60話 ミドリムシ同士の戦い
自分達の敵が現れた。しかもいきなり攻撃をしてくる相手。蟲人達はすぐに思考回路を戦闘態勢に切り替える。
しかし、その思考の戦闘態勢直ぐに崩さる。
なぜなら、視認した敵が自分達の敬愛する王の緑に非常に似ていたためであった。
特に蟲人達の中で一番驚いていたのは兜であった。
兜は魔法に気づき家族と仲間に攻撃されるとを叫んだ。
そのためか敵が放ってきたきた魔法に誰も当たらなかった事にほっとし、直ぐに次はこちらの番だと思い敵を確認すると3mほどの狼が木の陰から現れる。
そして、その背に自分達の王の緑にそっくりな男を見つける。見つけた男が緑にそっくりなだけなら何も問題はなかった。
自分達の王の姿をまねするような不届き物は倒さなくてはならないそう考えるだけであった。
しかし、蟲人達に共通する事で緑に蜂蜜をもらい人になった時に心の一部が緑とつながった、そのつながりがその男からも感じられたのであった。
蟲人達は全員が思ったなぜあの緑そっくりな男から小さくとも緑とのつながりを感じるのか。
蟲人達の動き出しが僅かに遅れた間にエルフ達は先ほど緑に対してみせた様に戦闘態勢に入り狼と背の男を囲い込む様に辺りに散らばる。
エルフ達が散らばる間に再び狼の周りには火の玉が浮かび上がる。その大きさは先ほどの物よりも大きくなる。エルフ達が警戒し様子を伺っていると火の玉が突然形を変える。
それまでは火の玉だったものが白い槍の様な形になる。それを見たエルフ達が盾を斜めに構えるがその光の槍を見た緑はぎょっとする。
炎の温度が上がると色が変わることを知っている緑であったが今目の前にある炎は真っ黒な炎であった。
その真っ黒な炎の槍に緑は危険を感じ大声で叫ぶ。
「盾で弾かず避けて!」
その声にエルフ達の多くのものは避けるが一部の者は間に合わず盾で弾こうとするのであった。
「ぐあああああ!」「きゃああああ!」
何人かのエルフが盾で弾こうとするも黒い炎の槍は何もないかのように突き進む。
槍は進行方向をかえずその斜線上のものを貫通し20mほど進んだところで直径3mほどの球状に変化し球内の物を焼き尽くし消滅した。
緑は先ほどの槍を盾で受けたエルフ達の元に駆け寄る。緑がかけ寄りケガを見ると槍の斜線上に体の一部があった物は大けがを負っていた。
「皆! 命の危険がある人は実を上げて!」
それを聞くと蟲人達は魔法を受けて動けなくなっている者の元に走り治癒の実を手渡していく。その者達の中で食べれる状態でない者は実を握り潰しその果汁を直接かける。
その後、自力で食べれるように回復すると改めて治癒の実を手渡す。
緑達が怪我人の治療をしている間もエルフと狼ともう1人の緑との戦闘は続いている。
エルフはその高い連携で的をしぼらせず全員で魔法を打ち続け素早い狼にダメージを与えていた。
緑は治療を終わらせるともう一人の自分に向かって歩き始める。緑はもう一人の自分に向かう間魔力を圧縮し続ける。
その時緑が想像したのは水と聖属性の複合魔法で作った氷の花であった。
緑が魔法を使うと緑の前には多種多様な氷の花が咲き乱れ大きな盾を作り上げる。その盾を持って緑はもう1人の自分に叫ぶ。
「君は誰なの!?」
その緑の声を聞いたもう一人の緑が叫び返す。
「俺は! 水野 緑だ!」
そう言ってもうもう1人の緑は今まで一番巨大な炎の玉を作り出すその大きさは10mはあると思われた。周りで攻撃を加えていたエルフ達はその大きな火の玉を見て全員が距離をとり、様子をうかがう。
そんな中その巨大な火の玉は形を変え真っ黒な炎の槍に変化する。その様子を見ていたエルフ達全員が息をのむ。
「うそだろう・・・・」「むちゃくちゃだ」「あいつの魔力量はどれほどあるんだ」
