)

 そんなものは、決して認められない。レティーシアだけは認めてはならない。何故ならば────

 そうして、学院の女主人であった彼女は言葉なく教室を彩っていた花と花瓶を取ると、その中身を主人公へとひっかけた。これからよろしくお願いしますと礼儀正しく微笑んで隣の席に座ろうとしただけの儚い美少女を、である。

「失礼、あなたから──嗅いだことはありませんけれど、そうね、きっと肥溜めのにおいがしたのね」とは、レティーシア様の悪女伝説を飾る最初の名台詞である。

 ────それを、兄貴が? ほんとに? デリカシー皆無とはいえ女性に手を上げることはしない(身内の私は別だ)あの兄貴が?



「兄貴……これ、どういうこと……?」



 誰も席を立たず、しかし視線は全てが一点に集中した痛いくらいの沈黙の中、毅然と花瓶を持つ兄──まさに悪女の風格で仁王立ちするレティーシアへと震える声で問う。それに、彼女は赤いルージュを歪ませて答えた。



「──っ俺が、下敷きを持ってなかったばかりに……!!」



 …………………………………………は? したじき?



「ごめんな、シルフィーちゃん! これ、新品だから使ってくれ」


「あっ……そ、そんな! ミスのハンカチをわたしが汚すわけには、」


「だいじょーぶだいじょーぶ、メイドのねーちゃんいわく安物らしいから。あげようと思ってた相手にはまた別の取り寄せるからさ。てことでハンカチの弁償はもうちょい先になるわ、ごめん英理子」


「それは全然いいけどよくないナニコレ」



 目の前の光景が有り得なさすぎて身体機能ごと停止する。ザ・フリーズ。

 水を被った主人公。これはわかる。その前に立ちふさがり明らかに犯人然と花瓶を掲げているレティーシア。これもわかる。──が。

 鞄からラッピングされたハンカチを取り出し(それしか入ってなかったのだろう。どうりで軽いわけだ)自分の凶行を謝るレティーシア──これはわからない。

 加害者からハンカチを受け取ってはにかみながら礼をする主人公──これもわからない。

 事態は終息したとばかりに和やかな空気になる教室────全部わからない!!

 あのレティが水をかけておきながらヒロインに自分の(兄いわく私への弁償らしいので私の……というかシャルロッテのか?)ハンカチを差し出して謝罪するってどういうこと!? どんなシチュエーションよ!?


 カッチンとフリーズ状態から解凍されない私に、ふと笑う声があった。主人公のさらに隣、爽やかに口角を上げて白い歯を惜しげもなく晒しながらこちらを見る〝ロック・ロー・ライト〟だ。勿論、攻略対象。主人公の隣の席であり、レティから嫌がらせを受ける主人公を友人としてフォローする役回りの彼は所謂親友枠というやつで、ぶっかけイベント含めチュートリアルを担う存在だ。

 まず第一に、主人公に一番に接触する攻略キャラクターは彼であるし、以降も学院の説明……率直にいってゲームシステムの説明係を請け負うのも彼だ。攻略キャラクターというよりもアドバイザーの面が強すぎてまずまず彼を一番に攻略しようとするプレイヤーはいない。大抵は看板キャラのロロ殿下だろう。そして、はなからロックルートに入るという心積りで手順通りに選択肢を選ばないと、ロロ殿下ルートを狙ってたのにうっかり逸れてナナ様ルートになっちゃった~! なんて道逸れ事故もロックに限っては起こり得ない。それくらい──親友ロックのルート開拓は難関なのである。

 なんたって、ファンからの渾名──というか、皮肉だったり怒りだったり憐憫だったりを含めて彼を表す言葉は『永遠の友達』だ。ノーマルエンドのスチル名が「最高の友達」な為にそこからなぞらえられた単なる言葉遊びだが、理由はそれだけではない。

 そっと胸に手を当て、想う。────友人関係を超えて恋人となるグッドエンドに辿り着くまで、一体何百何千人のプレイヤーが「最高の友達」スチルを血涙を流しながら目に焼き付けてきただろうか、と。ロックルートが時に最難関と呼ばれる由来はルート選択のシビアさだけではないのだ──────グッドエンドに、まったく入れないのだ。

