68話 ミドリムシはご褒美をもらう
「はぁ~ 極楽極楽」
「まーちゃん、言ってることがおっさんだよ」
「おっさんでいいから、ゆっくり楽しませてくれ。こっちの世界に来てからはあんまり風呂に入れなかったからな」
「確かに僕もそうだったね、お風呂はこっちじゃ贅沢になるもんんね」
緑がそう言った後、魔緑は黙りこむ。しばらくの沈黙のあと緑の方を見ずに呟くように尋ねる。
「なぁ、お前は今幸せか?」
「うん、今すっごく幸せ・・・・ まーちゃんは?」
「ああ、悔しいが俺も幸せだ」
その言葉のあと静寂に辺りは包まれる。
「「こっちの世界にきてよかったね(な)」」
2人の言葉が重なり驚く。
「あははははは」「くくくくく」
顔を見合わせた2人は笑い始める。
「もしかしたら居るかもしれない3人目もこんなふうに話せたらいいね」
「・・・・ああ、そうだな」
緑の言葉の後に魔緑は少しの間考え込み返事をする。
「まーちゃん、そろそろ上がろうか王様のとこにもいかないといけないし」
「ああ、憂鬱だがいかないとな」
そう言って2人のミドリムシは温泉から上がるのであった。
「緑よ昨日はご苦労であった。改めて感謝する」
王は緑から視線を魔緑に移す。
「魔緑もご苦労であった。我らが初めからお前を信じていれば大事にならずにすんだが、お前の言葉を信じて直ぐに行動できなかった事情も考慮してほしい」
「ああ、わかっているよ」
魔緑は短く返事をすると頷く。
「そうか・・・・」
再びは王は緑に向き直る。
「緑よお前には褒美を出さなければならない。何か望むものはあるか?」
「この国にダンジョンの入り口を置きたいです」
「それは褒美になるのか?」
「はい、とてもありがたいです」
「なら、許可する! 場所はどこがいい?」
「 他の国では孤児院においていたんですがこちらには孤児院はありますか?」
「残念ながら我らは数が少ない、もし孤児が出たとなれば他の家族が世話をする。その為この国には孤児院はないのだ」
「うーん、それならどこがいいでしょうか? リーフ王国の都合の良い場所でいいんですが」
「ふむ、それなら城の訓練所でもいいかの? あそこであれば常に人もいる。緑達に連絡をする際も時間を取られない」
「はい、ではそこでお願いします」
「魔緑よお前はどうする?」
「ああ、俺は緑達と一緒ならこの国を歩いても良くしてくれ。お尋ね者のままじゃ世話になったやつらに挨拶にいけやしねぇ」
「お主もそれだけで良いのか?」
「ああ、それで大丈夫だ。俺は今幸せの絶頂だからな」
そう言って魔緑は王に向かってニヤリと笑う。
「そうか・・・・ では魔緑のリーフ王国の立ち入り禁止を解除する!」
「おい、俺は緑と一緒であればと言ったぞ?」
「ああ、それは褒美だ。そして、お前の言葉を直ぐに信じれなかった事に対する詫びもいるじゃろう?」
今度は王が魔緑に向かってニヤリと笑う。
「くくくくく」「わはははははは」
王がニヤリと魔緑に笑って見せた後、2人は笑うのであった。
「じゃあここに設置しますね」
「よろしくお願いします」
訓練場のすぐ近くに騎士達か待機する場所の隣の部屋を使う事になった。
「ここには常に誰かいますので、ご用のときはすぐにお声をかけてください」
「はい、わかりました。その時は宜しくお願いします」
「いえ、こちらこそよろしくお願いします」
そう言って案内をした騎士は頭を下げるのであった。
「よし、これでいいかな?」
緑がダンジョンの扉を設置し終わると再び謁見の間に戻る。
「緑よ設置が完了したようだな。ご苦労である」
「いえ、ダンジョンを設置するのに必要なのは魔力だけですから」
「そうか・・・・ お前たちはこれからどうするのだ?」
「そうですね、次はドワーフの国へ行こうかと思っています」
「ふむ、ドワーフの国か。直ぐに旅立つのか?」
「少しだけ、こちらの国に滞在したいと思っています」
「なら引き続きピエールが案内すればよいか・・・・ 頼めるか?」
そう言うと王はピエールの方を向く。
「わかりました」
王の提案にピエールが跪き返事をする。
「そうだ、ピエール。お前はこれからどうするのだ?」
「もし、緑がいいならダンジョンの中で仕事を続けよかと思います」
「良いんですか? ピエールさん?」
「ああ、緑が許してくれるならダンジョンに永住したいくらいだ」
「むぅ、羨ましいの・・・・ 私も王を引退して緑のダンジョンでくらしたいのう」
「「ダメです!」」
「ダメかぁ~」
王の言葉に間髪入れず周りのエルフ達が王を止める。
「では緑よもうしばらくエルフの国を堪能していってくれ」
そう言って謁見は終わるのであった。
「「うわーん、緑! 心配したんだからね~」」
緑が皆でエルフの国を散策していると突然、泣きべそをかく2人のエルフの子供に抱きつかれる。
その2人のエルフは緑に抱き着いて見上げるとみるみる目に涙をため始める。
「うううう。緑に似てるけど緑じゃない~」「偽物だ~」
「「うえ~ん」」
そんな2人のエルフの子供が可愛く思え引き離すことができない緑は魔緑に顔を向ける。
「あ~ お前達。俺はこっちだ」
「「緑だ~」」
そう言って2人は緑からはなれ魔緑に抱き着く。
「こらお前達! 涙と鼻水をふけ!」
「「緑がいたー。 良かったよ」」
緑達は2人が落ち着くの待つのであった。
「もう! 本当に心配したんだからね」「そうそう! みんな緑の事を魔緑って言うし」
「あー 悪かった、悪かった」
「「全然反省してなーい!!」」
「ふふふふ」
そんな魔緑と2人の会話を聞いていた緑が笑い始める。
「あ、そうだ偽物がいる!」「緑の偽物だ!」
「わははははは、俺は緑の偽物だー お前達を食べちゃうぞー」
「「ぎゃああああ」」
ボコ!
「痛いよ・・・・ まーちゃん」
悪乗りした緑を魔緑が拳骨を落とす。
「あんまり、2人を脅かすな」
「ふふふふ、ごめんね悪乗りしすぎちゃった」
「こいつらは、俺がこの世界に来て世話になった家族の子供達なんだ」
「そうなんだ!? まーちゃんがお世話になりました」
緑は魔緑より2人との関係性を聞きお礼を言う。
「魔緑は家族なんだからそんなお礼はいらないよ!」「そうだ! いらないよ!」
2人がそう言うと緑は腰を落とし2人の目線の高さに自分も合わせる。
「「なんだよ」」
「可愛い!」
そう言って緑は2人を抱きしめる。
「「ぎゃああ! 離せ~ この偽物め~」」
「緑そのまま捕まえとけこいつらの家にいく」
「わかったよ」
魔緑がそう言うと緑達は彼らの家に向かうのであった。




