58話 ミドリムシは街の中をまわる
緑はベッドを抜けると3人が風を引かないように布団をかけなおし、食堂に朝食を作りに行く。
緑が朝食を作っているといくつかの足音が近づいて来る。
「大将おはようございます!」
兜が挨拶をするとその後からアランとシャークのチームの男性陣も食堂に入ってきて緑に挨拶をしていく。
「皆さんも朝食たべますよね?」
その場にいた全員が頷くのであった。
「なあ緑あいつらの事はどう思っているだ?」
皆で食事をしているとアランが緑に尋ねる。
「あいつらって、セリアさん、マナティさん、イルカさんのことですか?」
「「そうだな」」
緑は腕組をして、考える。
「皆さん良い人だと思います。ただ、皆さんと接した時間が短すぎて結婚を考えるまでいたってないです」
緑は顔を赤くしながら答える。
その様子を見て周りの兜を除いた男性陣はヤレヤレと思うのであった。
そんなやり取りをしていると蟲人の3人が食堂にやってくる。緑はそれを見てベッドにもぐりこんだ理由を聞く。
「一緒に寝たらだめなのですか?」
「一緒に寝たかったんです♪」
「皆で寝ると温かいです~」
その返事を聞き緑はまた考える。
「たしかに、家族が一緒に寝るのは問題でもなんでもないね」
そう言ってニコリと笑う緑を見て、再度男性陣はヤレヤレと思うのであった。
緑達が食堂でしている会話を扉の前で聞いている者が3人いた。
「うううう、結婚してって言うてもうた・・・・」
「「私達もです・・・・」」
「でも2人も緑が結婚しよういうたらするよな」
「「はい」」
「うちもや・・・・ 結婚してくれへんかな~?」
「「ですね~ 緑さんなら願ったりかなったりです」」
そう言って3人の女性はため息をつくのであった。
朝食が終わり日課の鍛錬が終わると緑は、ゴランの街のドライアドを尋ねるのであった。
「お久しぶり。元気にしてた?」
緑がそう言って声を掛けたドライアドは街の農家の人々に土の状況や今後の指示を出していた。
緑の声を聞き振り返ったドライアドはお腹が膨らんでいた。
それを見て緑はダラダラと汗をかき始める。
「おかえりなさい、あなた」
緑を見たドライアドが静かに振り向きそう言ってほほ笑む。
緑は頭の中が真っ白になる。
「花粉を蒔いた時か・・・・ いやそうとしか考えられないよね・・・・ 責任を取らないと・・・・」
「っぷ、ぷぷぷぷぷ。あははははははは」
緑が現実を受け止め色々な事を考えているとドライアドが笑い始めた。
「私たちは少しだけ魔力を消費すればこの姿は多少変化させれるのよ。こんな風にね」
そう言ってドライアドのお腹は無くなる。
「もう~ 本当にびっくりしたよ~ 悪い冗談はやめてよね~」
緑は汗を拭きながらドライアドに文句を言う。
「あはは、でも緑が初めにやったことはもっとひどかったんだからね」
「それは、本当に申し訳ないとおもっているよ・・・・」
その後緑は、ドライアドの近況を確認する。
「街の人達や農業をする人達と話すようになってから周りの環境がどんどん良くやっているわ」
「それは良かった」
緑は緑特製の肥料を袋に詰めたもの空いた小屋に積むのであった。
その後、緑はドライアドと挨拶をし別れダンジョンにもどる。
緑がダンジョンに戻り子供達や蟲人達に帰ったことを伝える。
そんな緑を見てピエールとゴードンの2人が緑を見るとものすごい勢いで走ってくる。
「緑、お前のダンジョンは物が溢れすぎだ!」
「緑なぜ清酒の強い酒があるのに出してくれない!」
2人は、緑達が自分達の国に来るまで行動を共にしダンジョン内で仕事を探していたがもともとギルドマスターをしていた2人のため仕事を探しては片っ端から処理をしていき、そのスピードから直ぐに仕事がなくなると思われていた。
その2人がダンジョンの中で仕事をさがしているとピエールは、緑の魔法で作った氷を使った冷蔵庫に保存されている大量の物資を見つけ、ゴードンはまだ試作段階であったアルコール度数の高い酒を見つける。
2人は緑のダンジョンの二つ名は【緑の王国】より【緑の楽園】の方が正しいのではと思う。
それもピエールが見つけた冷蔵庫は大きさで言えば小学校の体育館ほどの大きさの物が数棟ありゴードンが見つけた試作品の酒も数樽単位で数十種類を確認したためであった。
緑は人魚の子供達に海の管理をお願いしているが管理以外の時間に関しては自由にしてもらっているが以前考えていた学校の事をピエールやゴードンに相談してみようかと思う。
「お2人共、自分の国に戻られたらどうなされるんですか?」
「そうだったな・・・・まだ緑に相談するタイミングではないと思っていたが・・・・」
「確かにそう聞かれると俺達も緑に聞かないといけないなピエール」
「「私(俺)達を雇わないか?」」
「へ?」
緑が驚きの声を上げるとピエールが話始める。
「以前、緑はダンジョン内に学校を作ろうと考えていただろう? その件で王国や貴族たちに出資させて、ここで育った子供達の就職先として斡旋しようとかんがえていただろう?」
緑が頷くのを見てピエールが続ける。
「だが、ここの環境を見て私は思ったのだ。王国や貴族達に出資させずとも緑のダンジョンの資源を使えば、出資など得ずとも子供達の学校を作り様々な技術や学問を学べる機関を作れるだろうと・・・・ ならば王国や貴族に借りを作らずにいた方が良いとな」
「だな、俺はピエールと違って学問はダメだが鍛冶の技術なら教える事もできるし、緑がこのさき様々な国にいき孤児たちを助けるならドワーフの子達も助けてくれると思っている。ドワーフの子供達なら鍛冶の技術を覚えたいという者も多いだろう」
2人は緑に自分の考えを伝える。
「お2人が良いなら僕は大歓迎です! 僕はこの世界の常識にも疎いから誰かそれを教えてくれる人を探さないといけないと思っていました! これからも宜しくお願いします!」
そう言って緑達は固く握手をするのであった。
「その話、わしも仲間に入れてくれないかの」
緑が振り返るとそこには【達人】の二つ名を持つ流がいた。
「クウに教える時間以外の時間を持て余していてな・・・・ わしも体術なら教える事ができるからな」
「流さんいいのですか?」
「ここで飯を食い続けていると最近妙に若返った気になっての今まではしなかった事に挑戦しようかと思う」
これは、緑が食事を作る際に若返りの実をごく少量だが使っていたためであった。この実を実らせる木がダンジョン内にあるのを知っているのはシャーク達だけであった。
「あ~ すいません、あの若返る実があまりに美味しいので料理に少しだけ使っていたんです。流さんに確認も取らずすいません」
「「なに!? 若返る実だと!?」」
その言葉に元ギルドマスターの2人は大声で反応をしめすのであった。