 まじで入れない。事前情報抜きではほぼほぼ無理ゲー、なんなら攻略情報を見てもミニゲームという壁が立ちはだかってくる。それまでお遊び要素でしかなかったミニゲームにまさかガチになって挑むハメになるなんて思わないでしょ!? ロックグッドの為だけにミニゲームの特訓をしたプレイヤーは私を含め少なくはない。

 そうした、永遠にノーマルエンドの友達から抜け出せないプレイヤーの嘆きと絶望と虚脱の怨嗟も含めて『永遠の友達』と畏れられるのがこの男なのだ。

 ──はい、閑話休題(余計な話は)閑話休題(また今度)! 最推しだからってわかりやすく饒舌になるの、オタクのわるいところだぞ英理子。


 永遠の友達ことロックの目が未だ笑いを含んだまま私を真っ直ぐ見るのに不覚にもドキリとする。くぅっ……顔が良い……最推しの男、オタクの心臓に悪すぎる。第一印象推しはナナ様だったのに、ルート全クリ後にあっさり鞍替えをさせるくらいにはとんでもないシナリオで殴ってくるのがこの男だ。好き。

 その最推しの最高に爽やかな口元が開いて、彼はひとつの単語を落とした。



「はち」



 ────ハチ? 8……鉢…………蜂?



「あ、そーだ! 蜂、もうどっか行った? シルフィーちゃん、首とか刺されてねぇ?」



 レティの口紅と同じく赤々しい爪先がヒロインの淡い金の髪を掻き分け細く透き通った首筋を撫でるのに、ほんわりヒロインが頬を薄紅に染めたのが見えた。なにぶん中身が兄とはいえ見た目には美女と美少女の見目麗しい触れ合いな為に禁断感を覚える。あ、あらぁ……これってキマシ……?

 なおシルフィーとはヒロインの初期ネームだ。シルフィー・ノットネーム。……運営、どうせプレイヤーに名前を変えられるからって、それはテキトーにも程があるネーミングでしょうよ。

 推定、シルフィー・ノットネームとレティーシア・ル・ヴェリオンが見つめ合う謎空間から目を逸らして「はち」の一言を寄越したロックに戸惑いの矛先を変えると(顔が良い……)彼はニッコリ笑って承ったとばかりに十八番の説明係を始めた。



「さっき窓から蜂が入ってきたんだよ。で、そいつがシルフィーの髪の中に紛れちゃってさ。それに気付いたル・ヴェリオン嬢が機転を利かせて水で蜂を追い払おうとしたら、その蜂がル・ヴェリオン嬢の方向に飛んだものだから手元を誤って……てコト」


「下敷きさえ持ってりゃな~。蜂くらい軽く叩き落とせたんだけどな~。文房具すらまともに揃ってねーんだもんよ、このお嬢の鞄」


「ミスにそのような危険な真似をさせるわけにはいきません!」


「この平民の言う通りですわ、レティ様。わざわざレティ様がそのように御手を施しになられる程の者では……」



 ロックにシルフィーにレティ、ついでにベティと。立ち絵やスチルでよく見た面々がわちゃわちゃじゃれ合う様に、ぽっかり開いていた口が次第にアルカイックスマイルを形取る。しょうゆ顔シャルロッテお得意の中身の無い微笑みでそうっと陰にまぎれる。

 そうか。なるほど。レティ関係の嫌がらせイベントはそういうかんじに収まっちゃうわけか。ふぅん。そう。なるほどね……そう……

 自分の心臓の音が、よく聴こえる。

 ────まったく、都合のいいことだ。

 どうあっても兄貴は兄貴だし、悪役(レティーシア)レティーシア( 悪役 )というわけだ。イベントは過不足なく発生し、ストーリーもまた予定通りに加速する。その人は予定調和に救い、ある人は当然と罪を犯す。

 理由と目的は変わろうと手段と結果は変わらない──そのように()()()を取るつもりなのだ、この世界(ゲーム)は!


