72話 ミドリムシは獣人の国に入る
緑達は交代で御者をしながらドワーフの国に向かう。
「緑、ドワーフの国もエルフと同じで人口が少ないから人の国の様に街はたくさんないんだ」
道案内のために常に御者をする者の隣にいたゴードンが緑に話かける。
「そうなんですね、ゴードンさんの国に行くのは楽しみです」
「先にいっておくが緑ドワーフの国について何か頼みごとをする時絶対に酒の話をするなよ」
「あれ? だめなんですか? むしろ1番喜ばれると思ったんですが?」
「ああ、確かにドワーフは喜ぶだろう・・・・ だがお前の酒をむやみにばら撒くと国全域からお前の酒を求めてドワーフが集まって来る、これは確実だ」
「そんなにですか・・・・」
緑とゴードンのもとダンジョンでは様々な酒を造っていた。特に酒精の高い酒はゴードンが狂喜して今も作り続けている。その様子を見て緑は昔本で読んだドワーフそのままだなと思う。
「ドワーフの国で俺達が作っている酒を出すのは王だけにしておけ。特にレシピを教えれば王ですら大体の頼み事は聞いていくれるだろう。」
「王様がですか1?」
ゴードンの言葉に緑は驚きおまわず聞き返す。
「ああ、それほどお前が打ち立てた酒のレシピはすごいものだ。もしも俺がお前と出会わず一緒に酒をつくっていなければ俺はお前の作った酒と同じ重さの金と交換したかもしれない・・・・」
「同じ重さの金ですか!? 胡椒と同じあつかいか・・・・」
大昔、胡椒がすごく貴重で金と同じように扱われていたことを緑は思い出す。
そんな、話をしていると緑達の進行方向に獣人の村が見えてきた。
緑達はエルフの国から直接ドワーフの国に向かうにはどうしても獣人の国の端をを通らなければならなかった。
「今夜はあの村で1泊するか?」
ゴードンが緑に尋ねる。
「はい、そうしましょう」
そう言うと緑は馬車の進行スピードを少しづつおとすのであった。
村に着くと警備をしている者達が驚く。
「こいつらはあんたの従魔か? 暴れないよな?」
「怖がらなくて大丈夫です」
そう言うと緑はダンジョンの入り口を開ける。入口が開くと2匹のホレストアントは緑が何も言わずとも敬礼をし入るのである。
「あんた、何者だ!?」
そう言われて緑は冒険者のギルド証を見せる。
「Iランクの冒険者・・・・ あんたが噂の・・・・ どうぞおはいりください」
そう言って村の入り口を警備していた者達は緑達を村にむかえいれるのであった。
村の中を歩くいたるところから視線を感じる。
「僕達が珍しいのかな?」
「まぁ、どちらかと言うとまだエルフやドワーフを見る方が人族よりは多いだろうからのう」
緑の呟きにゴードンが答える。
緑達が村の中を進み宿屋に入る。
「いらっしゃ・・・・いませ」
宿の店員と思われるものが挨拶をするが緑達の姿を見て固まる。
「あの~ 11名で止まれそうな大きな部屋ってありますか?」
「う~ん、本来なら雑魚寝用の部屋があるんですけどそこを貸切るなら構わないならいいですよ」
「ならそれで」
緑は言われた代金を渡す。
「ありがとうございます」
宿の者は緑から代金を受け取る。
「あ、食事はどうします? 付けるなら別料金がかかりますが・・・・」
「なら、それもお願いします」
緑がさらに食事の金額も渡す。
「すまないな、エルフの村では物々交換しかしてなかったんだ」
宿と食事代をだした緑に魔緑が礼を言う。
「まーちゃん、気にしないで僕達お金をあまり使う事がないから」
「そうだのう緑はダンジョンだけで生きていけるし、さらにダンジョン産の物を売ればかなりの金をかせげるからのう。しかし、なぜ飯も頼んだんだ?」
緑と魔緑の会話にゴードンが入り、食事を付けた理由を聞く。
「ほら、その土地土地の料理なんかがあればレパートリーを増やせると思って」
「勉強熱心だのう」「緑の料理の腕前が上がるのは俺達にとってはありがたいな」
「とりあえず宿も取ったし村を見て回る?」
「ああ、そうだな食事にはまだ少し時間があるだろうしな」
そう言って緑達は宿を出て村をみてまわるのであった。
「なにか僕達を見て怯えているみたいだったね」
村を見て回ったがやはり小さな村で緑達が見て面白いと思う物も特になく宿にもどってきた。村を見て回っている間獣人達は緑達を不安そうな顔でみていた。
「おかえりなさい、村の中を見てきたんですよね。何もなかったんじゃないですか?」
宿の者からそう言われて緑達が振り向く。
「ひい! すいません!」
「落ち着いてください。僕達は怒ったりしてませんから。それより村の中を見て思ったんですけど・・・・ ここの人達は僕達を見て怯えている様なのですが何か理由があるのですか?」
緑が宿の者に尋ねたとき
ガシャーン! ガシャーン!
食堂の方から皿が割れる音がした。
「また、あいつらか・・・・」
そう呟き宿の者は食堂の方に苦虫を噛み潰したような顔をしながら走っていった。
「僕達も行こうか」
緑の言葉に全員が頷く。
緑達が食堂に行くと20人ほどの山賊のような者達がいた。
「おら! もっと酒をだせよ!」「金は払うからさ~」「ほら、猫のおねぇちゃんもこっちに来て酒をついでくれよ」
「や、やめてくれ。酒はあるだけだしたんだ。娘にちょっかいはださないでくれ」
「いや! お父さん!」
「依頼の途中でたまたま通りかかった村だが何もないうえに酒もないなんて信じられねぇぜ。ほら、村の連中に頼んで酒を集めて来いよ。じゃないと娘が傷物になっちまうぞ。」
「「ぎゃはははははは」」
「くそ!」
そう言って宿の者が拳を握りしめ殴りかかる。獣人の身体能力は他の種族と比べて高い、しかし山賊の様なかっこしている者達は人族の冒険者の様で身体能力だけで倒せるものではなかった。
「ぐあ!」「お父さん! やめて乱暴はしないで!」
そんな光景を目にした緑達はは呆れる。そんな緑達を冒険者達が見つける。
「おい! ゴブリンが2匹いるぞ!」
「あ? 何をいってるん・・・・ ぎゃははははは。ほんとにゴブリンがいるぜ」
緑と魔緑をみて冒険者がゴブリンと言って馬鹿にする。緑は咄嗟に振り返り蟲人達が暴走を止める準備をするが蟲人達は冷たい目で冒険者を見ているだけで動こうとする様子がなかった。
緑がおかしいなと思いつつ視線を冒険者達に向けると魔緑、琉璃、凛、珊瑚の4人が冒険者達に向かってあるいていた。
「おい、俺の事をゴブリンと言ったか?」
魔緑がゴブリンと馬鹿にした冒険者のそばで尋ねる。
「ああ、言ったが文句があるのか?」
そう言って立ち上がった冒険者は体も大きく筋骨隆々で魔緑より頭2個分ほど大きかった。
「ああ、その喧嘩買ってやる。緑こいつらは俺達がやるがいいか? 蟲人達もいいか?」
そう、魔緑に聞かれた緑と蟲人達は頷くのであった。
「お前をぶっ殺してねぇちゃん達は俺達がもらってやるよ。ここはせめぇ。表に出るぞ」
そう言って魔緑達と冒険者達は宿からでるのであった。




