親友と幼馴染み……
色々な人間模様を短編集にしていきます。
ぜひ、感想等をお願いします。
週1回くらいで更新出来たらと思います。
男が2人、夜の公園に居る。
ホット缶のブラックコーヒーを飲みながら、ベンチに座っている。
1人は村田健一であり、もう1人は岡田信和である。
2人は親友であり、中学から大学までを一緒に過ごした。
2人はコーヒーを飲む。息を吐くと白くなる。2月の中旬の寒い夜、時間は22時を過ぎていた。
「悪いな、こんな遅くに……」
「本当だよ、寒くて仕方ねぇ!」
「そう言うなよ…話があんだからさ!」
「早く言えよ…寒いんだからさぁ……」
「ああ……」
信和はコーヒーを1口飲んだ。
「大切な話なんだ……しっかり答えろよ」
「何だよ、早く言えって!」
「優依の事、どう思う?」
「優依って……お前の彼女だろ?」
「お前の幼馴染みだ……」
「関係ねぇだろ?……俺達は腐れ縁だ……」
「そうか?……そんな感じはしねぇけどな……」
「何言ってんだよ!…そもそも仲を取り持ったのは俺だろう?」
「そうだけどさぁ…………何だか最近、優依の様子がおかしくてよ……」
「なんだなんだ?……それで俺を疑ったのか?」
「そうじゃねぇんだけど……」
「大丈夫だよ、優依はお前を好きだよ……」
「……俺さ、結婚しようと思ってるんだ……勿論、優依とさ……」
「おお、そうなのか……おめでとう……でいいんだよな?」
「…………良くないな……」
「何でだよ!…めでてぇじゃねぇか!」
「…………お前はそれでいいのか?」
「??」
「お前はそれでいいのかよ?…優依が結婚するんだぞ?」
「お前と結婚だろ?……いいに決まってるじゃないか!」
「……この野郎…」
信和は健一の胸ぐらを掴み立ち上がると、そのまま空いてる右手で健一を殴った。健一は地面に倒れた。
「痛ぇな、何すんだよ!」
「少しは目が覚めたかよ?」
「訳分かんねぇ事言ってんじゃねぇ!」
健一は立ち上がると、信和を殴る。
「この野郎~……」
「やんのかコラ~……」
健一と信和はお互いに殴り合った。信和が殴れば健一が殴り返す。仲の良い兄弟が喧嘩をしている様な、そんな雰囲気であった。
どのくらい殴り合っただろう、2人はベンチに腰を卸した。
「はぁ、はぁ、何なんだよ……くそ……」
「はぁ、はぁ、まだ分からねぇのかよ……」
「何がだよ!」
「俺はな……俺は、お前は親友だと思ってる……」
「俺だって思ってるよ!」
「俺は……俺達の関係は、遠慮や嘘はねぇと思ってる!」
「当たり前だろ?」
「本当にそうか?…俺に何か隠してないか?」
「何を隠すんだよ?」
「優依の事だよ!」
「優依の事……?」
「……お前、優依を好きだろう?」
「な、何言ってんだよ?」
「お前は優依が好きで、優依と付き合ってるのが俺だから……言い出さないんだ……」
「何言ってんだよ、そんな事……」
「無くはねぇ!……図星だろ?」
「……少し違うな…………確かに俺は優依が好きだ。でもな……俺はお前も大切なんだ……2人が幸せそうにしている…俺にはそれで充分なんだ……」
「だとしてもだ……自分の気持ちを隠す必要ねぇだろ?……まして俺に……」
「…………それも違うんだなぁ……」
「何が違うんだよ?」
「……お前に優依を紹介したの、何時だったか覚えてるか?」
「当たり前だ!…俺がお前に頼んだんだからな!」
「何時だよ?」
「中学1年の時の秋…9月だ!」
「正解だ……そして、お前達は中学2年の始めに付き合い出した……」
「そうだな…」
「……俺の初恋は中学2年の終わりなんだ……」
「え?」
「お前と優依が付き合ってるのを見て、優依を客観的に見る事が出来た……うるさいお節介女だと思ってたけど、優依っていい女だなぁと思った……それが俺の初恋だ…………だから、例え時間が何回戻ったとしても、俺は信に優依を紹介するし付き合う為の協力もする……そして、2年の終わりに初恋をするんだ……俺はみんなより、初恋の時期がずれてたんだ…ボタンの掛け違いかな……」
「健……」
「しかし、お前のパンチ……凄く痛ぇぞ!」
「お前もな……中学1年の時以来かな……」
「そうだな……原因は何だっけ?」
「さぁて…些細な事だったとしか覚えてねぇよ!」
「「はっはっはっはっは」」
笑っている2人に1人の女性が走って来る。
「信和さん、話って何?……2人共、顔に傷が……」
「優依、丁度良かった……話は先に健からだ……」
「は?…俺はねぇぞ?」
「有るだろ?…もう1度ぶん殴るぞ!」
健一はベンチから立ち上がる。
「優依……俺な……」
「何?」
「俺……俺な……お前の事が好きらしい……」
「!?」
「どうやら、お前が大好きらしい……」
「そういう事だ……優依、これからは健を支えてやってくれ!」
「信和さん?」
「お前も健が好きなんだろ?…それが分からない程、俺はお前等と薄い時間は過ごして無いさ……」
「いや信、お前はそれでいいのか?」
「しょうがねぇだろ?…分かっちまったんだから!……お前等は近過ぎて、気持ちが分からなかったんだよ!」
「しかし……」
「信和さん……」
「なんだなんだ?…このくらいで俺達の関係は終わらねぇぞ?……俺達は親友だ!……だろ?健!」
「ああ、その通りだ!」
健一と信和は右手でハイタッチをした。
「少し、2人で話してけよ……俺は帰る、じゃあな!」
「信、ありがとな……」
「ありがとう、信和さん……」
「おう!」
信和は右手を軽く上げて公園を出て行く。
(中学1年の冬、優依との約束を忘れて殴られて以来だよ……あ~、今日は本当に冷えるな~……)
信和はポケットに両手を入れて、自分のアパートに向かった。
第一回、感想、お待ちしています。