 ────なんて、ことだ。



「──なぁ、」



 息をも殺すような静寂の最中、グッドエンドを目指して何度も耳にしてきた彼の声が聴こえた。途端、教室内の喧騒が巻き戻る。蜂騒動は終息したものとして、教師が促す通りに教室移動を開始した生徒達の中にレティーシアの凛と立つ背を見つける。彼女がベティと、いつの間にやら合流していたアンを従えながら豪快な金髪を払って振り返る。──『彼』が笑う。



「なにしてんだよ、英理子。置いてくぞ?」


「──、兄ちゃ、」


「やっぱりエリコって、アンタのことなんだ」


「っ!」



 次は私が振り返る番だった。ヒロインの後ろ、まるで聖女を護る高潔な聖騎士が如く佇むロックが不思議な眼差しで私を見ている。彼の朝焼けの瞳が、彼自身の実直な性格を表すみたいに迷いひとつ示さず捉える。

 ヒロインのシルフィーでも、あからさまに様子がおかしいレティーシアでもなく、ただのモブであるわたしを。登場人物にもなかった無名のシャルロッテを、朝焼け色が見る。



「先輩、そんな名前でしたっけ? この間までル・ヴェリオン嬢にもっと別の名前で呼ばれていませんでしたか?」


「……そう、ですね。お優しいレティ様が先日、私のミドルネームをお聞きになられた際に渾名までもをつけてくださったのです」


「──へえ、そういうこと。今更だけど先輩の名前、聞いてもいいですか?」


「アチェンスタです。シャルロッテ・エカテリーナ・アチェンスタと申します。ミスタ・ライト」



 そう、下手くそなカーテシー付きで告げれば、目の前の男は納得した風に頷いた。彼の隣、 兄から渡されたハンカチを手に、物語の絶対的正義である少女が私とロックを見守る姿勢に入ったことを見て取って、これはまずいと察する。

 彼女が()()()()と決めたならば、世界は彼女の選択に従うだろう。それこそ、予め誂られた選択肢を無情に選ぶプレイヤーのように。であれば、主人公と攻略対象に認識されてしまった私はおそらくこの場からは逃げられない。しかし『ぶっかけチュートリアル』後の主人公と悪役をいつまでも同じ空間に居させたくはない。兄の性格がどうあれ、彼が悪役令嬢レティーシアである限り、その場にいるだけでストーリーによくない作用を引き起こすだろうことはつい先程に証明されたのだから。

 なので、もう一度振り返って兄へと先に行ってくれと目で訴える。ついでに腰巾着ABにもレティ様のお世話をよろしくと微笑む。



「……ん。よくわかんねーけどおまえの席も取っとくからな、英理子。さっさと追いついてこいよ」


「ありがとうございます、レティーシア様。あとお口が悪うございますよ」


「ウッセーですわ!」



 小言も加えて、ようやっと派手な金髪を見送ったところで、ロックとシルフィーへと向かい合う。



「引き留めてすみません、アチェンスタ先輩。あまり聞かない呼び名だったものですから……エカテリーナでエリコ、なんですね。流石、ル・ヴェリオン嬢のセンスには独特なものがある。て、言ったら失礼になるか?」


「本人に聞こえてないのでセーフです」



 あ、そんなかんじでいいんだ──どことなく呆れた風なロックの眼差しを受け取ってちょっぴり胸を張ってみる。そう、そんなかんじでいいのだ。だから──だから、どうか今のレティーシアを嫌わないでやってほしい。その方が兄も私も息がしやすいし──なにより、レティーシアの惨憺たる悲劇(エンディング)を回避できるかもしれない。

 ちなみに蛇足だがシャルロッテの胸は非常にお淑やかなサイズ感である。



「レティーシアさんって、その、見た目は華やかでいらっしゃるけどとても気さくな人なんだね」


「ああ、んー……今までは全く気さくじゃなかったけどな。このあいだ頭打ってから()()なったみたいで、オレも含めて皆驚いてる。で、その現場にいたのがアチェンスタ先輩なんだけど……と、そうだ、アチェンスタ先輩。オレなんかにそんなに畏まらなくていいですよ。オレは後輩なんだから」