そんな言葉がエルフ達の口から洩れる。
なぜなら、その槍は先ほど自分達に向けられたものと比べると大きさこそ変わらないが異常な量の魔力が込められていたためであった。
エルフ達は、こんなものを投げられては被害がどこまで広がるか分からないと考えさせられた。
先ほど自分達に向かって数多く飛ばした槍は20mほどで消えたがこの槍はどのくらい飛ぶのかわかったものではなく、それこそ斜線上にあるあらゆるものを貫通しながら飛び、数kmは飛ぶのではないかと想像できたためであった。
「今日はここまでだ!」
そうもう1人の緑が言って槍が放たれた。ただそれが放たれたと気づけたのは緑とその家族の蟲人達くらいであった。
他の者達はもう1人の緑がしゃべり終わると同時に雷が落ちたような音が鳴り響く。周りの者がその音の原因を探すと緑が持っていた盾に先ほどの槍が刺ささり続けていた。
その槍は緑の盾に当たっても進む事をやめず、緑の盾を溶かして進もうとしていた。一方緑も盾を新たに生み出し続け最終的に槍を盾で覆いつくすのであった。
緑が盾で槍を覆いつくした理由が先ほど槍が最後に大きな球状に変化し球内にあるもの全てをを焼き尽くしたためこの変化を抑え込むためであった。
緑は氷の盾で覆いつくすと家族やピエールの元に戻る。
「緑あの槍はあれで大丈夫なのか?」
戻ってきた緑にピエールが尋ねる。
「はい、あれであればまず破られないかと・・・・」
そう言って緑が頷こうとした瞬間。
ドーン!
今度は思わず耳に痛みが走るほどの爆発音が氷の盾の塊よりきこえる。
その爆発音がした後も緑の盾はひび割れもなく形を保っていたのであった。
「緑も魔緑もすさまじい魔力量だな・・・・ 私も魔力の量にぞっとしたぞ」
「隠していたつもりはないんですけどね・・・・」
緑はそう言って苦笑いをする。
緑とピエールが2人で話しているとエルフ達も集まってきた。その中から数人が前に出る。
「先ほどはありがとうございました。あなたの実が無ければ私達は死んだり体の一部を失っていたでしょう・・・・ 本当にありがとうございました」
前に出てきたエルフ達は皆、緑達に向かって頭を下げる。
「お気になさらないでください。これで僕が例の魔緑とは違う事が確認できたと思いますし」
その言葉で1人のエルフが前に出てくる。
「私はこの者達のリーダのイリスという、先ほどの失礼な態度を謝罪したい」
そう言ってイリスは深々と頭を下げる。
「緑よこの者達も悪気があったわけではなかったんだ許してやってくれ」
「はい、僕も見ましたが言われた通りそっくりだったのでしかありません皆さんも気にしないでください」
「その心使い感謝する」
そう言ってイリスは再び頭を下げるのであった。
「ではイリスよそろそろ案内してもらえないか?」
「はい、ご案内します。ただ・・・・緑さんが国の中に入る時は少しお時間頂きたい。先ほどの魔緑とは違う事を連絡しなければならないので」
「確かに、そのまま入れば間違って攻撃されそうだな・・・・わかった緑の事を連絡している間は待たせてもらうよ、あと1人ドワーフもいるんだがそのことも連絡しておいてくれ」
「ドワーフか珍しいですね、このエルフの国に来るのは」
「ああ、俺と一緒で元サークル王国のゴランの街でギルドマスターをしてたんだが俺と同じタイミングでギルドマスターを後輩に譲りギルドマスターを辞めて緑を自分の国に案内するために付いてきたんだ」
「ドワーフも緑さん達を自国に案内するんですね・・・・ 珍しい・・・・」
「まぁ、ここで話していてもしょうがない案内してくれるか?
「はい、案内します」
そう言ってイリスは緑達の先頭に立ち国へ案内をするのであった。




