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推しの美少女を待っていたはずが……

 

 白石流華をモデルにして書いていた恋愛小説が、まさかの白石流華本人に見つかってしまう、なんて事件があった翌日。

 俺はいつもよりも早めに学校に到着していた。


 理由は、白石さんに渡したその自作小説の事が気になっていたからだ。

 万が一、俺の知らないところで学校中にばら撒かれたりでもしたら、それこそ一巻の終わりだ。

 せめて、自分の最期くらいは自分の目で見届けたい。 


 しばらくしてから、遂に白石さんが来た。

 彼女は、友人であろう何人かに挨拶をし、そして……俺の隣の席に座った。

 ……聞いてないよ。二年生にあがったら、こんなにも距離が縮まるなんて(物理的に)

 同じクラスになっただけでも光栄な事だろうに、その上隣の席だなんて、一体どんな確率だよ。

 出席番号順なので、苗字の頭文字がいい感じに近かった事が原因なのだが。


 「おはよう、龍野君」

 「……おう」

 「あら、随分と元気がないようだけれど。朝からそんな調子じゃ保たないわよ?」


 誰のせいだよ誰の。

 ……まあ、完全に、自作小説にクラスメイトを登場させた俺のせいなので、何も言えないんだけどね。


 自作小説の事、聞こうかどうかと悩んでいると、白石さんから折り畳まれたメモを渡された。

 俺は早速内容を確認するために、渡されたそれを開く。


 『放課後、昨日と同じ時間に、ここで待っていてちょうだい。』


 メモには、綺麗かつ丁寧な字で、そう書き記されていた。

 渡してきた本人はというと、何事もなかったかのように教材の整理を始めたので、俺もメモについて追及しようとは思わなかった。


 その日の授業は、常に自作小説の事がちらついて、気が気でなかった為、全く集中する事が出来なかった。

 また、友人を持っておらず、まさか小説を書くわけにもいかないから……休み時間、昼休みとする事がなく、途方に暮れていた。


 そしてようやく、放課後が来た。


 昨日と同じ時間ということは、相当長い間、ここで待たなければならないのではないだろうか。

 昨日は結局、日が暮れる一歩手前くらいの時間帯まで残っていたからな。

 

 さて。

 白石を待っている間、俺は何をしているべきだろうか。

 学校という、色々と制限を受けている場では、出来ることも限られている。

 そう考えた時に、無理をして変わったことをしようとするよりかは、やはり机に突っ伏して、寝たふりをしておくのが一番安全だという結論に至った。


 オタク特有の早口ならぬ、陰キャ特有の暇潰し。


 

 見ていなくとも、音だけでなんとなく、人がどれくらいいるのかは、意外と分かるものだ。

 一人、また一人と、着実に話し声の数は減ってきている。


 ……どれくらい時間が経った頃だろうか。


 完全に、人の話し声がしなくなった。

 ということは、いつ白石さんがやって来てもおかしくないので、心の準備をしておかなくてはならない。

 そんなことを考え始めていた時だった。


 「た~つ~の~くんっ!」


 誰かから、声を掛けられたようだ。

 一瞬、白石さんかと思ったのだが、声のトーンや雰囲気が、白石さんのそれとは違う気がする。

 こんな、ただの恋愛小説好きの陰キャに話しかけるような物好きはどこのどいつだと思い、ゆっくり顔を上げてみると―――


 「よっ!」


 ……おいおいおい、昨日までどころか、今この瞬間まで……さらに言えば、現在ぼっち進行中の俺が、謎の金髪美少女に話し掛けられるって、これ何のバグですか?


 いつから俺の人生は、ハッピーセットのおまけ付きみたいなルートを辿ることになったんだ……。


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