「ええと、でも……歳は同じでしょう?」



 実に、当たり前のように告げていた。私にとってはとっくに当たり前の事実であった。ロック・ロー・ライトはとある事情により一定期間休学していた過去がある──と。

 しかし当のロックははたと瞳を瞬かせている。その反応に「アッ」と思う。推しの男のきょとん顔、ありがたすぎる。寿命が延びた。いやそうじゃなくて。

 やらかした。

 そうだ、ロックルートのスチル名を全部諳んじられるくらいにはプレイしまくった為に当たり前の認識になっていたが、この時点でロックはダブっている事実をヒロインにも誰にも話していないはず。まずい。トチった。どう考えてもフルネームすら制作陣から与えられていない背景モブが知っていていい情報ではない。どうしよう。

 ──どうしようもくそもないだろう、シャルロッテ。



「と、レティーシア様がおっしゃっていましたが、ちがいましたか?」



 ウフフと精一杯かわいこぶってトコロテン並にするんっと滑り出した言い訳は、我ながらモブ人生最高の出来であった。この為の小悪党、虎の意を借りてこそ腰巾着Cも名乗れるというものだ。

 嗚呼ごめんなさいレティーシア様、御名の威光をこのシャルロッテ、これからも全力で借り回してゆきます!



「──いや、その通りだよ。オレのこと知ってるんだな、あの人。じゃ、お言葉に甘えてこれからアンタのこと、友達みたいに接していいか? オレのこともロックでいいからさ。シルフィーだって、それでいいだろ?」


「もちろんです! わたしともお友達のようにこれからもお話してくださいますか? アチェンスタ先輩」


「はわわヒロインちゃんくっそかわいい、じゃなくてよろこんであわわわわ」



 それにしても曲者揃いのあの『イノ・イノ』キャラ相手に私ったら案外平然と会話できてるじゃないかなんて油断したところに、ごく自然と手を取られた。ロックに。『永遠の友達』に。

 手を取れる距離まで詰められて、微笑まれた。最推しに。極上の顔面で。キラッキラのエフェクト幻影まで背景に散らして。うわ今日も推しの顔が良い。



「これが最高の友達……」



 咄嗟ににっくきノーマルエンドスチル名が口をつくくらい至近距離からのファンサの威力は凄まじかった。とうとうオタク心(ノット乙女心!)が耐えきれず、ヨダレを耐えながら顔を逸らすなんていう高等テクニックを繰り出せば、ヒロインのめちゃくちゃ優しい目とかち合った。普通に恥ずかしい。

 だって。無理だ。無理でしょ。無理だって、こんなの。

 推しだもん。最推しなんだもん。こんなにファンサ浴びせられまくって、果たして正常でいられるオタクがこの世にいるだろうか。否、いない──こともないかもしれないけど、私は無理!



「ねえ、ロック? アチェンスタ先輩とまだまだお話していたいのは山々だけど、そろそろ時間が……」


「ん、そうだな。オレらはともかく先輩は移動しないと」


「えっ、うわ。ほんとだ。やば」



 ヒロイン・シルフィーちゃんの控え目ながらも心配そうに私を促す声に慌てて壁時計を見上げる。ついでにその下、なんでもいいから早く移動してくれと我々を死んだ魚の目で眺めている教師に申し訳程度に頭を下げておく。貴族のご令嬢がそれでいいのか、てかんじだけど日本制作のゲームゆえにその辺りのマナーも専ら日本仕様なのだ。必要でないところはまったく、とことんテキトー設定だ。

 ストーリー通りであればこの後ヒロインと案内役のロックは着替えの為に医務室へと向かうのだろうし、そこで次の攻略対象アンリ・サーシェルの全年齢ギリギリなベッド運動シーンと出会す塩梅となっている。その後は校舎案内──という名のアドバイザー・ロックによるゲームシステム&ミニゲーム説明だ。授業はどうしたとかいうツッコミはしてはいけない。ノベルゲーとは得てしてそういうものなのだ。

 であるからして、悪役令嬢レティーシアがストーリー上に再登場するのは授業後──ヒロインの昼食時だ。当然、悪役令嬢の背景ABCもそれまではヒロインとお近付きになる機会はない。

 順当にいけば次の勝負(イベント)は食堂だなと密かに息巻きながら腰巾着ABに案内されているだろう兄の元へ向かうため靴裏を鳴らすと、どうやら我が耳ながらどうあっても聴き逃す気はないらしい彼の声が追って私に笑った。



「じゃ、次は食堂で会おうな──────シャル」


「ひえ」



 生の推し、オタクの心臓によくない。たぶん口から出た。


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